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第十七話 VS 獄炎鳥


「わ、もうすっかり暗いな」


 話し込んでいると、すっかり辺りは薄暗くなっていた。

 時刻は午後四時ほど。


 まだ陽は出ているのだろうが、森の木々が遮ることにより村にいる時よりもずいぶん暗い。


「片づけるか。……ツーク、大丈夫か?」

『うぅ……オレっち、こういうのに弱くて……』


 未だ涙をぬぐうツーク。


「落ち着いたらでいいぞ」

『ッス!』


 コップと椅子を寄せて集めておく。


「──! リシトさん!」

「わっ」


 メナールが座っていた椅子を置くと、とたんに腕を引かれた。

 かと思えば、何かが頬を掠める。


「奴です!」

「っえ!?」


 頬を掠めた何かの軌道を辿ると、地面には燃え盛る羽が刺さっていた。

 あ、危ないところだった……。


「ど、どこだ」

「上です」


 木々の薄暗さに紛れ、その影が重なる。

 上を見れば火炎鳥の倍以上ある大きな炎を纏った鳥が空を舞っていた。

 人間二人分、いや。それより大きい。


「で、でかいな」

「リシトさん、鑑定をお願いします」

「あぁ」


 言われるがままスキルを使う。


==========

 【獄炎鳥】

 【火炎鳥の上位種】

 【火属性耐性あり】

 【弱点:水属性】

 【元の住処を追われた個体。気が立っている】

==========


 俺が読み取れる情報で分かったことは──


「なんか、元の住処を追われて怒ってるらしいぞ!?」

「獄炎鳥の住処を……? それは厄介な」


 ということはつまり、こいつよりさらにヤバい存在もどこかにいるのか。

 勘弁してほしい。


「火属性耐性あり、水属性弱点。まぁ、情報としては火炎鳥に似ている」

「想定内です。水の魔法剣で対処しますので、援護をお願いします」

「お、おう」


 怖気づいている場合ではない。

 メナールはやる気だ。

 なら、一緒に依頼を受ける者として、やるだけのことはやらないと……!


