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第21話


 年代物である二艘の船を吟味し、まだ損傷の少ない方を選ぶ。そしてそれをサトルがロープで引いていく。


 二人がいる水路は城の中に水源を確保する為に引かれた水路であるため、脱出口付近までは引いていくしかないからだ。


 先の螺旋階段もどれだけ下ればと思ったものだが、再びそう思う程に水路も長い。


 異世界に来てたった一日。メロベキアと言う国がどんな形なのかもわからないが、王城が国の真ん中に聳え立っているのだと考えると、この道のりも納得できると言うものだ。


「そろそろ外よ」


 しばらく黙々と進んでいるとメレニアがそう言って蝋燭の灯りを吹き消す。水路内は完全な暗闇になった。

 しかし、その暗闇に少しづつ順応すると前方の空間からうっすらと光が入ってきているのがぼんやりと見えてきた。


 月明かりだ。


 暗闇に慣れ始めたサトルの眼が捉えたのは、この世界を照らす夜の明かりであった。


「出口なのか……」


 サトルの中に込みあがてきたのは無事脱出に成功した安堵、これから自分はどうなるのだろうと言う不安、そして日ごろの運動不足を痛感させられる身体全体を襲うダルさであった。


「さぁ、まだ日が出ない内に川の流れに乗っていきましょう」


 まるでサトルの心の内をみたかのように急かすニーア。

 解放しかかっていた心を改める。出口は目の前だが、今だ敵の腹の中だという事を忘れてはいけない。


 水路から外へと出ると月明りに照らされた大地がうっすらと見える。広大な平原のようだ。その奥には山々と深そうな森が微かにだが確認出来た。


 船を川の本流へと合流するように引っ張り乗り込む。


「今日は流れが速いわね……昨日の雨のせいか」


 ニーアが少し憎々し気に呟く。サトルがこの川の普段を知っているわけではない。しかし、月明りに照らされた水面は常に姿を変え、濁った色を映し出す。


 水量が増し、普段底に沈殿している泥を巻き上げている証拠だ。


 確かにこのボロ船がこの川の流れに耐えられるかは甚だ疑問だが、それ以外は今のところ順調である。


 後はこの暗がりを利用して川を下り、脱出するだけだ。


「もし投げ出されてもこれ以上貴方を助ける義理はないからね。自己責任でお願いね」

「ああ……」


 厳しい言葉に聞こえるが、元々彼女の目的はサトルの、いや召喚された勇者の命だと聞いた。今は生かしておく方が都合がいいだけの話であり、それもニーアが独断で決定しているだけのことだ。


 あくまで彼女に生かされている現状を忘れてはいけない。



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