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初めて見る水平線。

心臓を貫かれりゃ、普通の人間ならとっくに死んでいたはずだ。何でこいつは生きてんだ?

「・・・回復薬の前に、この黒いやつを抜かねぇとな」

形状から見て、何かの角か?バカでかいから魔物のものか・・・仮で黒角と呼ぶが、こいつから真っ黒い魔力が漏れ出てんだよな。その魔力がこの男の心臓に悪さをしてるってわけか。

「う~ん・・・保存魔法で現状維持、いや・・・傷口の回復を早める・・・あ~・・・もういいや」

考えてもわかんねぇわ。俺は回復魔法は使えねぇからな・・・取り敢えず、黒角を引っこ抜いてみよう。鞄から俺お手製の回復薬と、魔力回復薬を取り出した。


「お前はちょっと離れていろよ」

幼女を男から3歩下がらせた・・・もう2歩下がれ。そこで待機だ、良いな?

「ふぅ・・・おら!」

右腕に身体強化を掛けて、黒角を一気に引き抜いた。傷口に洗浄魔法と解毒魔法を掛け、俺お手製の回復薬をぶっ掛けた。

「速度強化Snelheids verbetering」

速度強化を掛けると、魔法薬の効き目が上がるんだよな。これは体表の傷の場合な。ゆっくりだが薄皮が張ってきたわ。


内側の傷を治すには、自分の魔力を使うのが良いんだが・・・この男がどのくらい魔力を持っているかは、なぜか見えないんだよな。隠匿してんのか?


男の口に回復薬の瓶を付けて飲まずが、気絶してんだから飲まねぇわな。零れ落ちる前に指で掬って、男の口内に捻じ込んだ。そのまま隙間が出来たとこに回復薬を少し流して、指で口内に馴染ませるを繰り返す。

「何してるの?」

幼女が懐疑的な目で見てくんの止めろ。治療行為だろうが。

「見てわかるだろうが。回復薬を飲ませてんだよ」

「・・・・」

何か言えや。俺お手製の回復薬が効いてきたのか、男の呼吸が落ち着いてきた。規則正しく動く胸に手を置いて、鼓動を確かめる。うむ・・・まぁ大丈夫だろう。


魔力回復薬も同じやり方で馴染ませたら、治療終了だ。

「出来ることは全てしたぞ。後は自然に起きるまで寝かせとけ」

男の顔に掛かった髪をどけてやって、ついでに額に触れたが熱は無いな。顔色も良くなってきたが・・・1つ気になるとしたら汚ぇ。どんだけこの廃屋に居たのか知らんが、服も男自身もすげぇ汚れてんだよな。

チラリと幼女を見れば、同じように薄汚れている・・・。

「おい、ちょっと其処に立って目をつぶれ」

幼女を男の側に立たせて、2人纏めて洗浄魔法を掛けた。丸洗いだわ。


「きれい」

「洗ったからな。俺はもう行くぞ」

立ち上がって、俺自身にも洗浄魔法を掛けた。来た道を戻ろうとした時、後方からキュルキュルとか細い音が聞こえた。

「ん?魔鼠の鳴き声か?」

「ちがう。私の・・・お腹」

振り向くと顔をほのかに赤くした幼女が、両手で腹を押さえていた。腹ペコ音かよ。


「はぁ~・・・たく。おら、ここに食いもん置いてくからな、ゆっくり食え」

落ちていた木の板の上に布を敷いて、作り置きのサンドパンとスープの入った水筒を取り出して置いた。多めに出したから、男の腹も充分に満たせるだろ。

「ありがと」

幼女の小さい声が聞こえたが、俺は町に向かって駆け出した。俺がこの町に来た目的、紅魚を食う為にだ。


馬車を下りた場所まで戻ると、通行人にお勧めの宿屋を聞いた。できれば飯が美味くて、部屋が綺麗だとなお良い。

「飯が美味いのは、港の近くの宿だな。漁師の息子がやってるから、新鮮な魚が食えるぞ」

「部屋が綺麗なのは2本先を行って、右手にある宿よ。小さいけどお風呂があるの」

何人かに話を聞いたが、意見が分かれんだよな・・・先ずは漁師の息子の所に行ってみるか。食堂を覗いて、客の雰囲気で決めれば良い。

空を見て、白い魔鳥が集まっている方角に向かう。水揚げされた魚を狙って集まってくんだよな。まぁ知識だけで、海を見るのは初めてなんだが。


「はあ~・・・なるほど?」

町の奥、民家を抜けた先に海があった。塩の匂いが風に乗って鼻をくすぐる。空の果てと、海の果てが繋がってんのな・・・あれが噂の水平線ってやつか。

港には沢山の漁船が繋がれていて、その上空を魔鳥がギャアギャアと鳴きながら飛んでいる。

海を見ながらぶらぶら歩いて行くと、宿屋はすぐに見つかった。真っ青な旗に漁師の絵が描いてあるから、ここで間違いないだろう。


「らっしゃい!お客さん宿泊かい?」

宿屋に入って直ぐに威勢の良い声で迎えられた。声の主は日焼けした筋肉質な男だ・・・ガイウスよりは若いか?

俺はチラリと食堂に目を向けた。昼飯時はとうに過ぎているが、半数の席が客で埋まっている。

「美味そうな匂いがするな」

「ああ、今は紅魚の時期でな!遠方からの客も多いんだ。あんたもそうかい?」

「まぁな。1泊頼むわ」

ざっと見、綺麗に掃除されている様だし、客が食ってる飯が美味そうだ。受付を済ませ、晩飯までの間もう少し町の中を見て回ることにした。

サンドパンの中身は魚のフライとタルタルソース、燻製肉と葉野菜の2種類です。

何処に行っても、無自覚で人助けと餌付けをするカズサでした^^

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