閑話 従魔たちの会議模様 【ツーク視点】
『なるほどですねぇ……。セレ姐さんも、アニキと同じくらい渋い主人ッスねぇ』
『シブいかはわかんないけど、とってもステキな人間だよ~。ボクは空が飛べる分、いろーんな場所で、いろーんな人を見てきたからね~』
『ははぁ、兄さんもすごい』
「兄さん?」
『アニキはアニキ。フゥ兄さんはフゥ兄さんッス』
「なんだそれは……」
村に着くまでの間、オレっちたちは後ろの荷台で盗賊の見張り役を買って出た。
さすがはうちのアニキ。
押し込まれた盗賊が転がってるってのに、冷静沈着。
暑苦しくても文句も言わねぇ。
まさに男の中の男。
くぅ~~~~! 我が主ながら痺れるッス!
『ルゥ兄さんはどうですかい? オレっちの第一印象だと、ちょっとクールで取っ付きにくいと言いやすか……』
ちらりとメナールを見れば、アニキと談笑している。
……かと思えば、意識が戻って騒ごうとする盗賊を、恐ろしい目つきで睨みつけ黙らせる……。
やっぱあいつコエエエェ!?
『ルゥ? ルゥもいい子だよ』
『……? ちょっといいですかい?』
『ん?』
『その言い方。フゥ兄さんのが、年上なんですかい?』
『そーだよ~。ルゥはボクの後輩~』
『意外!? 従魔は見かけによらない!?』
「それはおまえもだぞ、ツーク」
『!? なにをおっしゃいやすアニキ! オレっち、見た目は圧倒的マスコット、中身は男の中の男。ギャップが売りのクロークテイルですよ!?』
「あ、自覚あったのか」
かわいいとカッコいいの両立。
それがオレっちの目指す従魔道。
男の部分はアニキを見習うとして、かわいいの師匠をどなたかにお願いしようと思ってやしたが……。
『アニキ、たいへんッス! フゥ兄さんも、見かけによらず男の中の男でした!』
「なんの話だ?」
『ツークっておもしろいよね~』
一見のほほんとした印象のフゥ兄さんですが、ギルドやセレ姐さんの前での機敏な動き。
ハキハキとした返事は、仕事とプライベートを完全に使い分けるタイプ。
これは……、デキるお方に違いない。
『こりゃぁ、兄さんを師匠と呼ぶ日も近いか……』
『なんの話~?』
『いえ、こっちの話でさぁ』
ひとまず、ルゥ兄さんからも話を聞いてみたい。
オレっちが目指す理想の従魔。
【収納】以外でも頼れる男。
マスコット的愛らしさでアニキの人気をお助けし、頼もしすぎる精神力でアニキのメンタル面もサポート。
つまり──、最高の、──相棒!!!!
『うおおおおおぉぉ! 燃えてきたああああぁぁ!!』
「? 彼、ずいぶんと張り切っていますね」
「気にしないでくれ……」
付与術師の人気のなさがなんだ!
アニキはいつだってサイコー!
特に飯! あれはヤバイ!
ちょいと自分のことには無頓着で誤解されやすいッスけど、他人のことには一生懸命な縁の下のなんとやら!
追放? 上等でぃ!!
オレっちが、あいつらなんて目じゃないほど、アニキを大大大人気冒険者にしてみせますぜぇ!!!!
『アニキ! オレっちにお任せぇ!』
「なにが?」
『どぉぞ、巨木の枝に登った気持ちでお待ちくだせぇ!』
「……それ、どんな気持ちだ?」
従魔の知り合いが増えて……、よかったッス!!