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第13話


 アラダインに言われた通りに木剣を拾った時にはもうすでに、彼は所定の位置に戻っていた。先程まで飛び交っていた怒声のような歓声が止み、闘技場内は静まり返っている。


「さぁ、勇者様! 貴方の力を見せてくださいませ!」


 静寂の闘技場で響くアラダインの声。彼に促されるまま、サトルは木製のロングソードを強く握り締める。


 これは決意や覚悟などと言った強い行動ではない。


 どうやって目の前の騎士団長を破るのか、そもそも剣とはどうやって振るうのか、自分に備わったスキルとは如何に使うのか……わからないことばかりでイラついた心を抑えるために力を込めているに過ぎない。


「は、始め!」


 実況者が模擬戦の再開を告げる。


 その時奇跡が起き、サトルは覚醒する……

 なんてご都合主義は微塵も気配はなかった。


 先程のように騎士団長が一瞬で肉薄し、手に衝撃。宙に舞う木剣。違いがあるとすれば、先程よりも強く握り締めていたために手に伝わる衝撃が増したことくらいだろうか。


 その衝撃に痺れてしまった手はもう木剣を握るだけの力も残されていない。


 ただ茫然とするしかないサトルに、アラダインは言葉を掛けたが、何を言っているのかサトルには聞こえなかった。


 サトルはただ静かに闘技場を去る彼をただただ見ているだけしか出来ない。


 気が付くとサトルは自分に用意されていた客室の椅子に腰かけていた。

 自分が闘技場からいつ帰って来たのか、どうやって帰って来たのかなど全く覚えがない。茫然自失としている間に誰かに連れてこられたのかもしれない。


「はぁ……」


 勿論サトルに自信があったわけではない。負けることは分かっていた。


 ただ、その惨敗具合が自分の思っていた以上に酷い結果だったと言うだけだ。変わり映えのない日常から突然攫われて来た異世界。

 そんな世界で自分の力で切り開いて行けるかもしれない期待は健闘も出来ずに大きくへし折られた。


――コンコン


 サトルの溜息くらいしか聞こえない部屋にノックの音が響く。正直な話今は誰とも顏を合わせたくない気分である。


 特に短い間ではあるが、勇者様と言って世話をしてくれたメレニアとは特にだ。


――コンコン


 ノックの音が幻聴であればと考えた出した頃、もう一度ノックの音が響く。居留守……なんてことも出来ないので、はいはいと投げやりな返答をしつつ重い腰を上げた。


 扉の前に立つ人物が誰であろうとも、サトルはしばらくは一人にして欲しいと願い出るつもりで……


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