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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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14. 新婚デート・街なか編 その2


「ちょっと時間は早いけど、昼ご飯にするか。」

「ええ、そうね。

運動したらお腹が空いてきたかも。

お勧めのお店はありますか?」

「お店じゃあないんだ。

向こう側の通りは市場が出ているんだけど、屋台を巡りながらいろいろつまむっていうのはどうかな。」

「屋台・・・。」

「あ、はしたなかったかな。」

「いえ、とっても楽しそうだわ。」


お嬢様のマーヤに配慮が足りなかったかなと思ったけど、マーヤはいい笑顔で答えてくれた。

食べ歩きなんてなかなかしないだろうから、楽しんでもらえるといいな。


市場には、野菜や果物、肉といった食材から、雑貨や洋服などの生活品、そして食事を出すところなど、いろいろな種類のお店が屋台として並んでいる。

俺たちは市場を巡りながら、おいしそうなものを買ってつまんだ。

いろいろな屋台は、マーヤにとっては本当に珍しいのか、ふらふらと見に行ってしまって迷子になりそうなので、やっぱりここでも手をつないで歩いていた。


市場の一角には木々が植えてあり木陰になっていて、そこにいくつかのテーブルと椅子が置いてあった。

お昼時にはまだ少し時間が早いので、あまり混んでいない。


「飲み物とつまむものを買ってくるから、あの椅子に座ってて。

飲み物は何がいい?」

「じゃあ、冷たい紅茶をお願いします。」

マーヤがテーブルの方に行ったので、俺は屋台に買いに行った。


「おやじ、冷たい紅茶と、串焼きと揚げパンを2つずつお願いな。」

「あいよ、ちょっと待ってな。」

パンを揚げるいい香りが漂う。

俺は、マーヤの方を見た。


テーブルについて、被っていた帽子をとり、頬杖をして、ちょっと上を向いて。

木々の葉からもれる陽の光が顔に輝いている。



・・・あの人は誰?

一瞬わからなくなる。


俺の周りから音が消えた。



知っているけど知らない人・・・。

知らないけど知っている人・・・。



マーヤが俺に気が付いて、笑顔で手を振ってくる。


あの人は、俺の、たいせつな・・・




ざざ、ざざざ。

市場に風が舞う。


ざざ、ざざざ。

俺の中にも風がざわめいた。




マーヤの周りから景色が鮮やかに彩っていく。

俺の耳に喧騒が戻ってくる。


「お待ち。できたよ、旦那。」

「あ、ああ、ありがとうな。」

おやじの言葉に気持ちが引き戻された。

代金を払って、両手に買ったものを持って、マーヤの元へ急ぐ。


今のは何だったんだ。

俺、どうしちゃったんだ!

でも、イヤな気持ちじゃない。

この気持ちが何なのか、わかりそうだけど、わからなかった。



座って食べ終わったころ、だんだん混んできたので俺たちは席を立ち、また屋台を廻った。

いろんなお店を見てはしゃぐマーヤは、とても楽しそうだった。

記念にと、おそろいのマグカップを色違いで買った。

一緒に使うのが待ち遠しくなる。

普段は思わないのに、些細なことが、とても楽しい。


「この先に大きな公園があるから、そこでちょっと休もう。」

「はい、お腹もいっぱいになって、少し座りたいですね。」

市場の先には公園がある。

今日は天気も良く日差したっぷりだから、外のベンチでも寒くないだろう。

公園には、俺たちと同じように考えたのか、結構な人でにぎわっていた。


ベンチを探しながら歩いていると、絵描きさんがちらほらいる。

公園を描きに来ている人もいれば、商売で来ている人もいるようだ。

「せっかくだから、俺たちの似顔絵を描いてもらおうか。」

「それは素敵だわ。」


話しかけやすそうな人を探しながら歩いていると、ちょうど描き終えてお客さんと挨拶をしていた絵描きさんがいた。

俺より少し年上かな、髪は明るい茶色でウェーブがかかっている、細身の男性だ。

顔が優しそうなので物腰が柔らかそうに見えるけど、紫のパンツに黄色のシャツをちゃんと着こなしているところは芸術家っぽい。


「あの人に描いてもらおうか。」

「ええ、いいわ。

ちょうど前の方を描き終えたみたいだし、話しかけやすそうな人だし。」

おお、マーヤもちゃんとチェックをしているじゃあないか。

なんとなく、誰も来ていないような人より、お客さんがいる人の方がいいよな。


「こんにちは。

似顔絵を描いてもらってもいいですか?」

「いらっしゃい。

どうぞどうぞ、来ていただいてありがとうございます。」

椅子に座るよう勧められて、並んで座った。

「二人を描いてもらいたいんですが。」

「わかりました。

お二人は恋人同士ですか?

仲がいいですね!」

やばっ、市場からずっと手をつなぎっぱなしだった。

「いえ、一応、ふ、夫婦です。

先日婚姻の儀を挙げたばかりで・・・。」

「おやまあ、それはおめでとうございます。

じゃあ、記念の一枚ですね。

腕がなりますよ!」


絵描きさんは、アルと名乗った。

アルさんは器用なもので、俺たちと話しながら描いていった。

何が好きかとか、どこに住んでいるかとか、何色が好きかとか、本当にいろんなこと。

会ったばかりの人を描くには、外見だけではなく言葉も必要なのかもしれない。

半刻ほどで書き終えて見せてくれた絵の中の俺たちは、少しはにかんで笑っている二人の顔があった。


「私に話しかける前に、お二人は少し向こうでどうしようか迷っていたでしょう。

その時の笑顔が印象的で、その顔を思い出しながら、目の前のお二人を見て描きました。

いかがでしょうか。」

どうですか、と聞きながらも満足げな顔のアルさん。

話しかける前から俺たちを見ていてくれたなんて、すごいよ。

絵も素晴らしい!

自分で言うのもなんだけど、二人の初々しさが表現されていて、この絵を見るたびに今日のことを思い出せそう。


「素晴らしい絵をありがとうございます。

とっても気に入りました。」

「ええ、仲がよさそうだけど、ちょっとぎこちなさもある感じで、今の私たちを表現してくれています。」

マーヤも気に入ってくれたみたいだ。

アルさんにお願いしてよかったな。

再度お礼を言って、俺たちはアルさんと別れた。



少し歩くと、空いているベンチを見つけたので、俺たちは座って落ち着いた。

「アルさんに出会えてよかったな。」

「本当に。

ケンカしても、この絵を見て今日の気持ちを思い出せばすぐに仲直りできそうだわ。」

「ぶふぉ、今からケンカなんて言うなよ~。」

「ふふふ、ごめんなさい。」

似顔絵のことで話が盛り上がる。



今まで女性と話す・・・機会は少なかったけど、こんなに楽しいことは初めてだ。

マーヤと話していると何でも言えそうだし、ちゃんと俺のことをわかってくれそう。

マーヤも同じような気持ちでいてくれるといいんだけどな。



読んでくださり、ありがとうございます。

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