13. 新婚デート・街なか編 その1
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ありがとうございます。
新婚デート、少し長くなりましたがお楽しみください。
行間の修正をしました。
昨日は、疲れたな~。
婚姻の儀に、帰ってきて祝いの宴。
そんなに動いてはいないんだけど、精神的にっていうか、日ごろしないことをすると疲れる。
マーヤもきっと疲れただろうな。
今朝はゆっくり起きて、シャワーを浴びて、俺はマーヤと昼食も兼ねた遅い朝食をとった。
それから、マーヤの侍女のジゼルがコンヴィスカント家へ戻るので、一緒に見送った。
ジゼルは、マーヤが小さいころから仕えている侍女で、しきりにマーヤを心配していた。
何かあれば帰ってきてもいいぐらいのことを言うから、マーヤと苦笑してしまった。
そういうことにはなりません、というか、しませんからご心配なく!
過保護な侍女ジゼルは、泣きながら馬車で戻っていった。
午後は、俺は親父殿と兄上たちと男同士でいろんな話をした。
仕事の報告会で顔は会わすけど、仕事以外のことはあまり話さずいつも解散してしまうので、四人でのんびりと何気ない話をする機会が持てたことは、俺は嬉しかった。
マーヤは、母上に付いて家のことや、市井のことなど、教わっていた。
ゆっくりした時間が過ぎ、夕食もみんなでいただき、一日が終わった。
◇◆◇
新婚2日目、なーんて言うと照れるが・・・。
今日は、マーヤにコンハートの街を案内しようと思う。
たぶんこれは、で、デートっていうのかな。
夫婦でデートもおかしいけど、初めて二人でお出かけだ!
マーヤは、淡い緑色のワンピースにブーツ、それとかわいらしい華やなか帽子を被っている。
あごの下でひもで縛っていて、そのリボンが可愛い。
俺は、(自分としては)ちょっとよさげなシャツとパンツだな。
一応、ベストは着てきた。
ノータイだけど、ベストを着ると引き締まって余所行きっぽく見えるから、洋服に疎い俺にとっては重宝するんだよ。
街までは、親父殿の馬車を借りた。
えーと、マーヤが馬車を降りるときには手を添えてあげないといけないんだったよな。
騎士学校のとき“マナーの時間”というのがあって、日常困らない程度のマナーから、貴族と会った時、家に招待された時など、いろいろな場面のマナーを教えてもらう授業があった。
エスコートの授業は忘れもしない!
実際やってみましょう、とか言われて、でも俺のクラスは男しかいなかったから、男同士でやりあいましたよ。
何が悲しくて男のエスコートをしなくちゃいけないんだって思ったね。
添えた手がごつくて、『お前、エスコートいらないよな!』って心の中で思ったけど、たぶん相手も思っただろう。
あの時は、こんなこと習っても使うときはないな~、なんて思ったけど、まさかあの授業が生かされる日がくるとは!
いや~何でもいろいろ覚えておくことは大事かもしれない。
俺が脳内であれやこれやと考えを巡らせている間、マーヤは車窓からの風景を見ていた。
市井の様子が余程面白いのか、窓から離れない。
馬車が止まったので、着いたかな。
街の馬車乗り場へ行ってもらって、そこからは歩きで街をめぐる予定だ。
御者のラリーが馬車のドアを開けてくれた。
俺が先に降りて、マーヤのエスコートをする。
マーヤの手が俺の手に添えられた。
小さくはないけど柔らかい・・・。
いかん、そんなことを思っている時ではない。
と、マーヤを見ると、なぜかぼーっとしていて、そのあと目が合った。
「あ、ありがとうございます。」
マーヤはそういうと、馬車の段を降りた。
んん? 俺、エスコートの仕方、間違ってないよな?
