15. 新婚デート・街なか編 その3
今日はマーヤの意外な一面も見れたし、二人の似顔絵も描いてもらったし、一緒に歩くのは楽しかったし!
俺はすごく満足な気分で、この後は公園を少し歩いてから帰ろうかな、と考えていたところに不吉な声が聞こえてきた・・・。
「せ、先輩っ!
あそこに、俺の見間違いじゃなければコーリヒトさんがいますよ。
あのコーリヒトさんが、何故かこの広い公園で女性と相席しています!」
「馬鹿だなぁ。 コーリが女性と相席するわけないだろう。
男と一緒に座ることがあっても、女性とはしないぞ。」
あの人たちは、なんてことを言っているんだ。
俺の前を通り過ぎる人たちが、俺を見ては笑っているように見えるよ。
それにしても、でかい声だな。
こんなに距離が離れているのに、会話が丸聞こえだ。
「コーリは、先日結婚したんですよ。
一緒に座っている女性は奥様ですよ。」
「は? あのコーリヒトさんが結婚?!
マジですかぁ!
あー、ヴォルグ様ですね、ヴォルグ様でしょう、ヴォルグ様が紹介してくれたんですね。
ちくしょう、『俺は女性はちょっと・・』と言いながらちゃっかり結婚しちゃっているなんてなんだよぉ。」
公園にいる人たちがみんな、一瞬俺を見た、ような気がした。
おいおい、なんてことを言っているんだよぉ。
と、やっと彼らも俺たちに近づいてきた。
とりあえず、立ち上がって迎える。
「よお、コーリ、こんなところで会うなんて奇遇だな。」
「フムス先輩、先日はありがとうございました。」
「リルマーヤさんもまたお会いできて光栄です。」
「フムス様もウィーロ様も、ありがとうございました。
その制服は、警ら隊の服ですね。 見廻りですか?」
「はい、その通りです。
今日は何事もなく無事に済んでおります。
おい、ヤッチ、お前も挨拶しろよ。」
ウィーロが、顔を赤らめてぼーっとしているヤッチを小突く。
「え、は、コーリヒトさん、お久しぶりです。
この素敵な女性は、何なんですか!」
「お前なぁ、言い方ってもんがあるだろう。
まず、自分から名乗れよ。
マーヤ、こいつはヤッチだ。
二つ下の後輩だけど、名前はもう忘れていいぞ。」
「そんな紹介あるっすか!
俺にも奥さんの名前を教えてくださいよ~。
もう、ずるいっすよ、コーリヒトさん。
結婚はまだいいや、なーんて言っていたのに、俺をおいて一人お先に、こんなかわいらしい女性をお嫁さんにもらうなんて!
あぁ、俺もヴォルグ様に嫁探しをお願いしたいっすよ。
コーリヒトさん、ヴォルグ様に頼んでくださいよぉ。」
「まったく、お前は! 自分で頼めよ。」
ヤッチとの会話を無視して、フムス先輩が俺に聞いてきた。
「コーリ、お前はいつまでこっちにいるんだ?」
「はい、明後日に帰るつもりですが。」
「おー、じゃあ明日の夜はみんなでお祝いするか!」
「え、あ、その~。」
俺はマーヤの方を見る。
フムス先輩は俺の視線に気づき、マーヤに言った。
「奥さん、コーリを明日の夜お借りしますよ。
いいですか?」
「えーと・・・はい、明日中にお返ししていただければどうぞ。」
「おお、話のわかる奥さんでよかったな。
そうと決まればみんなに連絡しようぜ。
場所はいつものジャンの店に集合だ。」
「えー、先輩、俺、明日は遅番なんですよぉ。」
「終わったらソッコー来いよ。 俺たち飲んでるから。」
「ぶー、わかりました。
コーリヒトさん、明日はよろしくお願いします。
ヴォルグ様にもよろしくお伝えください、絶対ですよ~。」
「コーリ、悪いな、フムス先輩の性格はお前もよくわかっているだろう。
ま、明日は久しぶりに楽しもうぜ。
リルマーヤさん、すみませんが明日はよろしくお願いします。」
「じゃあな、コーリ、明日は楽しみだぜ。
これから忙しくなるぞ。 声をかけまくらないと。」
「先輩、まだ勤務中っすよ~。」
「すみません、お騒がせいたしました~。」
三人は、言うだけ言うと、公園の中を走って突っ切っていった。
ふぅ~、嵐のような三人組だったな。
ちゃんと仕事をしてくれよ、警ら隊大丈夫か・・・ちょっと心配になってくる。
「ごめん、マーヤ。
急にこんなことになってしまって。
明日の昼は予定通り、馬の遠乗りに行くけど、その~、夜はみんなと飲み会に行ってきてもいいかな。」
今の話の流れではマーヤは了承してくれたけど、こういうことはちゃんと言っておいた方がいいよな・・・後々のこともあるし・・・。
結婚三日目で、奥さんを一人残し飲みに行く俺を許してくれ!
