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第56話


 林道からイガタ平野にでると、そこはサトルが思い描いていた光景とは大きく違っていた。てっきり緑の絨毯が敷き詰められた広大な平野を思い浮かべていたからだ。


 だが、その予想は大きく裏切られる。


 広大なことは間違いないが、至る所で土が露出していて、平野と呼ぶには少々抵抗を感じる程に荒れている。戦いの後と思われる古くなった武器が散乱している。


 生々しい程に残った戦いの残滓。これが戦場なのだと、サトルは身が震えた。


「凄まじいな……」


 誰に言う訳ではないが、ただただサトルからそんな言葉が漏れる。


「そうね。貴方の前任の勇者はまさしく神のような強さだったそうよ。彼女は巨大な槍を生み出して投擲したそうよ。そこにあるへこみは恐らくだけど、その槍が着弾したあとなのでしょうね」


 サトルがニーアの視線の先へと目をやるとそこには半径十五メートルほどの円と、最深部は五メートルはあるのではないかと思われる大地のへこみがあった。


「他にも、巨大な鉄の塔を遥か上空から降らせた言われる勇者や、剣の一閃で海を割った勇者がいたって聞くわ。話を聞いた時にはどれだけ誇張しているのかと思ったけど……この平野を見ちゃうとただただ真実なのだと思わされるわ」


 歴代の勇者の逸話、まさしく暴力装置としては最高峰。メロベキア国王がサトルの体たらくを見て、すぐさま処分を決めたことを納得せざるを得ない。


 だが、その大したことのないスキルのおかげで、洗脳されてただの大量虐殺するだけの存在にならずに済んでいる。


「あそこね」


 歩いていくと荒れた平野のど真ん中に槍を持った兵士と観光客らしき数人の人々が見えた。近付くにつれ、兵士のやる気のなさをひしひしと感じてくる。


 勇者しか持てない聖剣。どんな値打ち物でも、持ち運べないならそれに価値を見出せない。精々観光の種にする程度である。


 別に誰も盗ったりはしない。自分はただ、観光客から見物料をとるだけの集金係だと言わんばかりの佇まいだ。


 そんなやる気のない兵士の近くには休憩小屋らしき掘っ立て小屋だけがある。


 その手間には日の光を浴びて、燦然と輝く聖剣エクスカリバーが見えた。それはただただ、野に晒されていて平野に突き刺さっていた。


 サトル達は辺りの様子を伺いながも、堂々と聖剣の場所まで移動する。


 聖剣エクスカリバーは地面に刺さっている部分を除いて、約九十センチ程度だろうか。ブレイドの部分は幅広で、やや厚く作られているように見える。



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