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第25話 


 サトルが目を覚ますと、汚らしい木造の天井が見えた。身体があちこち痛いのには変わりないが、頭痛はすっかり消えて怠さも幾分マシになっている。


 起き上がって辺りを見渡す。


 ガラスもはめられていない木枠だけの窓――開閉する木の板とそれを押さえるつっかえ棒が見える――から、現在は夜であることだけが分かる。家の中が蝋燭一本の灯りで頼りなく照らされている。


 家具はサトルが横たわるベッドと小さなテーブル、そして二脚の椅子だけとなんともシンプルであり、掃除が行き届いているようではあるが、痛んだ様相はまるで隠せていない。


 ベッドは立派に見えるが、サトルが身じろぎする度にギシギシと軋み、継ぎはぎがなされたシーツの下からはカサカサと音が聞こえる。


 枯れ草でも詰めてあるのだろうか。


「ここはどこなんだ?」


 小さく口の中で呟くと、頭の片隅にぼんやりと女性の声が木霊する。


「没落村……」


 なんとも訳ありだと言わんばかりの名前にサトルは辟易する。

 それにしても家主はどこに行っているのだろうか。朦朧とする意識の中で聞いた声は可憐な女性の声であった。


 声と口調だけで気品さを漂わせるような。


「おい! ま……」

「やめ……ださい!」


 静かな夜が急に騒々しくなる。荒々しい男の声とそれを拒むような女性の声。どうやら外で何かしらのトラブルが発生しているらしい。


 そして、その女性の声には、わずかに聞き覚えがあった。

 恐らくこの家の主であり、サトルを救ってくれた女性である。


 ただでさえ、怪我で十全ではない身体。戦いの何たるかもわからないサトルがいざこざに首を突っ込んだところで解決するとは思えない。


 だが、サトルはいても立ってもいられなかった。自分を助けてくれたであろう女性を助けたいと強く心が躍動し、身体を突き動かしたのだ。


 フラフラとベッドから立ち上がり、出口を目指す。その脇には五十センチ程度の木の棒が立てかけられている。


 恐らく扉近くの窓を開けておくためのつっかえ棒か何かだろうが、ないよりはマシだとその棒を手に取った。


 扉を開けて外に出る。そして辺りを見渡すと……


 松明を持った男と、腕をガッチリと掴まれた女の姿が見えた。


「そ、その子を離せ!」


 早くなんとかしないとと、痛む足を引きづりながら、手に持った棒を高く振り上げ近付く。


「な、なんだ貴様は!」


 女の腕を掴んだままで男はサトルの方を振り向き、怯んだ様子で声を上げた。

 

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