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第九話 思わぬ副産物


「おやまぁ!」

「実は初めて作るんだが、まぁ上出来だろう」

『ヤベエエエェェェ!!』


 客席にあたる、食堂内のテーブルにできた料理を乗せる。

 ついでにレモンを絞ってハチミツを加え、魔法で作った氷と水を入れたジュースも追加。


 ハンナさんは俺と料理を見比べると、感心したように頷いた。


「はぁ~。あたしはここに来る冒険者の一面しか知らないわけだけど、収納(クローク)持ちだと野営中も食事が豪華なのかねぇ?」

「さ、さぁ。どうかな」

『アニキがスゲーだけでさぁ!』


 俺とハンナさんは向かい合わせに席について軽く祈りを捧げ、早速自分の分を取り皿に分けた。


「あ、まずはそのままで」


 ソースを付けようとしたハンナさんを一旦制す。

 言われるまま熱くなった持ち手を慎重に持ち上げ、ふーふーと冷ましながら食べる。


「んんっ! おいしいよ!」

「! よかった」

「なんだろうね、肉の旨みと辛みが同時にくるんだけど、……思ったより香りが強くないね? 食材聞いた時にはもっと、こう。むせる? かと思ったんだけど」

「その串、ウェル草の茎なんですよ」

「あらやだ! 気付かなかったわ」


 鼻にガツンと香りのくる食材を多く入れたつくねに、ウェル草の清涼感のある香りはぴったりだったようだ。

 うまく共存している。


「タマネギの甘さもいい感じだね」

「でしょう? ツークはどうだ?」

『ウマー!』

「ハハ、よかった。じゃ、俺も」


 根の方を持って少し息を吹きかけ、そのままかぶりつく。


「ん! はふ、んまいっ」


 口に入れると、ほくほくのつくねと共に香ばしさを感じる。

 噛んだ後には、食材に含まれたすべての香りがウェル草にうまいことまとめ上げられ、鼻から出ていき食堂を去って行く。


 思ったとおり、火炎鳥の脂は良質。

 あれだけフライパンに肉汁が出ていたのに、まだ噛めば噛むほど肉汁が溢れてくる。

 そこにタマネギの甘さ、ニンニクの香り、ショウガの辛さが加わると、まるで至福の液体のようにも思える。


 教えてくれたあの時の商人に感謝しないとな。


「じゃぁ、今度は」


 早速一本目を平らげたハンナさん。ついでにツーク。

 二人は言われるまま、今度はソースを付けて食べる。


「! こりゃぁいいねぇ!」

『ヤベエエェェェ!! オレっち、これスキぃ!』

「コクがあって、まろやか。……お酒も入ってるのかい?」

「赤ワインを少々」

「ま~豪華だこと!」


 料理について談笑しながらする食事。

 なんか、久々だな。


「よかったら、ソースをたっぷりつけて、パンにも挟んでください」

「へぇ?」


 ほどよい厚さでスライスしたパンに、串から外して縦にナイフを入れたつくねをサンド。

 完璧すぎる。


『ンメエエエェェェ!!』

「ソースがパンに……! 余すところがないねぇ!」

「王都でワイルドボアの脂を上手に取り入れた料理があったので、ソースにしてみました」

「いやぁ、冒険者ってのはなんでもできるんだねぇ」

「たまたまですよ」


 そう、たまたま。

 元々料理が好きだとか、食に精通しているとかではなくて。

 ただパーティの役に立ちたい。

 前線を張るみんなの体調を、少しでも気遣いたい。

 外で手に入れた食材を利用して、食費を抑えたい。

 そんな一心で、自然に覚えただけだ。


 美味しさを追求した料理ってほどでもないが……。

 たしかに、冒険者にしては手の込んだものを作っているのかもしれないな。


「でも、例えそれがたまたま出会ったものだとしても。今、自分の一部になってるんなら、それでいいのさ」

「……!」

『オレっちもアニキの飯大スキ~!』

「ありがとう、ございます」


 そうか。

 いいのか、それで。


 そう言われると、この料理を作った時に思い浮かんだのは他の誰のことでもない。

 相棒と、ハンナさん。

 二人に喜んでもらいたいからだった。


「少なくとも、ツークやあたしなんかは、とってもうれしいけどねぇ」

『ちがいねぇッス!』


 俺もどこか、意固地になっていたのかもな。


「……いろいろありましたけど。


 そうですね。料理、好きかもです」


 始まりはなんであれ、今の俺にとってはそう思えることなのかもな。



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― 新着の感想 ―
[一言] はっきり言うね、調理説明を長々と解説する作品は異世界放浪メシ以外ほぼハズレてます。もっと言うとこの作品も説明文で構成されてます 小説とは説明文解説文以外で構成された物が小説です
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