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第38話


 ホランドを縛り上げ、布で猿ぐつわをする。彼は抵抗をするわけでもなく、大人しく従った。余程マリーの脅しが効いたらしい。


 いや、彼女にとっては本気だったのかもしれない。


 王国騎士の死体は家の中に運び入れ、飛び散った血は土を被せて馴染ませた。騎士が連れていた馬は近くの納屋に隠している。


 酷く不格好な隠蔽工作ではあるが、しないよりはマシではある。他の騎士たちに気が付かれる前に今後の方針を固めておかなくてはならないだろう。


 それにしても……とサトルは先程の王国騎士との攻防を思い出す。無意識に体が動く感覚。相手の攻撃に対して完璧な対処ができていたと思う。


 勿論、サトルには剣での実践経験どころか、剣道などを学んだ経験もない。もしも少しでも心得があったならば、騎士団長アラダインとの模擬戦はもう少し盛り上がりのある物となっていただろう。


 違いがあるとすれば……覚悟の違いだろうか?


 訳も分からず模擬戦をさせられたのと、自分とマリーの命のかかった場面で、火事場の馬鹿力めいた、生存本能が働いたのか……


 どちらも違うような気がする。では他の違いとは、武器……


「ねぇ、サトル? サトル!」

「え?」


 考えに耽っていて、マリーに呼びかけられていたのに反応が遅れた。


「大丈夫? 少しこれからの事を話しておきたいんだけど」

「あ、ああ。すまない俺が巻き込んでしまって……」


 サトルは頭を下げてマリーに謝罪した。勿論元凶としては理不尽な国王が悪いのだが、彼女を巻き込んでしまったのは間違いなく自分であろう。


「気にしないで……私、自分に嘘をついていたの。もうどうにもならないんだって。自分の境遇を諦めて、今の環境でどうにか平穏に暮らすべきなんだって……」


 マリーは虚空を眺めるようにサトルから視線を逸らした。


「でもね。そうじゃないって思ったの。剣を構えたサトルを見て、まるでお父様がハルツェンブッシュ家の娘がこんな所で終わっていい筈がない! ってそう言っているように聞こえたの」


 どうやら彼女はサトルを見て、亡き父を想起していたようだ。


「だって、サトルが剣を持った佇まいがあまりにもお父様にそっくりで……剣術なんてやったことないって言ってたのに、どこで習ったの?」


 確かに、サトルはこの世界に来た時からのあらましをマリーに説明した際、自分は剣術や戦いの訓練などやったことがないと話した。それに嘘偽りがないことはサトル自身が一番わかっていることだ。


「いや、本当に俺は剣術なんて……ただ、そうこの剣を持ってから……」


 まとまらない漠然とした考えではあるが、口に出すと本当にそうなのではないかと思えてくる。


 この剣が秘密を握っているような。



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