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第五十二話 ガルム焼き!①


『──オレっち、完全に理解しやした』

「またなんか言い出したな」


 【収納(クローク)】から取り出した細い草をくわえ、腕組みしながらテーブルの上に陣取る。

 そのドヤり顔は何かを提案……もとい、企んでいる顔だ。


『もとはお魚なんですよねぃ?』

「あぁ。生の魚を大量の塩で漬け込んどくらしいぞ。地域によってそのままだったり、内臓を取ったり。あるいは川魚だったり、一緒にハーブを入れたり。いろいろ違うそうだ」


 これは先ほど、今後の宿代の相談をした際ハンナさんに聞いた情報だ。


『ほうほう……』

「なんだ? 何が始まるんだ?」


 わざとらしく聞いてみると、ツークはふむふむと思考を加速する。

 食べ物への関心がずば抜けてるんだよな……。


『つまり、────クセがつよい!!』

「…………まぁ」


 ビシッと俺を指差し導き出された答えは割とふつうの答えだったが、言わないでおいた。

 というかツークにクセが強いと言われると素直に頷けないのはなんでだ。


『けっこうニオイやすもんねぇ』


 机に置かれた小瓶へと近寄る。

 相変わらず寄る際には小さな手で鼻を押さえる。


「今はツークほど感じないが、蓋を開けたらそうなんだろうな。……やっぱりハーブは入れるべきだよなぁ? 味は塩気強いらしいし、どうするか」

『香りつよめのでおねがいしやすッ!』

「ウェル草はまだちょっとしか成長してないしな」


 ツークの【収納(クローク)】内に何があったか思い出す。


『えーっと……タイムにセージ、レモングラスにローズマリー』

「ミントにフェンネルっと」


 乾燥させているものもあれば、野外で発見して摘んでそのままのハーブもある。

 俺はその中から二種類に絞った。


「香りの強さで言えばセージかミントか?」

『ミントは合わなそうですねぃ』

「んじゃ、セージにしよう」


 乾燥させることでより香りが強くなるハーブ。

 やや丸みを帯びた白っぽい葉が特徴で、元より乾燥されていたものを王都で購入していた。

 魚醤(ガルム)ほどではないと思うが、同じくクセのある香りがする。


『ワクワク』

「ヘルバイソンと一緒に買った肉を使おう」


 ヘルバイソンがお高めだったので、肉屋で一緒に買ったのはやや安価な肉たち。

 そのうち一般的な家畜である鶏の肉。魔獣ではない。

 魔素を見れば魔獣の三分の一くらいだろうか。

 飼料がルーエ産だろうから、王都で見るものよりは充分多いと思うが。


 肉屋に卸されているのを買う利点。

 それは骨や筋が取り除かれ、部位ごとにきちんと分けられた物を買えるということ!

 買取金額を差し引いて、解体屋でぶつ切りのものをそのままもらってもいいのだがやはり手間がかかる。


 自分や仲間に無料提供するならともかく、お金を貰う側となるとな……妥協はできない。


 そんなわけで、鶏のもも肉を使った料理。


「しかしソテーとなると、最近立て続けに食べている気が……」

『味がちがうんでオッケーッス!』

「ならいいか」


 俺とツークは昨日の夜にシチューを食べたが、メナールたちは食べていない。

 今度作る時は煮込み料理もいいな。


魚醤(ガルム)か……はたしてどんな風になるか」

『イエーイ! 料理は冒険ですぜ、アニキィ!』

「お、言うなぁ。出来がどうでも文句は言うなよ?」

『ウッス!』


 ではでは、メナールたちが来る前に簡単に下ごしらえしておくか。



 ◆



『ピャーーーーー!?』

「ほら、ちょっと離れた方がいいぞ」


 エプロンを着用して早速魚醤(ガルム)の味を確かめる。

 ……の前に、ツークはその独特な香りを堪能した。


「そんなにか?」

『オレっちの鼻は、オレっちのハートと同じく繊細なんでさぁ……うぅ』


 熱いハートの持ち主設定はどこにいったんだろうか。


 俺はそこまで感じないが、繊細らしいツークはクセのある香りに悶絶している。

 たしかに香辛料とは全然ちがう匂い。

 平面的ではないというのか、嗅いだ時にその原材料がババーンと想像できるというか。

 やや魚の生臭さを感じるというか。


「味は……思ったよりしょっぱいな」


 黒っぽい液体を指に付けてなめてみると、かなり塩気が強い。

 これは一度に多く入れるより、少しずつ入れて味を調整した方がよさそうだ。


「甘めにするか」


 甘じょっぱい味付け。ハチミツを入れようか。

 セージと一緒にワインを入れて、更に芳醇な香りもプラス。


『ドキドキ』


 ツークはキッチンから見て右側、いつもの席がある広いテーブルの上でこちらの様子を見守っている。なぜか一番奥の席。

 そこまで離れなくても……。


「ハチミツだろ? んで、ワイン。セージでほぼ臭みはなくなるだろうから……」

『ステーキといえば、ニンニク!』

「好きだなぁツーク。ニンニクの香りは平気なのか?」

『タハー』


 確かに、臭みを消した以上食材をまとめる香りというのが必要か。


「んじゃ、今言ったの出しておいてくれ。あ、塩胡椒もな」

『ウィッス!』


 現在鐘が五つ鳴ったので、午前十時。

 肉に味が染み込むよう包丁の先端で穴をあけておく。


 ニンニクも細かく刻んで、乾燥したセージもパリパリと手で潰す。


「一時間くらい漬け込んでおこう」


 魚醤(ガルム)だけは慎重に、少しずつ継ぎ足し味を調整。

 漬け込む用と焼きの時に掛ける用で二つ分の液ダレを作っておく。

 液ダレと肉をボウルに入れ、氷室へと運んだ。





いつもご愛読ありがとうございます。


最近日射しの下に出ることが多く、暑さによる食欲不振でご飯シーンの筆が止まっておりました(;´∀`)


それと普段魚醤というものを使うことがないので、あれこれ調べものもしていました。


こちらの醤油は全国的にみて甘いらしいので、塩気のつよいというガルムの味がさっぱり想像できず(笑)


薄口・甘口・刺身醤油のうち、いつもは甘口を使うのですがしばらく薄口を家で使ってみました。


しかしいざ料理に使っても、砂糖とみりんで味を調整するので……なんの成果も得られませんでした()


むしろ作中で蜂蜜を入れて、こちらに寄せました(笑)完全に力業です……

ギリ食べたことのあるナンプラーのイメージで書いてます。


ガルムの語源、実際人気のあった地域での扱いなど、調べてみるといろいろ興味深かったです。


作中では一般的な魚醤の意味でガルムと訳していますが、本来はもう少し違いがあります。

現代で入手できるものは昔ほど香りもそこまで強くないみたいです。


流行った土地柄なのか分かりませんが、ハーブはオレガノとパセリを一緒に使うことが多いみたいです。

私はとにかく消臭!と思い、殺菌作用の期待が大きいセージにしました。力業です。


あいにく我が県にはないのですが、ガルムソース?を提供されているお店もあるみたいなので、いつか体験してみたいです。



更新につきましては、ストックができるまでしばらく週2話ほどになるかと思います。


お休み中も執筆の習慣化のために、ご飯が出てこないVRゲームものの短編を1つ書いたので

ご興味あればそちらもぜひお読みいただけると嬉しいですヽ(´ω`)ノ



今月も暑い日が続くと予想されます。

皆さまもご自愛のうえお過ごしくださいませ。


長くなりましたが最後までお読み頂きありがとうございます。



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