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第32話 


「わしみたいな、元より貴族の中でも低級であった者からするとここの生活に慣れるのも早いものだが、上級のお貴族様はいつまでたってもここには慣れてくれなくてな。若いもんは特に反発も強い」


 クレールが畑の隅に目をやる。サトルは彼の視線の先に目をやってみる。

 すると、見覚えのある服装の男が何をするわけでもなく、木陰で座っているのが見えた。


「あれは……」

「一週間くらい前かの。ここに送られて来たホラント家のオットー」


 暗がりで顔はよく覚えていないが、あの貴族の服には見覚えがある。昨夜マリーを強引に連れて行こうとした男だ。


「親に追い出されたと聞いておるよ。酒癖も女癖も最悪だともな。ホラント家は貴族の中でも国への貢献度が高い家だが……いや、だから評判の悪いドラ息子は不必要だったのだろうよ」


 皆が不当な罪でここへ送られて来たものだと思っていたサトル。だが、彼のような本当にどうしようもない屑もしっかりと罰を受けているようだ。


「それでクレールさん……ここからはいつ出られるんだ?」

「さぁね。国王の気分次第さ。ま、わしも長いことこの村にいるが……生きてここを出た者は見たことないね」


 貴族専用の刑務所。サトルの中でもは没落村とはそんなイメージであったが、それは甘い考えだったようだ。いわば終身刑。


「それで……良いんですか?」


 思わず口から出た言葉。良いわけがない。この村の雰囲気から、多くの人は国王の厄介払い程度の理由でこの村に追放されているのだろう。


 それも他者よりも豊かに暮らしていた人々がだ。


「良いも何も、どうにもならんよ。それに、慣れれば悪い所でもないさ。面倒な権力争いや、上流貴族の機嫌取りも必要ない。ただ、畑の心配だけしていればいい」


 クレールは満足な手入れもできず、複雑に絡み合った無精ひげの間から笑みを零した。


 サトルはそんな彼に何もいう事はできなかった。


「サトル‼」


 突然名前を呼ばれ、驚きながら声のする方へと振り返るサトル。そこにはスカートをたくし上げ、走り寄って来るマリーの姿があった。


 何事かと思うが、険しい表情の彼女を見るに、良いニュースではないことだけが確かだ。


「大変! 早く隠れて! 見回りよ!」


 サトルはクワとクレールを置き去りにし、マリーに手を引かれるまま畑を後にする。

 目指したのはマリーの家である。家に着くや否や、彼女はサトルをベッド下のスペースへと放り込んだ。


 直後、遠くから子気味良いリズムの足音が聞こえてきた。

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