俺の息子。
考えるのも面倒臭ぇから、頭を元の位置に戻して目を閉じた。起きたら面倒事は片付いているだろう。
「起きたら面倒事は片付いているだろう・・・」
うん?さっきから、俺の偽物が俺の思考を読んでいるのか?・・・あいつ、あれか。人形か?
「イエス・マスター」
「いえす、ますたー」
素っ裸の俺の返答を、ミアが真似をしている。声のトーンと抑揚が、完璧に真似できているな。
「・・・じゃ、ねぇわ。お前ら全員、部屋に入ってドアを閉めろ。そしてお前は、服を着ろ」
俺はベッドに腰掛けて、先ずは魔法で人形に服を着せた。俺の顔で幼女に下を見せるんじゃねぇ。アベルとミアに椅子に座るように勧め、人形には俺の隣に座らせた。
「本は読んだのか?」
「読みました」
人形の眼球を覗き込み、口を開けさせて声帯を確認した。木工房の店主の拘りが垣間見えるな・・・喉ぼとけまで有るぞ。こいつは俺の声を真似しているのか?
「はい」
俺の魔力を介して、思考が伝達してんのか?
「はい」
「お前、すげぇな」
人形の頭をわしわしと撫でてやる。俺が倒れた時には、つるつる頭だったはずだが・・・容姿は幻覚魔法で変わるとして、手に髪の感触があるのが不思議だな。そこまで術式には刻んで無いはずなんだがな・・・。
「寝ている間にご主人様のあらゆる身体的特徴を計測、記録いたしました」
「マジか。触った感触はどうしてんだ?」
この質問には答えるつもりが無いのか、答えられないのか、人形は首を傾げただけだった。
「カズサ、もう話し掛けても良いか?そいつは、いったい何だ?」
人形の観察が一通り終わったタイミングで、アベルが苛立った声で聞いてきた。何って、人形だろが。
「俺の実験の成果。ある意味、俺の息子だな」
上手い事を言った気がして、ゲラゲラ笑う俺をアベルが睨んできた。ミアは俺を無表情で見つめながら、茶菓子を食っている。
「説明が足らん。詳しく聞かせてくれ」
「ああ?説明って言ってもな・・・そうだ、お前が自分で説明してみろ」
アベルが何に怒ってんのかわかんねぇし、面倒臭ぇから説明は人形自身にさせることにした。知能の確認の為ってことで。
「・・・私はご主人様の創造物です。機能は戦闘特化、魔法攻撃可能。知識レベルは現在学習中の為、随時更新中です。特殊機能は・・・」
「はいストップ。そっから先は秘密な。アベル、わかったか?こいつは俺の息子だ」
「息子・・・カズサの分身・・・近い存在・・・俺よりもか?従属で繋がった俺よりも?」
アベルが説明を理解してんのか、してねぇのか、ブツブツと独り言を言ってんのが、何か怖ぇな。
「排除しますか」
「いや良い。こいつらはまぁ、何だろうな・・・デカいのがアベル、チビがミアだ。仲良くしろ」
「わかりました」
人形の性格が好戦的なような気がするんだが、素材が魔木なのが原因か?
「否、命令系統に外敵の排除項目が有ります。主人様の不快度を感知して、自動排除に設定しています」
「解除しとけ」
確か、自己防衛系の術式は刻んだ気がするけどな・・・俺の気分次第で攻撃されたら、たまらんわ。
「あさごはん、まだ」
茶菓子を口いっぱいに含んだミアが、グウウウッと魔獣の唸り声のような腹音を立てた。そういや俺も腹が減った気がするな。飯にするか。
「朝飯を食いに行くぞ。お前はどうするんだ?」
人形は少しの間を開けて、本を読んで学習すると言った。俺は鞄から数冊の本を取り出して、先に渡した本と取り換えた。今度は種族の本と地形学、旅人の手記などだ。
「じゃあ、言ってくるわ。良い子にしとけ?」
既に読書を開始した人形の頭を撫でて、部屋を出た。デカい男が不満を撒き散らすから、ワシワシと撫でてやることも忘れてねぇわ。
カズサに息子が出来ました!良い子に育てよう^^
今夜は熱いですね・・・扇風機は冷え過ぎるので、団扇を使いたいんですが、文字を打ちながら扇げないのが悩ましいところです。
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