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第34話


 外へ出ると腰に剣を携えた王国騎士がマリーへと迫っていた。後ろにはニヤけ面を浮かべたホランドが控えている。


 どちらに転んでも死ぬ。だが今のままではマリーを巻き込んで、彼女にもどんな仕打ちが待っているかもわからない。


「うらぁぁぁあ!」


 マリーに救われた命……自己満足の域をでないが、彼女を救えうために使うのが筋であろう。そう覚悟を決めたサトルは、奇声をあげながら飛び出した彼の登場に、面食らっている王国騎士へ体当たりした。


 王国騎士は少しよろめいた程度だったが、それで十分。


 マリーの手を取って奴から引き離すことには成功。そのまま、彼女の家で見つけた武器を構え言い放つ。


「さ、下がれ! この女を助けたいなら俺を逃がせ!」

「ちょっとサトル⁉」


 マリーの家で見つけたのは、使い込まれた剣であった。一見してわかる程に使い古されているが、同時に丹念に磨かれた形跡もある。


 サトルの小さな計画は単純である。サトルを匿った疑いのあるマリーを人質にし、自分と彼女の関係を、犯人と脅された被害者の図として、王国騎士に見せつけることだ。


 だが……王国騎士は何のためらいもなく、腰に帯びた剣を引き抜いた。


「お、お前! 俺の言っていることがわからないのか!」

「馬鹿め。貴様こそ自分がしていることがわからないのか。この村の屑どもに人質の価値などない」


 この期に及んでサトルはまだ理解していなかった。この世界での命の価値を……

 全ての命を、特に人間の命が貴ばれるような世界で生まれ育った人間の価値観など、一朝一夕で変わるものではない。


 ひどい話を聞いた、ひどい仕打ちをされた……だが、サトルの前ではまだ、誰も死んではいない。傷付いてはいない。


 だから、彼はまだどこか、遠い世界の……自分には関係ないできごとだと心のどこかで感じていた。


 ハッタリだ。いや違う。

 本気じゃない。いや違う。

 見透かされている。いや違う。


「できれば生け捕りにしろとのお達しだが……反抗の意思があるのならば、生死は問わないとのことだ」


 ハッタリなどでは断じてない。

 奴は本気である。

 こちらの意図など関係ない。


 サトルの視界がブレる、剣の切っ先が異常にブレる。彼の価値観がブレる。


 目の前の騎士が恐い。ただ、上から命令された業務を淡々とこなそうとしているだけ。その真実が恐い。


 必要だから殺す。

 命令だから殺す。

 ただ遂行するために殺す。


 ここにきて、サトルは実感した。ここは自分がいた世界とは全く別物の世界であると。

 本当に異世界にやってきてしまったのだと。

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