第六十一話 山地の調査②
「【流星のような瞬き】!」
王都でも名の知れた森。
大した変化のない風景をシグルドさんに従って進む。
基本Cランク以上の魔物がうようよすると聞けば、普通であれば尻込みをするだろう。
だが、今の俺たちにその心配は不要。
なぜなら──
「雑魚ばっかだな」
「慢心は隙を生むと思うが」
「あ? やんのか?」
「『……』」
「いやぁ、楽させてもらってますねぇ」
俺やシグルドさんが敵を感知する前に、さっさと前を行く二人が道を阻む魔物を叩き切っているからだ。
お情け程度の俺の補助魔法は、自分たちが邪魔にならないよう速度上昇の魔法だけを唱えれば済んでいる。
いや、ほんと飯要員だな俺……。
「基本はC、いてもBランクですね」
「ふむ、控えておきましょう」
メナールはともかく、アドルの剣筋も中々のものだった。
スキルの恩恵なのかは分からないが身体能力も抜群で、刃が通りづらそうな敵にも高いところから振り下ろしてその力を増幅させる。
なんというか、戦い慣れている様子だ。
『さすがッスねぇ……』
「ほんとにな……」
いや、勢いある若者はほんとすごいよ。
俺より討伐経験の多いメナールは既知の魔物も多い。【鑑定】で情報を渡さなくても弱点属性を瞬時に把握してスキルでぶった切る。
Aランク冒険者というのは、やはり総合力がものを言うんだろうなぁ。
「あ」
「ん?」
不意にシグルドさんが何かを言いかけた。
「あ、二段きのこ」
『オレっちそれ好きー!』
その視線を辿れば、言いたいことが分かった。
「シグルドさんもお好きですか?」
「はい。鍋に入れて煮ると美味しいですよね」
「なるほど。煮てもいいな、ツーク」
『ワクワク』
いや、後方は平和な話題ばかりだな……。
前衛二人はある意味常に戦いに身を置いている。
「つーかお前、騎士じゃねぇんだから騎士の誓いとか引き合いに出すなよ」
「その精神を引き継ぐことには、騎士であるかどうかは関係ないと思うのだが」
「へー。未練がましいのな」
「……」
「こら、アドル」
「けっ」
戦闘中はむしろ息がピッタリな様子なのに、口喧嘩は絶えない。
嫡子の弟で、剣士。
自分に似たようなところがあるから、無意識に相手が気になっているんだろうか……。
「メ、メナール。あのさ」
「? はい」
古傷を抉られそうになったメナールを元気づけようとするものの、意外と気にしていない様子で返事をした。
「き、気にしすぎないように、な……」
いかん。大した言葉が出てこない。
『君の凄さは俺たちが知ってる!』って言うと、『なに目線?』って感じだし。
かと言って『言いたい奴には言わせておけ!』だと、『いや、身分的にはアドルのが上なんだよな……』ってなるし。
色々考えた結果、当たり障りのない言葉が自信なさげに出てきた。
「……昔であれば反応したかもしれませんが。しかし、今はもう出会いましたから」
「ん?」
「たった一人でも自分の理解者がいるというのは、存外心強いものですよ」
食堂でご飯を食べる時のメナール。
普段の凛々しい顔つきと異なり、年相応の顔つきでにっこりと笑うとメナールは踵を返して再び先を歩いた。
「……?」
『アニキのことッスかねぇ?』
「俺? ……それなら」
たった一人なんてことはないはずだ。
ハルガさんにアビー、セレにモリクさん。一応、実力を認めているというならベルメラ。
「ちゃんと見てる人はいるよな」
『オレっちはアニキのことばっかり見てやす!』
「それもどうなんだ?」
『ヘヘッ』
「──リシトさん、そろそろお昼にしませんか?」
「! そうですね、頃合いか」
お腹の空き具合から、昼食の時間が来たと察する。
俺たちは休憩するのにちょうどいい場所を探した。
更新遅くなりましてすみませんm(_ _)m
再来週まで執筆環境が異なるので、不規則になるかもしれませんがよろしくお願い致します。
次回は明日の午後に更新です。




