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第8話


 メレニアに連れてこられた大浴場はサトルの想像を大幅に超えていた。


 なんの素材かはわからないが、とにかく綺麗でピカピカの石床。悪趣味とも取れそうなライオンチックなたてがみが特徴的な動物の口から湯が流れ、側面には煌びやかなステンドグラスが至る所に取り付けられている。


 そして何よりも驚いたのはその広さだ。浴槽を見渡すとは初めての体験でサトルは興奮した。


「すっげぇぇ!」


 サトルの声が巨大な浴場に響き、しばらくして帰ってくる。天井は湯煙で確認することが出来ない。サトルはこの豪華で広い浴場を独り占め出来ると思うと妙な興奮を覚えた。


 成程、富を掴んだ人間が大きな屋敷を構えるのはこう言った高揚感を得るためなのか、と変な納得をした。


 浴槽付近にある無駄に金ピカな桶にお湯をすくって身体を流す。そして広い浴場の中を見渡して洗い場を探す。それらしい場所は見つけたが、石鹸等の身体を洗う一式が見当たらない。あるのは大きな椅子だけだ。


「失礼いたします」


 どうしたものかと思案していると浴場の入り口からメレニアの声が聞こえた。


「え、ちょ、メレニア⁉」


 湯煙の奥から出てきたのは間違いなくメレニアであった。先程のまで着ていたメイド服ではなく、胸と局部をただ、布で覆っただけのなんとも扇情的なビキニスタイルだ。


 メイド服の上からはわからなかったがなかなかの破壊力を備えた胸元は、彼女が歩く度に覆った布から解き放たれようともがいている。


 サトルは慌てて目を逸らし、浴場に入る際に少し探したが、タオルのような布類は用意されていなかったので自分の股間を手で隠す。


 サトル自身こんな状況を全く考えなかったわけではない。しかし、いざそんな状況が訪れてしまうとどうしていいのかわからずパニックを起こしてしまう。


「どどど、どうしてめ、メレニアがが!」


 混乱中の頭が上手く言葉にしてくれない。女性経験0を前面に押し出したようなどもりように恥ずかしくて風呂で温まるより先に顏が熱くなっていくのがわかる。


「勇者様のお背中を流しに参りました」


 でしょーね! そうでしょーね! お付きのメイドさんが浴場でしてくれると言ったらそうでしょうね! まずい……


 前の世界の友人に話せばうらやましい限りだと言われるだろう。サトルも逆の立場なら絶対にそう言って茶化すこと間違いない。


 しかし、自分の裸を女性に見られる今の状況は、思っていたよりもずっと恥ずかしい。それにメレニアの姿は裸よりもよっぽどエロい! それを恥ずかしがる様子もなく、堂々と背中を流しに来たと言われると、一人恥ずかしがっている自分が更に恥ずかしい。


 恥ずかしさのスパイラル状態に陥ったサトルの身体が熱を帯び始める。


 

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