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つまり、俺が彼女の夫でして  作者: 森都 めい
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10. 婚姻の契約の儀

行間の修正と言葉の補足をしました。


「コーリヒトもこんなに立派になって・・・。

母はとても誇らしく思います。」

涙を拭くふりをして、またこの会話になっている。


俺たち、親父殿と母上と三人で、これから馬車で婚姻の儀が行われるアグラン市の神殿に向かうところだ。

「また演劇の話をするんでしょ。 今回は、身分違いの恋でしたね。

側近に謀反を起こされ、追われて森に迷い込んだ王太子を村の女性が助け、王太子は癒され彼女に惹かれ、一緒に王家を奪還して王太子は女性を王太子妃に迎えるって話でしたっけ?」

「まぁ、コーリ。まるで見てきたかのようにお話を知っているのね。」

「先日一緒に見たでしょう!」

「ほほほ、コーリ、冷静ね。 緊張していないようでよかったわ。」

「母上、その『あなたの緊張は私がほぐしてあげたわ~』みたいなドヤ顔はやめてください。

まだ緊張してませんから。

親父殿も、母上に何か言ってくださいよ。」

「すまんな、コーリ。 私はベルの味方だ。

やっぱり息子の緊張をほぐしてやるのは、母親の務めだな。

君の優しさがうれしいよ。」


そう言って親父殿は母上の肩を抱き寄せた。

おーやじーどの?何を言ってますか?

「ほら、ごらんなさい。

コーリも早く良き妻を娶りなさいよ。」

「だからっ!今から迎えに行くんですよっ!」

「ほほほ、コーリと話すのが一番楽しいわぁ。

トリスは反対にやられちゃうし、モルドなんて掛け合ってもくれないのよ。

コーリは変わらないでいてね。」


ぐぬぬ、兄上たちはそうやってこの母上をやり過ごしているのか。

俺もまだまだ修行が足りないな。



そんな大騒ぎな会話をしながらあっという間に神殿に着いた。

このフォージアグラン領で一番大きい街、アグラン市。

その神殿は街に比例して壮大だ。

白で統一された外観。

細部にまでこだわっている彫刻が、建物の威厳を誇っている。

神殿に入ると、柱は何本かあるものの、絵画で装飾された広い空間に圧倒される。

この広間は誰でも入れるようになっているので、混雑まではしていないが多くの人たちが見学に来ていた。


そんな人たちから離れるように神殿の奥に向かい、俺たちは控室に通された。

先ほどまでの喧騒が嘘のように、ここはとても静かだ。

部屋には少し大きめのテーブルに椅子が四脚。

お茶とお菓子を出してくれた。

お茶の香りが気分を落ち着かせてくれた。

どうやら女性側の控室とは別々になるようだ。


リルマーヤ様が今日、どんなドレスを着てくるのか俺は知らない。

お互いの衣装合わせはせず、それぞれで仕立てているので、そういう場合の男性の衣装は女性が何の色のドレスになっても合わせやすい色にするそうだ。

仕立屋のおじさんに教えてもらった。

俺は、グレーのフロックコートに飴色のクラバットをしている。

リルマーヤ様の目の色は橙黄色だから、その色を身に着けようとするととても派手になってしまうので、抑えた色調の飴色にした。

俺の目の色はヨモギ色なので、何かそんな色を付けてきてくれると嬉しいな。



「では、お時間になりましたので、ご案内いたします。」

神殿の係の人がドアを開け、そう伝えてきた。

さぁ、いよいよ始まる。がんばれ、俺!


係の人について、親父殿、母上の順で俺もそのあとに続いて神殿の“契約の間”と呼ばれる広間に入った。

それほど広くもない部屋だが、天井が高いので圧迫感がない。

何本かある柱には彫刻が施されていて、荘厳な雰囲気を演出していた。


奥の真ん中に、親父殿と同じくらいの年に見える神殿長が立っていた。

長い三角の帽子を被り、少し重そうな神殿の衣装を羽織っている。

白地に赤と金の糸で刺繍がしてあり、儀式用の衣装のようだ。

その前に石でできたテーブルがあり、筒状の紙とインク、小鉢と石の棒が置かれている。

それと、魔石が入っているのか、深紅のビロードの布で覆われた高そうな小箱が置いてあった。

あれが契約に使われるものかな。

俺は、神殿長とテーブルを挟んで向かい合った右側に立ち、両親たちは半円を描くように、少し間をあけて見守るように並んだ。


続いてコンヴィスカント家が入ってきた。

両親に続いてリルマーヤ様も歩いてきた。

おぉ、これはまぶしい!

