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身近な悪意 よくある殺意  作者: Kouei


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8/8

第8話 秘めたる想い

(たくみ)、私彼氏できた!」


 京香(きょうか)が報告した相手は、小学校から高校まで同じで腐れ縁の匠だ。

 そして彼女の隣にいる(ともえ)とその向かいにいる大輔(だいすけ)は中学からの友人。

 授業が終わった4人は、そのまま教室に残り雑談をしていた。


「今度はどれぐらいもつかねぇ」


「余計なお世話!」


 匠が茶化しながらそう言うのには訳がある。

 理由は分からないけれど、京香はなぜかつきあって数週間でいつもフラれてしまう。


 厳密に言うと、相手と音信不通になってしまうのだ。


 今まで付き合った相手は、すべて向こうから言ってきたにも関わらずに…だ。

 そもそも1ヶ月にも満たない程度で付き合ったと言えるのかも疑問である。


「で、今度はどんなヤツよ」


「F校の人。一昨日、巴に合コンセッティングしてもらってね」


「巴に?」


 匠が巴に視線を向ける。


「きょ、京香が合コンしたいっていうから…」


 なぜか巴の言葉は上擦(うわず)っていた。


「ふーん…」


  スッ…と巴に冷ややかな視線を向けている匠に、京香は気が付いていない。


 巴はあわてて 向かいに座っている大輔に話しを振る。


「だ、大輔も知ってるよ!」


「な、何で俺に…」


 言い(よど)みながら、目が泳いでいる大輔。


 京香は、なんだか妙な雰囲気が流れているのを感じ取った。

 二人とも匠に気を遣っているようだ。


(なぜ?)


 そんな疑問を京香は抱いた。


(あ!)


 京香の頭の中でその理由が(ひら)く。


「匠、合コンに誘わなかったから()ねているんでしょ?」


「はぁ?」


  図星かと思ったのに呆れ顔になった匠。


「あんたはよけいな事言わなくていいからっ」


 京香の言葉に巴まで呆れた顔をした。

 大輔は含み笑いをしている。


(何なの?)


 京香は、自分だけが分かってない空気が気に入らなかった。


「あ、そうそうっ 今度祭りがあるだろ? 四人で行かないか?」


 話を(そら)らすように、今週末に開催される夏祭りの話を持ち出した大輔。


「あ、ごめ ―― んっ 私、先約がある」


 京香が両手を合わせて、申し訳なさそうなしぐさを見せた。


「…新しい彼氏と行くの?」


 そう聞いてきたのは匠。


「うん」


 匠は嬉しそうに答える京香に眉を(ひそ)める。

 京香以外の二人は匠の表情に気づき、肩を(すぼ)めながら互いに目くばせをしていた。


「…ま、今度は一ヶ月超えるように頑張れよっ」


 そう言うと、教室を出て行った匠。


「何あれ。なーんか、トゲがあるのよねぇ」


 京香が不機嫌そうに言うと、巴と大輔が大きく溜息をついた。



 ◇



 ドーン…


 ドーン…



 黄昏時の空に、太鼓の音が響いている。

 神社はたくさんの人でにぎわっていた。


 そんな中、鳥居の側で立っている浴衣姿の京香。

 彼と約束した時間からもう40分が過ぎていた。


 スマホに連絡しても返信はない。


「お待たせ」


 やっと来たと思い振り返ると、その声の持ち主は匠だった。


「なんであんたが…」


「もう来ないよっ 好きなりんご飴(おご)ってやるから行こうぜ」


「……笑えばいいじゃない。どうせまたフラれたわよ…浴衣まで着て…バカみたい…」


  自虐的に話す京香の目に、涙が(にじ)み出す。


 ハンカチを出そうとした時、目の前にアニメのキャラクターが印刷されたハンカチがヌッと現れた。


「さっきクジで当たった」


 渡されたハンカチと匠の顔を見比べて、吹き出す京香。


「ぷはっ なにこれっ」


 これ以上泣くに泣けなくなってしまった。

 そんな京香の様子を見て、匠も笑う。




「——— 結局、京香にちょっかいかけていた男はどうなったの?」


  遠くから二人の様子を見ていた巴は隣にいた大輔に話しかけた。


()()()()()どこかでボコられて、半死半生状態なんじゃねえの?」


「他校だから知らなかったみたいだけど、私たちの学校で京香に手を出したらどうなるか知らないヤツはいないよねぇ」


「ああ。けど、京香も鈍臭(どんくさ)すぎだろう? 小学校からの付き合いの癖に、(あいつ)の本性に気づかないなんて」


「猫被ってんのよ。他の男に取られたくなければ告白すればいいのに、できないで(こじ)らせて行く一方なんだから、匠は」


 二人はうんざりしたようにその場を離れた。




 ピーポーピーポー…



 神社にサイレンの音が近づいて来る。


「救急車?」


 京香は音のする方に目を向けた。


「誰かケガもでもしたんじゃねぇの? せっかくの祭りなのにかわいそう〜…ふっ」


 一瞬匠が笑ったように見えた。


「はー、また彼氏探し頑張ろうっと!」


 京香は大きく背伸びをするように両手を天に向ける。


「………」


「ん? 匠、今何か言った?」


「いや。それよりりんご飴どうすんの?」


「食べるに決まってるでしょ!」


 鳥居を(くぐ)り、 お店に向かって歩き出した京香を見ながら 匠は独り()ちる。


「せいぜい頑張れよ。……絶対別れさせるけど」


  彼の言葉は、雑踏にかき消され京香の耳には届かなかった。


 匠の前を数歩先に歩いている京香。


「ほ―んと、私の事が好きなのねぇ…救急車まで来ちゃって。これで何人目かしら、ふふふ…」


 彼女は満足げに(つぶや)いた。



【終】



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