表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

79/106

第79話

 ひとしきり笑い合ったサトルとマリーはそれぞれ買ってきた肉とサバイモをそれぞれの膝の上に乗せて食べ始めた。食材と調理法は同じものであることは間違いないが、別々の店で購入したためかヨース肉とサバイモの切り方が違う。


 ときおりお互いが相手の買ってきたものに手を伸ばす。


 マリーがサトルのヨース肉に手を伸ばせば、サトルがマリーのサバイモに手を伸ばす。

 味は全く同じものではあったが、マリーの買ってきたものの方が少し美味しいとサトルは感じた。


「ねぇ、サトル……」


 お互いの肉とサバイモが半分ほど減ってきた頃、マリーは食事の手を止めて言った。


「戦いが終わったらサトルはどうするの?」

「……」


 戦いの先のこと……サトルも考えなかったわけではない。目の前にあるメロべキアとの戦い。生死を賭けた大きな戦いのその先。つまり無事に勝利したあとの話。


「元の世界に帰るの?」

「わからない……正直、戦いの後のことなんて、マリーに言われるまで考えもしなかったな。勝てるかもわからない、どうなるかもわからないからからな……」


 マリーに促され、整理しきらない思いをたどたどしく、そのまま口にする。


「でも、今は元いた世界に帰りたいとかはないかな……」

「どうして?」


 召喚されてすぐの頃は漠然ともやがかかったようになっていて、考えることをしなかった。きっとあれは洗脳効果の一つだ。それが解けた今でも元の世界への未練とかはあまりない。


「多分帰ってもやりたいことがないからかな……俺がいた世界は、いや、俺が生まれたところは恵まれていた」


 この世界にやって来てサトルが一番実感することはそのことだ。

 生まれたときから衣食住が十分に揃っていた。


 小さな理不尽はあるかもしれないし、不満なんて腐るほどあったかもしれない。しかし、明日食う心配をしなくてもいい、今日死ぬ心配をしなくてもいい。


「恵まれていたからこそ、なんだか生きている実感がなかったんだ。こんなのただの贅沢なのかもしれないけどさ。それに戻る方法もわからないしな」

「そっか……」


 マリーは静かに頷き、前を向いた。


「私はね。旅に出ようと思うの」

「旅?」

「うん!」


 大きな戦いを前にマリーの表情からは不安や恐怖と言った負の感情が見えない。その声色にも同じことが言える。


 そして、彼女は楽しそうに語る。


 これからの未来に多くの希望を抱いていると大きな声で言うように話始めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