18. わが家へ出発
「おはようございます、リヒト様。
昨日の飲み会は盛り上がったようですね!
帰りがだいぶ遅かったようですけど大丈夫ですか?」
ここは実家のリビング。
俺は朝食は簡単に済ませ、ソファでうだうだしていた。
「おはよう、マーヤ。 大丈夫だよ。
マーヤが言ってくれたおかげで、昨日中には解放されたし。」
「昨日はどのくらい人が集まったんですか?」
「結構声をかけてくれて、十四、五人位集まったかなぁ。」
「それはすごいですね!」
「ああ、懐かしい顔もあって、楽しかったよ。」
「よかったですね。 あの三人には、感謝ですね。」
「そうだな。 あの三人は最強だな。」
「突っ走る先輩と、マイペースな後輩、それをまとめる中間管理職、って感じで息の合った三人ですね。」
「ははは、確かに! 中間管理職はわからないけど!」
“管理職” という言葉には “?” だが、中間で板挟みになっているウィーロには同情するよ。
「おまけに、無駄に顔がいいだろう。
警ら隊の上司が 『さわやかな警ら隊』 っていうイメージをつけたいらしくて、よく三人で組まされるようなんだ。
性格を知っていれば “さわやか” なんて言葉は出てこないんだけどさぁ。
ウィーロが、心労が絶えないって昨日は愚痴を聞かされたよ。」
「まぁ、それは大変でした。 ウィーロ様、大丈夫でしたか?」
「あぁ、あいつ、真面目だろ。
時々たまっている気持ちを聞いてあげるとすっきりするみたいなんだよね。
帰るころには酔いもあって楽しんでいたから心配ないよ。」
「リヒト様は、ウィーロ様をよくわかっているんですね。
そういう仲ってうらやましいですわ。」
「うーん、そういうものなのかな。」
曖昧に答えたけど、ウィーロは俺にとって親友だ。
お互いライバルで、俺はあいつを尊敬していて、でも時々弱いあいつを俺がカバーして・・・。
これからもそういう仲でいたいと思う。
「今日は、昼食を食べたら帰ろうか。」
「はい、わかりました。」
「そうだ、荷造りは大丈夫だったか?
侍女もいなくて、一人で大変だっただろ。」
マーヤの侍女は帰らせてしまったので、お嬢様が一人で荷造りなんてやったこと、なかっただろう。
「いえ、お母様の侍女さんが手伝ってくれたし、荷物といっても少なかったので、私の荷造りはもう終わっています。
リヒト様こそ、荷造りは大丈夫ですか?」
「大丈夫だ!俺の荷造りなんて、ここは実家だから全部置いていっても問題ないぐらいだし。
適当にバッグに突っ込んで、それで終わりだ。」
「もう! 男の人って簡単でいいですね~。」
呆れられたけど、男ってそういうもんだぜ。
みんなで昼食をとった後、ヴォルグ家の馬車を借りて帰路についた。
家を発つときは両親が見送ってくれたが、俺に何かされたらすぐに戻ってきていいから、なんてマーヤに言っていてびっくりした。
俺が、あなたたちの息子なんですが!
