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手紙配達人ニコの困惑1

「カズサ、お前はこのパーティーには必要ない・・・今すぐ出て行ってくれ!!」

勇者カエサルが声を震わせて、叫んだ。

「ああ、わかった。じゃあな。行こうぜニコ」


勇者パーティーに出戻ってから3か月後の昼下がり、同郷の友人が訪ねてきた。

「カズサ、カエサル、久しぶり!これ、お届け物です」

「ニコじゃん。久しぶりだな~なに、手紙配達人になったのか?」

ニコはカエサルも仲が良かったから、会えたのは素直に嬉しい。しかし、カズサが普段見せない顔で笑っているのが、カエサルは少し面白くなかった。


「カエサルに親父さんとファンの女の子たちから、手紙を頼まれてるよ。カズサには親方から」

「ありがとう!」

「サンキュー」

父さんと、仲良くしてた子達からだ。読むのは後で良いかな?カズサは封筒をビリっと破いて、さっと目を通して少し笑った。良いことが書いてあったのかな?


「何か嬉しいことがあったの?」

ちょっと気になって、聞いてみたんだけど・・・まあなって言っただけで、教えてはくれなかった。

ニコはこの後予定は無いそうだから、僕達の拠点に泊まってもらうことにした。

ガイウスとユリウスも合流して、皆で夕食を食べたんだけど・・・ニコだけおかずが一品多かったんだ・・・

今夜の食事当番は、カズサだ。ニコだけ特別扱いって、何か・・・ちょっとだけ、悔しいな。

「カ、カエサル様?フォークを嚙みしめると、危ないですよ?」

「ほら、俺の分も食え!な?カズサの飯は美味いな?!」

ユリウスとガイウスが、僕を気にしてくれたみたい。ありがとう!別に、うん・・・気にしてないから!


カズサは、ニコと楽しそうに笑ってる。僕よりニコとの方が、付き合い長いんだもんね?しょうがないよね。

「おいカズサ!俺なんかしたか?カエサルがめっちゃ、睨んでくるんだけど・・・」

「ああ?気のせいだろ。それより味はどうだ?好きだったろ、キノコだらけの鶏肉ショウガ焼き」

「名付けのセンス無いよな。味は相変わらず、美味いわ」

・・・カズサとニコが、顔を寄せ合って内緒話をしている・・・


「二人の世界が完成している気がするんだけど」

「いや、気のせいだろ!久しぶりに会ったんだし・・・積もる話とかあるだろ?」

「カエサル様もお話に混ざりに行かれては、どうでしょうか?さ、行きましょう!!」

うん、そうだね。混ざりに行ったら、僕の知らないカズサの幼少期の話がニコから聞けたよ・・・。

うん・・・。


翌朝、居間に降りて行ったら、カズサとニコは出かけた後だった。

二人で買い物に行ったらしい・・・。

「カエサル様、おはようございます!朝食のご用意ができていますよ!」

「ユリウス、ありがとう」

いただきます。ユリウスの几帳面な性格が出た、丁寧な味だよ!うん、美味しい・・・

「カ、カエサル様!もっとゆっくり食べてください!胃が吃驚してしまいますので!」

「ああ、わかった・・・」

ゆっくり食べたいけど・・・なんかモヤモヤして、いつもより早く食事を終え、僕は商店通りに向かったんだ。

「すげえ速さで走っていったな・・・大丈夫か?またカエサルがヘソを曲げそうな予感がするが」

「私も、そう思います・・・」

ガイウスとユリウスは苦笑いを交わして、それぞれ朝稽古と食器の片づけに集中することにした。


「これなんか、どうだ?」

「ん~・・・ちょっと違うか?」

普段着より少しだけ値が張る衣装屋で、カズサとニコは服を選んでいた。ニコはジャケットを数着、着て見せている。カズサが目を細めて、離れたり近寄ったりしながら選んでいたが、気に入ったものが見つかったらしい。

綺麗な紙で包んで、(わざわざカードまで書いてる!筆不精のカズサが!)リボンが巻かれたものを、

カズサは僕には見せないくらい、砕けた笑顔でニコに渡していた・・・・・。

「?!」

一部始終を見ていたカエサルは、プルプルと震えていた。モヤモヤした気持ちが、今は何だか泥のように重い。

カズサとニコが店から出てきたところに向かって・・・思わず僕は、叫んでいた。


「カズサ、お前は僕のパーティーには必要ない・・・今すぐ出て行ってくれ!!」

カエサルが上ずった声で叫んだ。何だかもう、二人を見ていたくない。僕は言い捨てて、走り去った。


「え?!出てけって言ったか?」

「あ~・・・2回目だからな。まぁ、気にすんな」

状況が掴めないニコが、困惑している。俺はつい数か月前に言われた台詞だな、と思ったぐらいだな。

「まあ、ちょうどいいわ。荷物纏めてくるから、ニコはその辺で待っててくれ」

「え、おい!・・・ええ~?!」


カエサルの勇者らしいところを、出してあげたいです………

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