彼女は真っ白な、少し体のラインに沿ったドレスを着ている。

その場に居合わせた人たちから「ほぅ・・」と声が漏れた。

よく見ると、ドレスは真っ白だけどレースで飾られている。

ふわっとしたドレスを思っていたので、想像と違いドキドキしてしまった。

つけているアクセサリーがヨモギ色をしている。

ヒスイだろうか、ちょっと嬉しかった。

そして、なぜかベールで顔を覆っていた。

それではあまり顔が見えないじゃあないか・・・。

そこは、ちょっと残念。




こんなまぶしい人の夫が俺でいいんだろうか・・・。

いかん、ここは前向きに考えよう。

俺に巡ってきたこの結婚。

ちゃんとこの人を守ると俺は誓ったのだから・・・。




リルマーヤ様が俺の左側に立つと、神殿長が言葉を発した。

「ご両家には今日の良き日を迎えられ、おめでとうございます。

私は、この婚姻の契約の進行を務めさせていただきます、アグラン神殿の神殿長、ヴァンナルクと申します。」

ヴァンナルク神殿長は、流れるような滑り出しで話し始め、両家へのお祝いの言葉や、契約の注意点などを語った。


「さて、それではコーリヒト・ヴォルグ様とリルマーヤ・コンヴィスカント様の婚姻の契約の儀を始めましょう。」

一口水を飲んだヴァンナルク神殿長は、やっと本題に取り掛かった。

テーブルに置いてあったものは羊皮紙で、広げると魔法陣が描かれていた。

上側の真ん中に小さな魔法陣が一つ、その下の両側に大きめの魔法陣がそれぞれ一つずつ、合わせて三つ書かれている。

大きめの魔法陣の下には、一本横線が引かれていた。


「この黒いインクで、線の上にサインをしてください。

その時名前が魔法陣の上にかかるように書いてください。

コーリヒト様からお願いします。」

ヴァンナルク神殿長によると、インクは特別に調合されたインクで、描かれている魔法陣と同じインクだそうだ。

魔法陣と横線の間は狭いので、サインをするとどうやっても魔法陣の上に書いてしまう。

魔法陣は気にせずサインしていいということだろう。

俺はサインをして、ペンを置いた。

「では、次にリルマーヤ様がお書きください。」

リルマーヤ様がサインをするときに、『ふぅー』と深呼吸が聞こえた。

彼女も緊張しているのだろう、その気持ちはわかるよ。

それから彼女もサインをした。


「それでは次に、魔石を置きます。」

ヴァンナルク神殿長は、赤い小箱を手に取り蓋を開けると、中から聖属性の魔石を取り出した。

他の魔石より少し小さめのクルミほどの真っ白な魔石を、羊皮紙の上側に書かれている魔法陣の上に置いた。

すると、魔石が光を放ち始め、魔法陣が光り、続いて下の二つの魔法陣も光りだした。

「わ~お!」

隣から驚いたような声がかすかに聞こえた。

俺も思わず息をのんだ。凄い、こんな風になるんだ!

ほんの十秒ほど光を放ったあと、光が消えた。


『ぱりん』


そして、魔法石が三つに割れた。

え?割れちゃったよ、大丈夫?

俺は心配になってヴァンナルク神殿長の顔を見たが、特に焦った様子もなく普通だったので、割れるのが本当らしい。よかった~。


白かった魔石はなぜか緑色を帯びていた。

ヴァンナルク神殿長は、三等分された魔石の二つをまた赤い小箱に入れ、仕舞った。

「この魔石はそれぞれがお持ちください。」

と言ってテーブルの上に置いた。

これが、持って帰ってアクセサリーとして使う分なのかな。

あと、残ったかけらの一つはどうするんだろう?

ヴァンナルク神殿長は、小鉢を持ち、その中に魔石のかけらを入れ、石の棒で押した。


『きゅっきゅっ』


かけらは簡単に砕けたようで、その砕けた魔石の粉を羊皮紙に振りかけた。

すると今度は淡い緑色を帯た光りが魔法陣から放たれ、治まると魔法陣と俺たちのサインは魔石と同じ緑色に変化していた。

「ほぇー、色が変わっている。」

また隣から小さな声が聞こえた。

うんうん、凄いな、魔石!

契約の魔石って本当に不思議だ。


「これで婚姻の契約は交わされました。

お二人の魔石は緑色に変わりました。

この色に込められた言葉は『希望』です。

お二人の未来に希望と、末永きお幸せを授からんことを、大地と共にお祈り申し上げます。」

ヴァンナルク神殿長が終わりの言葉を伝えた。



リルマーヤ様は、俺の方を向いて言った。

「すみませんが、ベールを上げてもらえますか。」

えーっ、それを俺がするの?

大変なお仕事ではないか!

俺が少し戸惑っていると、リルマーヤ様は膝を少し折って頭を下げてくれた。

俺はベールの裾をもって後ろに捲ると、リルマーヤ様の顔が見え、目が合った。

微笑んでくれたので、俺は多分顔が赤くなった。

リルマーヤ様が前を向いたので、俺も神殿長の方に向くと、ヴァンナルク神殿長は笑顔を見せた。

二人で礼をすると、ヴァンナルク神殿長と両親たちは笑顔で拍手をしてくれた。

すごく温かい祝福の拍手に包まれ、俺はちょっと感動した。



そのあとは、部屋を移動して会食の広間に通された。

両家で昼食をとり、終わりの時間となった。



これからはリルマーヤ様はヴォルグ家の人間だ。

リルマーヤ様のお義母上は気丈にふるまっていたが、別れるときには涙が見えた。

「リル、元気に過ごすのですよ。

母は、いつでもあなたを思っていますからね。」

「つらいことがあったら、いつでも帰ってきていいからな。」

子爵様、なんてことをおっしゃいますか!

「リルマーヤ様は幸せに致します。

どうぞご安心ください。」

「おぉ、その言葉が聞きたかったよ。

娘を頼みますよ。」

なんか、言わされた感がなくもないが、俺は子爵様にそう伝えて握手をした。



帰りは四人で実家のコンハートの町へ馬車で戻る。

子爵様たちに見送られ、家路についた。



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