実の息子より、かわいい嫁の方が大切だよね・・・。
帰りの馬車では向かい合って座った。
俺はウェインたちのことや、これからのことを伝えた。
「マーヤ、前にも言ったと思うけど、うちには使用人として、ウェインとロッテの夫婦がいてくれる。
使用人といっても、畑の仕事とか厩やそのほかの敷地内の管理とか俺がいない間の留守番とかを頼んでいて、俺たち二人の生活に関してはマーヤに任せたい。
昼ご飯はみんなで食べるから今まではロッテにお願いしていたけど、これからはロッテと相談してくれ。
敷地内の別の棟に住んでいるから、俺がいない時に何かあったら二人を頼ればいいからな。」
「わかりました、使用人さんはウェインとロッテですね。」
「今日の夕ご飯は、ロッテにお願いしてある。
それと、明日からマーヤがある程度慣れるまで、だいたい一週間ぐらいかな、ロッテに一緒に家事をやってもらうよう、これもお願いしてあるから、ロッテにいろいろ聞くといいよ。」
「はい、それって、料理とか掃除とか買い物とかですか?」
「そうだな。
俺も、家の中のことはロッテに頼んじゃってるから、そういうことだと思うとしか言えないけど。
ロッテに聞いておけば正解だから。
あ、あと、俺は時々畑も手伝ってるけど、こっちの方は、マーヤがもっと生活に慣れてからでいいから。
最初からいろいろやると、疲れちゃうからな。
すごく忙しい時は、畑の手伝いもお願いするかもしれないけど。
その時はよろしくな。」
「畑もあるんですね。
畑仕事なんてやったことはないけど、大丈夫かしら。」
「手伝いをお願いするのは、ほんとに忙しい時だけだと思うよ。
多分普段は、昼ご飯の用意とか、買い出しとか、そっちの方でマーヤにはやってもらいたいと思う。」
「・・・頑張ります。」
「あと、俺の仕事を手伝ってくれている、というか彼の方がベテランだから俺が手伝ってるって感じだけど、フェルナンディアスがいる。
フェルナンのご飯についても、ロッテに聞いて。」
「週に何日か出勤するって聞きましたけど、出勤する日は決まっているんですか?」
「ああ、一週間のうち必ず二日は出勤する。
仕事の状況によってはそれ以上、役場に行くこともあるけど、基本は二日だな。
それとお休みは一日だけど、うちで仕事をする日は多少融通が利くから、前もって言ってくれれば休めるし半日休みとかにもできるよ。
でもさ、その場合はフェルナンが仕事の調整をしてくれるんだけど、あの人、なかなか人使い荒いからきっちり配分するんだよ。
少しぐらい手を抜いてもらってもいいんだけど・・・。」
「じゃあ、そういうことはフェルナンディアス様に相談すればいいですか?」
「ダメダメダメ!
フェルナンに言っちゃうと、ガッチガチに仕事を詰められるから。
まずは俺に言ってほしい。」
「ふふふ、リヒト様はフェルナンディアス様に頭があがらない様ですね。
何でもまずは、リヒト様に相談しますね。」
「そうしてくれ。
えーと、あと、何か言ってないことはあったかな・・。」
「リヒト様って結構心配性ですか?
わからないことがあれば聞きますし、皆さん大人ですからちゃんと答えてくれますよ。」
「ん、ああ、そうなんだけど。
ほら、早くみんなと仲良くなって欲しいからさ・・・。」
俺はそう言って、照れ隠しで横を向いた。
マーヤは初めてのことばかりだし、みんなもマーヤの状況はわかってるからちゃんと教えてくれるっていうのはわかっているけど、早く打ち解けて欲しいじゃん。
そう思っているとマーヤの腕が伸びてきて、俺の肩をたたいた。
何かと思って顔をマーヤの方に向けると。
むにゅ。
俺のほっぺにマーヤの指が刺さった。
「っつ。 何をしてる・・・。」
「リヒト様、横を向いちゃうから。」
ほら、顔が真っ赤になっちゃうだろ。
「こういうことは、しなくていいから。
名前を呼べばいいから。」
俺はマーヤの腕をとって、下げた。
こういうところ、俺が想像するお嬢様っぽくなくて可愛いんだよな。
この何日か一緒にいて思ったことは、彼女は表情豊かだってことと、結構大胆ってこと。
手をつないで歩いたり、膝枕をするって言ったり。
だからと言ってベタベタとくっついてくるわけでもなく。
時折見せる女性らしい仕草が『さすが貴族令嬢』と思い起こさせるが、そんな彼女だから手をつなぐことも何となくスマートで普通なことに見えるんじゃないかな。
そのあとは、契約魔石についてとか、窓から見える外の様子を話していたが、そのうち返事がないと思ってマーヤの方を見ると、コクリコクリと舟をこぎ始めていた。
俺はマーヤの横に席を移動した。
「マーヤ、ちょっと眠るといいよ。 ほら、よっかかれ。」
マーヤは、んんっと言いながら俺の肩に頭を傾けた。
程よい重みと温かさが伝わってきた。
こういうところはまだ子供っぽくて、距離がグッと近くなれるような気がする。
マーヤの寝顔を見てみたかったけど、体勢的に無理があり、今回はあきらめた。
残念!
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