何か久々の奴らが来た。
朝飯は昨夜の残り物のスープに、俺の鞄の中に備蓄していた作り置きの料理を出した。魔鳥の照り焼きを炊きたてのコメの上に乗っけて、その上に半熟の卵を乗せたものだ。
「うめえ!」
「たまご、とろとろ」
「カズサ、美味しいよ」
ガイウスが喜声を上げ、勢いよく飯を掻き込んでいく。もっとしっかり噛めや。ミアが大変だ・・・口の周りが黄身でツヤツヤになってんぞ?
「おかわりも有るから、お前らもっと落ち着いて食え」
俺の横でぴったりとくっついたアベルが、のし掛かってきて重てぇ。朝の仕返しか?へらへらと笑って俺の頭に頬を擦りつけてくるんじゃねぇ。
「カズサが食べにくいので、もう少し距離を取って下さい」
ヒューが無表情でアベルに俺から離れる様に促した。本当、それな。食いづらいんだわ。
「ふふ。嫉妬かな?この子には感情はあるのか?」
アベルがヒューの顔を覗き込んで、ニヤッと笑った。ヒューは無表情のままだが、アベルとは反対側から俺にそっとくっついてきた。
「俺は感情面は組み込んでねぇんだけどな、どうやらヒュー自ら学習して、感情面が芽生えているらしい。な?」
こくりと頷いたヒューが何か可愛くて、俺はヒューの頭をガシガシと撫で回した。毛髪は植えて無いはずなのに、手に感触があんのが不思議なんだよな~。
「俺の息子は可愛いな?ほら、口開けろ」
ヒューの口の中に飯を匙で掬って入れてやると、もぐもぐと咀嚼して飲み込んだ。飯が食えるようになったのも不思議だ。俺はそんな魔法は刻んでねぇはずなんだがな。
ヒューの口を開けさせて、ぐにぐにと舌の感触を確かめる。・・・木製のはずなんだが、感触がまんま人の舌なんだよな。俺の術式を越えて、ヒューが俺の感覚に干渉してんのかね?うん・・・まぁ良いか。大した問題では無ぇ。
「妬けるなぁ。カズサ、俺の舌も見てくれ。面白いか?」
アベルが俺の眼前で舌をベッと出したのは、何でだ?少し青みがかかったアベルの舌先は、竜種らしく二股に裂けていた。そのふたつの舌先が器用に別々に動くもんだから、ついついガン見していたら、べろりと俺の眼球を舐めやがった。
「おい」
「カズサ、トカゲの舌を焼きましょうか?」
「ふふっご馳走様」
俺が文句を言う前に、ヒューがアベルに火魔法を帯びた手刀で切り掛かった。お前、手は焼けないのか?ヒューの攻撃をひらりと躱したアベルが、空いた皿を水魔法でさっと洗った。ついでにヒューの手刀の火にも水を掛けている。
「しゅらば」
「朝から胸焼けさせんなよ」
ミアとガイウスが何か言っていたが、無視だ。俺はアベルとヒューのじゃれ合いを見ながら、自分の分の飯を掻き込むのに忙しい。うん、魔鳥の弾力があるのに柔らかい肉に、甘辛いタレが絡んで美味ぇ。とろとろの卵も良い仕事をしてやがるぜ。
飯を食い終わったら、テントや敷布なんかを片づけて王都に出発だ。正直、かったるい。王都にはシズクも居るから、面倒臭ぇ用事をさっさと済ませて会いに行くか。ヒューの事も見せたいしな。
俺達が魔物を倒しながら、のんびりと徒歩で進んでいると、町を一つ過ぎた辺りで前方から爆走してくる馬・・・と、それを追いかける馬車か?がこっちに向かって走って来た。
「あ~・・・あの紋章は・・・」
目視で認識できる距離に近づいた馬車の紋章は王家のものだ。ガイウスが言い切る前に、先頭を爆走していた馬が俺らの前に到着した。土煙を上げて急停止を余儀なくされた馬が、不機嫌そうにヒヒンッと高く鳴いた。
「カズサ様ああああああ!!!!」
興奮してその場で足踏みをする馬から甲冑の重さをものともせずに、俺の名前を叫びながら騎士が飛び降りて来た。
「・・・ヨハネストか」
「はい!!カズサ様のお帰りが遅くて、私は寂しさのあまり死にそうでした!!」
俺の前に跪いたヨハネストが、そっと俺の手を掴んで手の甲にキスしやがった。俺の背後で何か冷気が膨れ上がったが、後続の騎士が走って来てヨハネストの後頭部を叩いたら、萎んだわ。
「おう、アズールか。やっぱお前、良いな?好きだわ」
「ちょっ?!カズサ様?!そういう発言は控えて下さい!!!」
久しぶりに見たアズールのツッコミに、俺はニヤッと笑った。俺は、アズールの切れのあるツッコミがけっこう好きなんだよな。
久しぶりにヨハネストとアズールがやって来ました。地味にこの2人が好きです^^
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