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月の光という名の男。

俺の腕の中でス~ス~と静かな寝息をたてる司書の顔を覗き込む。そういや、こいつの名前を知らないな。

「起きたら聞いてみるか」

エルフ族は種族としては、上位種に入るんだよな。こんな人族の街で仕事をしているなんて、故郷でいったい何があったんだろうな。問題を起こして追い出されたか、魔物にこいつ以外が食われちまったか・・・。

「勝手に、私の仲間を殺さないで下さい」

「起きたか。てか俺、口に出してたか?」

司書はまだ眠さの残る蕩けた目をしているが、口調は俺を責めてくる。まったく元気な口だぜ。

「ちょっ・・・んむっ?!」

司書の口を軽く摘まんでやったら、顔を真っ赤にして俺の胸を叩いてきやがった。ちょっと痛ぇわ。


「私は仕事に戻りますから・・・手を離して下さい」

フンッと鼻を鳴らして、そっぽを向いた司書が俺の腕を軽く叩いた。そういえば、腕に身体強化掛けてたわ。

「完全に目が覚めたか?無理はするなよ」

「っ・・・む、無駄に私の頬に触らないで下さい!顔も近過ぎですよ!」

司書の顔が赤いまんまなのが気になって、頬をするりと撫でたら怒られた。怒りっぽいのは小魚とミルクルが不足してんじゃねぇか?


「あんた、名前は何ていうんだ?」

司書を膝から下ろしながら名を訪ねた。素直に教えてくれるかはわかん無ぇけどな。

「・・・・・・クレイア・リュヌ」

「何か綺麗な名前だな?俺はカズサだ。よろしくな」

「~~っ?!もう直ぐ閉館時間ですよ・・・!」

司書・・・クレイアはそう言うと、走って奥に行ってしまった。はぁ~今日は片手で読んでいたからな、2階の本を読み終われなかったわ。閉館までは速読でも4冊が限界だろうな。

・・・時間いっぱいまで粘って、5冊読めたぜ。俺は読み終わった本を書棚に戻し、クレイアに声を掛けて図書館を後にした。


「はいよ、今日は魔牛のスキヤキだよ!魔鳥の卵をタレに混ぜて食べておくれ!」

「おおっ?!スキヤキって東方の料理だよな?ここで食えるとは思わなかったぜ」

浅い鉄の鍋にタレと薄く切られた魔牛の肉が入っていて、その周りにタメネギとキノコが置かれている。鍋の中は既に食い頃なんだろうな、甘じょっぱい匂いが食欲をそそるわ。

「うっま?!」

魔牛の肉は薄いが1枚がデカい。脂は甘くて、味の濃いタレで飽きそうなもんだが、魔鳥の卵のまろやかさが後を引く。口の中で肉の旨味が消える前に、コメを掻き込む。


「コメは王都でも手に入るが、このタレの味はどうやって出してんだ?」

「秘密のレシピだけど、お客さんには教えようか!東方の調味料、ショウ油が味の決め手だよ!」

「ショウ油・・・しょっぺ!」

店主が小皿に乗せて出した、黒に近い茶色の液体を舐めてみたら、すげぇしょっぱいわ!う~ん・・・でも味付けの幅が広がりそうだな。

「この店にあるってことは、扱ってる店があるのか?」

「アザレの町に東方の商品を扱う店があってね、そこから仕入れてるよ」

アザレか・・・図書館の本を読み終わったら、古書店も行きたかったが・・・先にアザレに行って、紅魚とショウ油を手に入れるのも悪くないな。


晩飯を食い終わって部屋に戻った俺は、図書館で描き写してきた南方の地図を広げた。ザランから東に向かった海岸沿いの町がアザレだな。移動が馬車で2日か・・・行きは馬車で、帰りは転移で戻って来れば良いか。

そうと決まれば、明日で図書館の本を読み切ろう。今夜は2冊だけ読んで、早く寝るぞ・・・。


翌朝も美味い朝飯を食って、俺は図書館に向かった。昨日の続きで2階から読み進めていく。物語や詩集が多いからな、サクサク読めるわ。

1階に移動して全体の半数の本を読んだあたりで、昼飯だ。今日も何処かにクレイアが居るはずだが・・・。

「おら、昼飯の時間だろうが。こっちに来い」

「・・・今日は随分と急いでいるようですね?言葉遣いも荒っぽいし・・・」

後半はゴニョゴニョ言って聞き取れなかったが、何か不満があるのはわかった。立ったままのクレイアの手を引いて、椅子に座らせるとテーブルに昼飯を並べた。


「今日は最後だからな、俺の作った飯を食わせてやるよ」

「最後・・・んむっ」

ひと口サイズに切ったパンにヤギのカードを乗せて、蜂蜜を掛けたものをクレイアの口に入れてやる。親指に付いた蜂蜜を舐め取ると、なぜかクレイアが真っ赤になって怒っている。

「美味いか?・・・食うか怒るか、どっちかにしろ?」

「っ・・・貴方がいけない!・・・っ食べますよ!下さい・・・あっつ」

差し出したミルクルのシチューを奪い取って、食べ始めたクレイアが舌を火傷したわ。怒りんぼで、おっちょこちょいって子供か。

クレイア~光、リュヌ~月だったかな。白磁の肌に金糸の美しい髪を持つエルフ。ツンツン図書館司書。天然たらしの餌食。みたいな感じでしょうか。カズサ×クレイア好きかもです^^


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