緊張しながらラリーに伝える。
「ありがとう、ラリー。
じゃあ、三の刻にまたここに迎えに来てほしい。」
「承知いたしました。」
と、ラリーが少し頭を下げて言ったが、あるところで顔が止まった。
うっ、見られたかな。
顔を上げたラリーはすこぶる良い笑顔で、なぜか片手は拳を作っている。
この顔は誤解している顔だ・・・俺が積極的だと思われているみたいだが、違うからな~。
俺たちは馬車を後にして、街の方へ歩き出した。
俺の全神経は今、左手に集中している。
俺の記憶が確かなら、エスコートの授業ではこんなこと習っていない!
馬車を下りたらエスコートした手は放していた、と思うけど。
そう、なぜか、エスコートしてからマーヤは俺の手を離さない!
こんな街なかで、俺は女性と手を繋いで歩いている。
ど、どうしよう。
で、でもまあ、俺としては離す理由もないから・・・。
そ、そのままにしちゃっているけどさ・・・いいよね。
気持ちが左手に行っちゃって、何も!考えられないっ。
「それで、私たちはどこへ向かっているのですか?」
マーヤさん、手を繋いでいることはスルーですね。
あえて聞くのは恥ずかしいので、俺もスルーしておく。
「俺たちは、あの塔に向かっている。
物見の塔に上って、街の様子を見ようかなと。」
この街には、以前戦が起きた時に建てられた“物見の塔”がある。
この街で一番高い建物だ。
「あの塔に、のぼるんですか・・・。」
「ああ、上からの眺めは結構いいぞ。
街の様子を知るにはとっておきだ。」
「結構高いですね。
エレベーターとかないですよね・・・。」
「えれ? そんなものは知らないけど、階段があって、50段くらいだったかな?
あ、高いところが苦手なのか?」
「いえ、高所恐怖症ではないですけど・・・。
はい、頑張って上りますね。」
マーヤはときどき、変わった言葉を使うな。
貴族の言葉なんだろうか?
街の様子も話しながら塔に歩いて行った。
物見の塔は、今は入場料を払えば誰でも上ることができる観光地になっている。
ものすごく大人気!というわけではないけれど、受付には何組か並んでいた。
「あ、入場料を払いますね。」
「いや、今日は俺が払うよ。
軍資金もちょっともらったし、大丈夫だ。」
「そうなんですか?
では、お言葉に甘えて今日はお願いします、旦那様。」
ばごんっ。
「だ、大丈夫ですか?
いきなりエアかかと落としをされたように、前のめりになりましたけど!」
「エアかかと落としは何だかわからないけど、だ、大丈夫です、ご心配なく・・・」
思いっきり後頭部から頭をぶん殴られたぐらいの衝撃が俺を襲った。
「だんなさま~?」
(たぶん)赤くなっている顔を上げると、マーヤも顔が赤くなっていた。
「あの~、言葉にすると何か得体の知れない威力がありますね。
慣れないので、やっぱり名前で呼ばせていただきます。」
・・・ソウシテクダサイ。
順番が来たので、入場券を買って、説明を受けた。
まあ、高いところに上るから気を付けてってことだな。
「はい、これ入場券ね。
それと、階段の段数を聞いたら、55段だって。」
「えぇ?!」
「え?」
「増えてる・・・。」
「は?何が?」
「段数がさっきと増えてるじゃあないですか!」
「いやいやいや、増えてないし!
50段っていうのは、俺が大体の予想の数を言っただけで・・・。」
「だけど、たかが五段、されど五段なんですよっ!」
マーヤは 『全くもうっ』 とかなんとか頬を膨らませて言っている。
かわいい、というか、おかしい、というか・・・。
「あは、ははは、君って案外面白い人なのかな。
ゆっくり上がっていけばいいさ。」
俺はそう言って手を差し出した。
あっ、勢いで手を出しちゃったけど・・・。
マーヤは何の疑問も持たない様子で、俺の手の上にぽふっと手を置いた。
「お願いですよ。 ゆ・っ・く・りですよ。」
「43、44・・・」
マーヤは段数を数えながら、休憩を二回挟んで螺旋階段を上がり、やっとここまで上ってきた。
上から年配の、ご夫婦らしき男女二人が下りてきた。
「あらあら、お嬢さん、もうすぐ頂上ですよ。
頑張ってくださいな。」
「47、あ、ありがとうございます。」
俺に手を引かれながら一段一段踏みしめて上るマーヤの姿は、微笑ましく映るのかもしれない。
「54、55ッと。
ふぅー、やっと着いた。
うわ~、リヒト様!すごいです、見てください!」
「おっと、危ないからゆっくりねー。」
「あ~、やっぱり高いところは気持ちがいいわね!」
おぉ、いい反応。
っていうか、『やっぱり』って何だ?
