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第27話


 月光の下でお互いに挨拶を交わし、掘っ立て小屋に戻る。椅子に腰かけ、テーブルを挟んで互いに向き合う。清掃はされているようだが、マリーはその中で完全に浮いていた。


「お加減はどうですか?」

「えっと、だいぶ良くなりました。ありがとうございます。俺はどれほどの間気を失っていたんでしょう?」

「三日程ですね」


 ニーアと共に城を脱出を企て、失敗してから三日……その間マリーが介抱してくれたおかげで今を生きているのだろう。


「あの、俺以外には誰かいませんでしたか?」

「川岸には……サトルさん以外の方はおられませんでした」


 ニーアは大丈夫であろうか。


 運よく川岸に流れ着き、更なる幸運でマリーに助けられたサトル。ニーアがその場にいなかったとすると増水した川に更に流されている可能性は高い。


 正直彼女の安否は絶望的であろう。


 だが、サトルはニーアが死んでいるとは全く思わなかった。ただの高校生であるサトルとは違い、彼女は様々な訓練を積んでいるであろうスパイだ。


 現実から逃げていると言われたらそうなのかも知れない。身近な死を実感することが出来ない青二才なのだと言われたらそうなのかもしれない。


 だが、ニーアが無事であると言う確信がサトルの心の中にはあった。


「私からもサトルさんにいくつかお伺いしてもよろしいですか?」

「はい。えっと……さんは付けなくてもいいですよ。なんだか畏まられると……」


 なんだか怖い。

 言葉の続きをサトルは言えなかった。表向きは丁寧にもてなしてくれたメロベキア王国にあれだけの仕打ちをされたのだ。


 今のサトルには敬意を込めたような言葉は若干の恐怖心を抱かせた。

 

「それは良かった! 正直窮屈な言葉使いって使うのも、使われるのも好きじゃないの。サトルも普通に話してね」


 それを聞いたマリーの様子が一変した。

 優雅な風貌には似つかわしくない雰囲気と変貌し、碧眼に宿った光りに相応しい彼女と成った。


「それでサトルは見慣れない服を着てるけど、もしかして勇者様なの?」

「えっと……うん、そのはずだけど」


 マリーの変化にやや面食らったが、先程まで感じていた気後れは少し緩和され、かえって話しやすくなって親しみが湧いた。


「勇者なら王国に好待遇のはずだけど、どうしてこんな所にいるの?」


 不思議そうに尋ねる彼女にサトルはこれまでのあらましを話す。たった二日足らずのことであったが、改めて凝縮された人生最悪の時間であった。


 マリーは静かにサトルの話に耳を傾け、時折その相貌を歪めて不快感を隠さず表現していた。


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