表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

75/89

夏の夜の夢

カズサが居なくなってから、眠れない日が続いている・・・。

「まあ、自業自得なんだけどね」

僕が勝手に嫉妬して、カズサに八つ当たりしてるだけだって自覚はあるんだよね。

「でも・・・カズサも悪いと思わない?」

「・・・私は唯の占いの館の主ですから、お答えできません。ここは愚痴を聞く場所ではないので、占いに御用の無いお客様はお帰り下さい」

「そうだよね。じゃあ、僕の大事な魔法使いの居場所が知りたいです」

「・・・それは昨日と、一昨日と、そのまた前の日に、お答えしましたよね。南方の中央都市ザランに滞在中かと」

箱型の屋台の中で、占いの館の主が苛々としている気配がする。布に隠されていて姿は見えないけど、トントンと爪が木の板を叩く音が聞こえた。


「ふぅ・・・お客さんは、夢の中でも探し人に会えたら嬉しいですか?」

「うん、もちろんだよ。カズサになら、夢でも幻でも、気配だけでも良いから会いたいよ」

「重・・・。それでは、こちらの魔法紙をお持ちください。この魔法は1度だけ、想い人と夢の中で会う事ができます。使い方は魔法紙を枕の下に敷いて、眠るだけです」

そう言った主が、布の間から1枚の紙を差し出してきた。魔法陣が描かれた紙を見ていたら、カズサの顔が浮かんできて胸がギュッと痛んだ。

「貴重なものをありがとう。お代はこれで足りるかな?」

金貨の入った革袋を渡したら、1枚だけ取って残りは返されちゃったよ。とても良心的だよね。占いの館の主にお礼を言って、逸る気持ちを抑えながら拠点へと駆け戻ったよ。


「カエサル様、お帰りなさい。外で何か良い事でもありましたか?」

拠点の入り口で掃き掃除をしていたユリウスが、僕の顔を見て目を細めて微笑んだ。ガイウスはカズサを探しに南方へ向かったから、拠点には僕とユリウスの2人だけしか居ない。

「ただいま。ユリウス、屋敷の事を任せちゃってすまない。うん・・・良い事はあったよ」

今すぐにでも自室に駆け込んで、魔法紙を試したくてソワソワとしてしまう。でも、まだ夕刻にもなっていないんだよね・・・夜まで、我慢しよう。

「今夜は僕が夕食の当番だったね。下ごしらえを始めるよ」

「私もここが終わりましたら、お手伝いいたしますね」


勇者になって村を出たばかりの頃は、料理はぜんぜん出来なかった。カズサのご飯が美味し過ぎて、何時まで経っても上手くならなかったよね。

「それも良いわけか。カズサに甘えっぱなしで・・・僕は努力を怠っていたよね」

カズサが居なくなってから、料理の練習を始めた。やっと指を切らずに野菜の皮が剥けるようになったんだよ。

「カズサが帰って来たら、美味しいご飯を作ってあげたいな」

「それでは、今夜は少し複雑な味付けにも挑戦しましょうか」

ユリウスに教えて貰いながら、カズサの好きそうな料理を頑張って作ったよ。魔鳥の肉を衣に包んで揚げたものに、トロリと半熟の卵を掛けたものだ。


「カズサならば、この料理をコメと合わせて食べると思いませんか?」

「きっとそうだね!カズサはコメが好きだから、少し濃い目の味付けが気に入ると思うな」

ユリウスと夕食を食べながら、ポケットに仕舞った魔法紙を指先でそっと撫でた。どの瞬間でもカズサの事ばかり考えてしまう。早く・・・会いに行きたいよ・・・。




カエサル視点のお話です。ユリウスとシズクも、ちょびっと出てきます☆

ブックマーク、評価ありがとうございます!読んで下さって嬉しいです!^^

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