面倒な文と、注文品の回収。
「勇者パーティーの魔法使い、ハイネコ様に伝言ですね?」
「ああ、これで頼む」
ザランに戻ってきた俺は、先ずギルドに向かった。ギルドの伝言サービスを使えば、各地のギルド間で簡単な文のやり取りができるんだよな。もちろん、所在不明者への伝言もできる。
ハイネコの詳しい住所は知らんが、この街では有名人だから大丈夫だったわ。
「差出人は・・・カズサ様ですか?失礼ですが、ミドラガルドス国からいらっしゃいましたか?」
「おう」
「魔法使いカズサ様宛に伝言が届いております。内容確認後、その場でお返事を貰いたいとのことですが」
はぁ?誰からだよ・・・ギルド職員が差し出した伝言書を見れば、ガイウスからだったわ。
「・・・・・はぁ。返信用の紙をくれ」
ガイウスからの文には“ザランに向かっている。滞在場所教えろ。其処から動くな”と書いてあったわ。ここまで追いかけてくんのかよ・・・。
「はぁ・・・面倒臭ぇ。これで頼む」
「承りました」
ギルドを出た俺は裏通りを進んで、注文品を受け取るために木材工房へ向かった。
相変わらず、グリーズリと土蜘蛛のデカい彫刻が入り口を半分塞いでんのな。工房に入ると、厳ついおっさんが入り口を睨んで、仁王立ちしていた。この工房の店主だ。
「来るのが遅いぞ」
店主が俺の目の前にグイッと寄って来た。・・・近いわ。俺が1歩下がると、1歩詰めてくんの止めろ。
「できたのか?」
「とっくに、できてるぞ」
店主がデカすぎて見えなかったが、どうやら背後に俺の注文した品が置かれていたらしい。上に掛けてあった布を取り去ると、作業台に腰かけている木の人形が見えた。
「おお、見た目は完璧だな。触っても良いか?」
「良いぞ。手足の可動を確かめてくれ」
俺の背丈ほどもある人形を立たせて、手足の関節が上手く動くか確かめた。ざっと見た感じ、俺の設計図通りに作られているな。
「良い仕事するな、これで問題無いわ。幾らになった?」
「初めの見積もりから、少し飛び出た。耐久性を上げるために、ザランで手に入る一番良い木を使ったからな」
店主が提示した金額を支払った。これだけの出来なら、金額に不満は無いわ。人形に軽量化の魔法を掛けて、鞄に仕舞うと俺は宿屋に向かった。
「お客さん、おかえり!お連れさん達は先に昼飯を食べているよ!」
「ああ、サンキュ。俺の飯もくれ」
宿の食堂を覗くと、アベルとミアは直ぐに見つかった。デカい獣人と幼女・・・目立つな。俺が近づいて行くとアベルが気づいて、手を振った。
「お帰り、カズサ。用事は終わったのか?」
「まぁ、一先ずはな。飯食ったら、暫く部屋に籠るわ」
両手に洗浄魔法を掛けていると、店主が昼飯の乗ったトレーを持って来た。
「はいよ、お客さん!今日の昼飯は具沢山のオムレツと、燻製鳥のソテーだよ!」
「美味そうだな」
湯気が立つふわとろのオムレツには、沢山のキノコや木の実が入っていて美味い。む、溶けたカードが伸びるな・・・。カードをフォークでクルクルと巻いて口に入れた。
「このカード、やけに良く伸びるな。味も少し濃いか?」
「そりゃ、エルフの郷のカードだよ。森ヤギの乳から作るのさ!」
なるほどな、エルフの郷も美味いものが有りそうだな。塩とコショウ、薬草を揉み込んで焼いた燻製鳥の肉汁が後を引く。パンに挟んで食いたいが、今日のパンは木の枝にグルグル巻いて焼く、固焼きパンだ。
これはこれで、噛むほどに麦粉の風味と甘みが出てきて美味い。
「「店主、あの客と同じものをくれ!!」」
後ろの方が騒がしいが、飯時だからな。もきゅもきゅと燻製鳥を噛みしめていると、ミアが俺の手を叩いた。
「あ?」
「カズサはグルメなの」
「ああ?」
「こら、無自覚っぽいから指摘するな」
アベルが小さく千切った固焼きパンをミアの口に入れた。モグモグと噛んで飲み込んだ口が、パカッと開いた。そこにまた、千切ったパン。・・・パカッと開いたな。
「おら、これも食え」
俺の他にも、あちこちから固焼きパンが差し出された。ペコッと頭を下げたミアが、残さず全部食ったのには驚いたわ。
ちょっと短めですね、^^;
ザランの街に帰って来たので、古書店も行きたいし~王城の本も読みたいし~実験もしたいし~♪のカズサです。
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