表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

80/106

第80話


「だって、今この瞬間がすっごく楽しいんだもん! 確かに、大きな戦いが目の前に迫ってるのは確かだけど……私は今こうしてサトルと……リーダーと一緒にいろんなところに行ったのがとても楽しかった」


 彼女はメロベキアと言う国を追い出され。没落村を出ることなくその人生を終える未来だった。

 逃亡劇だったとはいえ、彼女からすればとても楽しい旅だっとと言う事なのだろう。


 そして彼女はサトルへ向き直り、彼の目を見つめ――


「それにね……サトルは勝つよ。絶対に勝つ。私はそう信じてるから、怖くないんだ」


 マリーのその言葉に全くの嘘はない。

 サトルは「目は口程に物を言う」と言う自分の世界にある言葉を思い出していた。そんな言葉をサトルは内心、馬鹿にしていた。


 人の目が語るはずもない。そんなのを見て相手の感情が分かるなんて言うのはよっぽどの特殊な訓練を積んだ人間か、詐欺師のどちらかだと思っていたからだ。


 今にして思えば、その瞳に強い意志が宿る程の人間がサトルの周囲にいなかっただけなのかもしれない。情熱を持って、熱量を持って人に何かを伝える人間を見ていなかっただけだったのかもしれない。


 そして、サトル自身が全身全霊をもって相手に何かを伝えることをしたことが無かったからなのかもしれない。


 サトルの価値観を塗り替えるかのように、マリーの目は雄弁に語っていた。

 サトルへの信頼を……


 だからか、サトルは気恥ずかしくなり目を逸らしてしまいたいと反射的にそらそうとした目と顏を強引に止めた。そしてサトルは懸命にマリーの目を見る。彼女の瞳に宿る魂を見つめる。


「俺もその旅に付いていってもいいかな?」


 考えるよりも先にサトルから言葉が生まれていた。だからこそ、その言葉には何の飾りっけもなかったし、心からの言葉だった。


「サトルがなんて言おうと私は最初からそのつもりだったよ」

「え?」

「だってさっきも言ったじゃない。サトルと一緒にいろんなところに行くのが楽しいって……」


 マリーは前を向いて、広場を行き交う人々を眺める。


「サトルが元の世界に帰りたいなら、その方法を見つける旅にでるし……サトルがこの世界に残るならこれからのために旅に出るし、どっちにしても私はサトルを連れ出すつもりだったからさ」


 マリーは少し頬をかく。心なしか彼女の頬が赤くなっているように思う。


「サトルを説得する手間が省けっちゃたな」


 再びサトルの方へ向いたマリーの表情は、頬を赤くして微笑む彼女は太陽のような輝きを放っていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