山でも登ったことがあるんだろうか?
でも、確かに目の前が開けて気持ちがいいな。
「天気も良くて、よかったな。 風も清々しい。」
「本当に! こう見ると大きな街ですね。
ヴォルグ家はどこですか?」
「うちはっと、あー、あれだな。 ちょっと高台にあるあの家だ。」
「すごい、ここから見ても家がわかるなんて。」
いやいや、あなたのご実家の方が数倍もでかいです・・・。
「ほら、母上が家から出てきたよ。」
「え?!そこまで見えるの?」
「ははは、そんなところまでは見えないよ~。」
「んも~、本気にしちゃったじゃないですか。
リヒト様、ちょっと意地悪です。」
「ごめん、ごめん。」
なんか、楽しい。
俺もちょっとテンション高いかも。
「私の家のある、アグランの街はどっちですか?」
「それは、こっちだな。」
展望ができるここは幅があり通路になっていて、その通路は円状になっているので、左に回っていくとアグランの街の方面になる。
「この前通ってきた畑の向こう側がアグラン市だ。」
「広大な畑が広がっていますね。
あの畑の先にアグラン市があるんですね。」
「寂しいか?」
「寂しくない、とは言えないですけど。
この前まで向こうにいたのに今はここにいるって、とても不思議な感じですね。」
やっぱり俺が守ってやらねば。
寂しい思いはさせないよ・・・とは本人に向かっては、恥ずかしいから言えないけどなっ。
「こっちが俺の家がある、フィアンティの町の方だ。」
俺はまた左に回った。
「こちら側も畑が広がっているんですね。」
「ああ、南側になるから、より畑が多くなるかな。
まあ、この街より小さい町だし、農業が盛んだし。」
「リヒト様は、その町の町長さんですよね。
町に行くのが楽しみです。」
「小さいけど、町の人たちはみんないい人ばかりだから、住むにはいいところだと思うよ。
帰ってから、顔なじみのお店とか、いろいろ行ってみよう。
そして、こっち側がトリス兄様が住んでいるアルストの町があるよ。」
「二番目のお兄様ですね。
トリスお兄様は、アルストの町長さんでしたっけ。」
「ああ、前はフィアンティの町長だったけど、俺が二十歳になった時に兄様から引き継いたんだ。
アルストの町は以前はモルド兄上が町長だったんだぜ。」
「フォージアグラン領はコンヴィスカント家が任されていますが、そのうち三つの街をヴォルグ家の方々がまとめているんですね。」
「そうだね。
だからマーヤの御父上のグランハルト様も、この結婚でヴォルグ家との絆が強くなるからいいことだと思ってくれると思うよ。」
「そう思ってくれることを願いますわ。」
「でも俺は、家同士のことではなく、あなたと仲良くやっていきたいと思っているから。
家も大事だけど、俺たちの気持ちも大切だと思うから、さっ。」
「リヒト様・・・。」
恥ずかしくて、マーヤの顔を見ては言えなかった。
面と向かって言えていないけれど、伝わったかな。
でも、大空に向かって言ったから、なんか誓いの言葉のようになってしまった。
く~、顔が熱くなるぜ、やっぱり恥ずかしい。
「さあ、そろそろ下りようか。」
「はい。」
マーヤは返事をすると、今度はマーヤから手を出した。
俺はその手を取る。
さっきの俺の言葉の意味を多少はわかってくれたのかな、と嬉しく思う。
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