表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
身近な悪意 よくある殺意  作者: Kouei


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/8

第6話 階段を上がる女

【注意】

※性描写あり






「ちょっとお店の外階段、掃除してくるわ」


「は? もう、外真っ暗だぜ?」


「けど、日中はお店やそっちの掃除もあるから…外階段は夜しかできなくて…」


「あんな錆びて古くなった階段、もう使っていないからいいだろう。それに掃除したってたいしてきれいになっていないけどな」


 “使っていないのにきれいになっていないってどうして分かるの?”

 そう、喉まで出かかった。


 夫はさっきからずっとスマホをいじっている。

 どうせ、あの女と連絡取っているんでしょうよ。


「…ねぇ、お店の外階段かなり古くなっているでしょ? やっぱり非常用として使えるようにしといた方がいいと思うの。あぶないから修理しない?」


「ん? ああ、その内な」


「……」


 スマホから目を離さずに返事をする夫。

 右手にはスマホ、左手には缶ビール。

 器用に使いこなしている事で。


 私は掃除用具を入れたバケツを手にすると、二軒先の敷地へと向かった。


 そこは夫の父親が創設した小さなパン屋。

 一階は販売店、二階が作業場、三階が事務所になっているが物置場所となり、今は使っていない。


 裏口から入り、内階段を使い三階へと上がった。

 非常口の扉を開けて、小さな踊り場に出る。


 義父の時代からだからもう…半世紀以上経つのよね。

 古くなった手すりは錆びだらけ、固定されている部分も所々(ところどころ)緩んでいる。

 風よけに取り付けた板はあちこち剥がれていた。

 今はもう、あまり使われる事がなくなった外階段。


「あまり…ね」


 ここであの女と密会している事には気づいていた。


 あの女…アルバイトで採用した19歳の女子学生。

 夫よりも一回り以上も若い。


 ウチは今まで二人でお店を切り盛りしてきた。

 最近ありがたい事に客足が増え、二人では回らなくなり採用したのが彼女だった。

 働き始めて半年ほどかしら?


 違和感に気が付いたのは、彼女を採用してから2か月経った頃。 


 休業日には1日中家でパソコンにへばりついていた夫が、よく外出するようになった。

 休憩時間は自宅に帰り二人で食事を摂った後、一緒にお店に戻っていたが、今は夫が先に戻るようになった。


「じゃあ、早め店に戻って準備してるよ」


 昼食後はいつもだらりと寝そべっていた夫が、珍しい事を言い出した。


 これで分からないはずがない。


 私は夫の跡をつけてみた。

 夫はお店の外階段を足取り軽く上がって行く。

 私はお店に入り、内階段を使って上がる。


 三階の事務所には人の気配がない。

 かすかに非常口の扉から声が聞こえてきた。

 私は声のする方へ、そっと近づく。


「ふふ…こんな事していつか奥さんにバレるわよっ」


「大丈夫だよ、いつも昼食後は片付けと夕飯の下準備をしてから来るから、30分くらいは戻らない」


「30分かぁ〜、一回くらいできるね?」


「後ろ向いて。一応店の準備もしとかなきゃならないからな」


「もうぅ〜…いきなりぃ? でも、外でするのって興奮しちゃう…んっ」


 ギシギシギシッと錆びた音が、リズミカルに鳴り始めた。


 外階段の向こうは雑木林になっており、人通りはない。

 南側は空き地、北側は空き家。

 店の入口は東側。西側のこちらとは反対側だ。

 外から見える事はないだろう。



 この夜から私は、店舗の外階段の掃除をするといって出てくるようになった。


 今夜も三階へ上がり外階段に出て、赤茶けた手すりに触れる。


 ギシギシギシッ…

 ギシギシギシッ…


 あの鈍い金属音が聞こえてくる。

 私はバケツからある物を取り出した。


 

 

「じゃあ、先に戻って準備しとくから」


 いつものように昼食を終えると、夫は早めに家を出た。

 そしていつもの場所でいつもの事をするのでしょうね。


「…今日で三階に行く必要はなくなるかな」


 私はお茶を飲みながら一息ついた。

 その時……




「「あああああああ!!」」



 !!!ドン!!!




 悲鳴と共に何かが落ちる音がした。


 私は掃除に使ったバケツに視線を向ける。

 中にはカモフラージュで、掃除用洗剤と雑巾が入ってた。

 底にはプラスドライバー…


 掃除と称してあの階段へ行く度に、少しずつ少しずつ固定ボルトを緩めていった。

 あの二人の重みでさらに緩んでいくだろう。


 今日外れるか、明日外れるか、ドキドキしながら毎日待っていた。

  

「結構日にちがかかったわね…」


 私は玄関を出て、走り出した。…一応。

 外階段に行ってみると、折り重なるように女と夫が倒れている。


「だから修理しないか聞いたのに…って、もう聞こえないか」


 お尻を半分出した状態の間抜けな夫に話しかけた。

 

「はぁ…もう上がらなくてすむわ」


 私は古びた階段を見上げながら(つぶや)いた。




【終】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
多分そうなるんじゃ無いかなぁ〜と読み進めてましたが…予想通りでにんまりしました …お尻出しての昇天…ご愁傷様です 来世ではキチンとしなっせ〜ヾ(・ω・*)ノ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