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第18話


「これはどこに通じているんだ?」


 時折吹く風が蝋燭の火を揺らし、生き物のように蠢く。

 随分と螺旋状の石階段を下り、いつまで続くのだと思い始めた頃サトルはメレニアに尋ねた。


「さぁね」

「わ、わからないのか⁉」


 そんな答えは全く予想していなかったサトル。徐々に大きくなっていた不安が急速に膨らんでいく。


「私も全てを調べてるわけじゃないのよ。普段はメイドとして働いてたんだから」


 それもそうだ。単なるメイドが牢屋の当たりをウロウロしているのは誰もが怪しく思うだろう。しかし、そんな理由を考えたところで不安が緩和されるものでもない。


「まぁでも牢のあった位置を考えても今は城を下りてるってところね。恐らく地下まで続いてるんじゃない?」


 牢の位置と言われたところで城の全容をしらないサトルにはあまり想像がつかない。牢に連れていかれている最中も突然の出来事で呆然自失としていたのだ。


 それからまた、しばらくの間沈黙が流れた。


 頬を撫でる冷たい風に若干の湿り気を帯びてきた頃、ようやく螺旋階段の終着点に辿り着いた。


「成程ね。水路か」


 誰に言うわけでもなくメレニアが呟く。サトルが耳をすませてみるとほんの微かの水音が聞こえた。


「ここは城の中に水を引き入れてる水路のようね。多分この先に脱出用の出口と船でも用意してあるんじゃないかしら」


 しばらくぶりの平らな道を歩くと彼女の言った通り簡易的な船着き場に到着した。


 船は二艘(そう)用意されているがどちらもボロボロであり、泥船の方がよっぽどましだと思ってしまう。


「はぁ……まぁ王族様以外知ってるようなものでもなかったし、整備されてるなんて期待はしてなかったけどさぁ」


 恐らくメレニアもサトルと変わらない感想を抱いたのだろう。がっくりと肩を落とした。


「まぁ贅沢は言ってられないわね。まだ暗いうちには出るけど少し休憩しましょう」

「あ、うん。助かる」


 長い下り階段にサトルの足は棒のようになっていた。さしもの彼女も疲れたのか、水路の脇に座り込んだ。


「はい」


 少し離れ、メレニア同様座り込んだサトルに彼女が何かを差し出す。薄暗いので最初は何なのかわからなかったが、手に持った感触でそれが拳大のパンであることが分かった。


 鼻を近づけて匂いを嗅ぐとほんのり甘い匂いが鼻腔をくすぐり、忘れかけていた腹の虫が騒ぎ立てる。


「別に毒なんて入ってないわよ」


 サトルの一連の動作が疑いから来るものだと見えたのかメレニアが少し棘のある口調で言う。


「あ、いや……疑ってはないんだ」

「そう。でも申し訳ないけどそれしかないから我慢してね」


 彼女は腰の当たりを(まさぐ)り、同じパンを取り出すとなんの躊躇もなく豪快にかぶり付いた。



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