「偶然出会って、その場でこんな流れになってしまったのはびっくりしましたけど。
しょうがないですね、いいですよ、主役がいなければ困りますもの。
皆さんに会うのは久しぶりなのでしょう?」
「ああ、前にみんなに会ったのは・・・ヤッチの就職お祝いだったかな。」
「ヤッチさんの・・・。
リヒト様はヤッチさんとはかなり親し気な感じでしたね。」
「ヤッチは面白いだろう?
全然めげないから、なかなかイジリがいのある楽しいヤツなんだよ。
黙っていれば結構可愛い顔しているんだけどな。」
「そうですね。
可愛らしい顔とは反対に、話すことは思い切り腕白坊主な感じでしたね!」
「それと・・・明日の夜は飲みに行くから、明後日は午前中に帰る予定だったけど、ずらして午後に帰るってことでもいいかな?
飲んだ後の馬車は辛そうだから・・・すまん。」
「はい、わかりました。
予定はずらして、ですね。
一日余裕をもって計画しておいてよかったですね。」
そうなのだ。
予定では、家でのんびりする日として休暇の最後の一日を設けていたのだ。
帰ってすぐ次の日から仕事っていうのも疲れそうだし、マーヤを家に連れてきてすぐにロッテにお願いするのも二人のどちらにとっても大変かな、と思ったからだけど、急な飲み会で予定をずらしてもらう。
「リヒト様は、良いお友達をお持ちですね。
お祝いしようなんて言ってくれるなんて、嬉しいですよ。」
「そうだな。まあ、飲む口実が欲しかっただけかもしれないけどな。
それでも、人を集めてくれるとか、手間をかけてまでやろうって言ってくれるんだから、嬉しいっていえばそうだよな。
先輩も気にかけてくれるし、みんな良いヤツばかりだし、俺は恵まれているよ。」
こういうことをわかってくれるっていうのは、マーヤは物わかりの良い女性かもしれない。
「でも、その次の日はリヒト様の家に帰る日なので、あまり飲みすぎないようにしてくださいね。」
「うん、わかった・・・努力します・・・。」
「あらまぁ、全然信用できませんね。
二日酔いで我が家へなんて、私、介抱できませんからっ!」
マーヤって、普通に俺と話しちゃっていて、あまり貴族って感じがしないんだよな。
俺にはいいことだけど。
「では、そろそろ行きましょうか。」
「ああ、そうだな。
もうそんな時間か。
今日は楽しかったな、最後はハプニングが起こったけど。」
「ええ、いい記念の物も買えたし、とても楽しかったです。
ありがと!リヒト様。」
そう言って笑うマーヤ。
いやいや、君の笑顔に勝るものはないよ。
なーんて言えないけど、その笑顔をいつまでも見ていたいと思う俺だった。
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