「ツーク、危なくなったら転移するんだぞ」

『へ、へいっ!』


 ひとまず俺の肩にしがみつくツーク。


「【流星のような瞬き(ラン・ステラ)】!」


 さっきの羽への反応も遅れたくらいだ。

 俊敏性を高める補助魔法を自分とメナールに掛ける。


「助かります」


 そう言うとメナールは、近くにあった木に向かって飛んだ。


「おぉ」


 幹を足場に方向転換し、獄炎鳥と同じ高さへ到達する。


『!』

「魔法剣、──【水刃(アクア・スパダ)】!」


 メナールは速攻で決めにいく。

 弱点である水属性の魔法剣。

 メナールの刃を水流が覆いつくし、そのまま振りかぶって獄炎鳥の体に届いた。


『ギァ!』

「! 残影……?」


 ……かに見えた。


「ちっ」


 斬ったように見えたのは、炎の部分だった。

 メナールが斬りかかる直前、そちら側の炎を大きく出力し体を大きく見せたのだろう。

 なかなか知能が高い。


 隣に降り立ったメナールは、剣をもう一度構えなおす。


「面倒だ」

「メナール、俺が魔力の流れを見ることならできるんだが……」

「やつの反応速度の方が速い、ですね」


 作戦会議をしようとするものの、斬りかかられた獄炎鳥はさらに怒り狂う。

 さきほど投げてきた羽が、逃げ場もないほどたくさん降ってきた。


「うわっ」

「ふん」


 俺は補助魔法のおかげでなんとか避ける。

 メナールはといえば、その場から動かず剣で切り払った。

 か、かっこいいな。


「空中だと分が悪い。なんとか、引きずり落としたいな……」


 メナールがぼそりと呟く。


『落とす……。ハッ! お、オレっちに名案!』

「どっ、どうした?」


 連続で炎を纏った羽が降ってくる。

 避ける俺に必死にしがみつきながら、ツークは提案した。


『オレっちがメナールを、真上に飛ばしやす!』

「! 転移か、それはアリだな」


 ツークの目に映る範囲であれば、人だろうが物だろうが飛ばすことはできる。

 だが、それにはメナールに触れていないといけない。


「メナール!」

「なんでしょう」


 涼しい顔をしておびただしい数の羽を斬ってはポイ、斬ってはポイと繰り返す。

 ちょっとこわい。

 獄炎鳥も若干引いてる。


「皿洗いの時と同じ要領だ! ツークが君を上に飛ばす!」

「皿洗い……、なるほど!」


 先刻のことを思い出すと、俺たちの意図をくみ取った。


「ツーク、頼んだぞ」

『お任せぇ!』


 羽を避けながらメナールの傍に近づけば、ツークが彼の肩に飛び乗った。


『いよっしゃぁ! 準備はいいかぁ~~!?』


 なぜか張り切っている。

 あれか、獄炎鳥も食べたいのか。


「準備はいいか、だと」

「いつでも」


 それが合図となり、ツークはメナールの頬にちょんっと触れる。


『ウオオオオオオォォ、いっけええええ!』

「……あ」


 皿洗いの要領……とは言ったが。

 この場合、肩に乗ったツークも一緒に飛んでいくんじゃないか?

 ……まぁ、いいか。


『ギャィ!?』

『ぎゃあああああああ!!??』


 先ほど下にいた人物が、突然自分よりも高い位置に現れ獄炎鳥は困惑した。

 ……ついでにツークも。


「【雷のような猛威(ヴィス・サンダー)】!」


 叩き落とす、というのだから力技だろう。

 ついでに力がアップするバフもかけておく。


「落ちろ! 魔法剣──【水刃(アクア・スパダ)】!」


 体を纏う炎を魔法剣で切り裂き、今度こそ体へと到達した刃は振り下ろす勢いのまま獄炎鳥を地面へと誘う。


「! 危ないっ、【白の外套(ヴァイス・コート)】!」


 獄炎鳥は自分の未来が見えたのか、最後の反撃とでも言うように首をぐるりとメナールへと向け、炎を吐き出した。


 俺はとっさに魔法耐性がアップする魔法をかける。


「! 助かりました!」

「はぁ!!」


 そのまま地面へとダイブした三人。

 先に到達した獄炎鳥はすさまじい音を立て激突し、ぐったり横たわる。

 メナールは勢いをうまく殺してなんなく着地。


 ……ツークはメナールの肩で、あまりの衝撃に目を回している。


「ふぅ」

「お疲れさま」

「やはり、リシトさんはすごいです」

「いやいや、君の実力だから」


 ふつうの人はあんなすごい奴を前にして、アグレッシブには動けないんだよ。


「ツークも、お疲れ」

『お、オレっち……目が……。ほ、星が見えるぅ~』


 この間から何かと目に負担をかけるツーク。

 俺の肩に戻ると、パタリと倒れた。


「しかし、これで証明できましたね」

「ん?」


 なぜか嬉しそうに言うメナール。

 証明?


「やはりリシトさんは、すでにAランク相当ですよ」

「いやいやいやいや、それはない! ぜったい、ない!」

「ご謙遜を」


 今日のことは、たまたまメナールと組めてラッキー! だろう。

 実力を証明、というよりは。

 Aランク猛者の実力も底上げできる補助魔法の再評価、といったところだ。

 だいたい、回復術師や魔術師が付与術師を兼ねるパーティもあるんだ。

 今更再評価されたところで、遅いだろうよ。


「いずれにせよ。あなたを追放だなんて、……愚の極みですね」


 メナールはやれやれといった様子で首を振った。



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― 新着の感想 ―
[良い点] キャラが生き生きとして読んでいてとても楽しいです。 文章もとても丁寧で現時点でまだ途中までしか読んでいませんが、次が気になりするすると読み進めていってしまう魅力を感じ個人的にとても好みな作…
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