第99話
サトルはニーアが手配した馬に彼女と二人で乗る。ニーアが騎手を務め、サトルは彼女にしがみつくような形となった。
「行くわよサトル! 情けないところは見せないでね!」
ニーアは片手で手綱を操り、馬を走らせた。こちらに進軍を続けるメロベキア兵数万に向かってだ。もう一方の手にはアラダインの首級を持っている。
そしてメロベキア軍の先鋒隊に近付いた彼女はアラダインの首を見せつけこう言った。
「メロベキアよ! 騎士団長アラダイン・フォン・セドキアは、勇者サトルが討ち取った! 我々はこれ以上の闘争を望まない! もしも騎士団長の仇を討ちたいのであれば、勇者の力を持って全力で相手をしよう!」
その言葉を合図にサトルはエクスカリバーを天高く掲げ、残り弾数限界までグングニールを展開する。
先陣を切って勇者と対峙しに行った騎士団長の無残な姿と、空に殲滅の一閃を一斉展開された様子に慄き先鋒部隊は膝から崩れ落ちた。
その情報は瞬く間に全軍に伝播し、メロベキア軍の士気は失われ、残る数万の軍は大人しく降伏したのであった。
◇◇◇
クリエ草原での大戦の翌日。今だ大国メロベキアに勝利した余韻を多くのサラニア兵達が味わっていた早朝。
二頭の馬にニーアとマリー、サトルで別れて今だ薄暗いクリエ草原を駆けだし始めた。
サトルやニーア達はそんな余韻に浸っている暇もなく。彼らは出立したのだ。
目的地はメロベキア王都。アブラハム王と宰相サラディの身柄を確保するためである。
「昨日の今日でゆっくり休んでと言いたいところだけど……ちょっといやな動きがあってね」
ニーア曰く、イントルーダー内で報告連絡のまったくない部隊があり、終戦後に忽然と姿を消したそうなのだ。
それはニーアをとても慕っていたサロメが率いる部隊だと言う。
「考えたくはないけど……この状況でこんな動きをすると言うことは……」
それ以上ニーアは言葉にしなかったが、彼女はサロメがイントルーダー内の裏切り者だと考えているようだ。
メロベキアの城から脱出する際にニーアの目的と動向がバレていた件、聖剣の取得にイガタ平野へと向かった際にアラダインと鉢合わせた件。
イントルーダー内にメロベキアに情報を流している裏切り者がいることは分かっていたが……
まさかあのお調子者にしか見えないサロメだったとは……
まだ確定した情報ではないにしろ、彼の動きを見る限り概ね黒と言えるだろう。




