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図書館2日目。

翌朝も朝飯を食ってから図書館へ向かった。今日は昼飯も用意したからな、抜かりねぇわ。

入館料を払って、3階までゆっくりと階段を上った。端の本棚から速読を掛けて、全て読んでいく。気に入ったものは速記で写す、昨日と同じだ。


「ゴホンッ」

読んでいた本の丁度最後の一文字を読み終わった時に、咳払いが聞こえた。顔を上げると、昨日会った司書と目が合った。

「・・・よお」

「・・・こんにちは。今日も昼食を抜く気ですか?」

「いや、今日は持って来たからな、食うぞ?」

鞄から取り出した昼飯の包みを見せると、納得したのか司書はフンッと鼻を鳴らして仕事に戻っていった。読み終わった本を棚に戻して、手に清浄魔法を掛けた。


「む・・・美味ぇ」

今日の昼飯は、朝飯に出てきた魔豚のカツと葉野菜を挟んだサンドパンだ。宿の店主に頼んで、カツを分けて貰って正解だったぜ・・・香辛料の利いた肉汁の滴るカツに、シャキシャキと瑞々しい野菜の甘み。程良い硬さの白パン。

「カードとレモネのソースが、また合うな・・・」

サンドパンに夢中で齧りついていると、視線を感じた。棚の陰から俺の手元を凝視する・・・司書だ。

「・・・食うか?」

「別に・・・」

新しいサンドパンを差し出せば、興味無さそうな顔の司書が、しっかりと受け取ったわ。言葉と行動がちぐはぐな奴だな・・・。食い終わった俺は手を洗浄して、また本を読み始めた。


速記で写し終わった紙を纏めていると、甘い良い匂いがした。いつの間にか俺の使っているテーブルの上に、湯気の立つ液体が入ったカップが置かれていた。

「匂いの正体はこれか。ん・・・?カップの下にメモがあるな」

”美味しいパンのお礼です。適度に休憩を取りなさい“

命令口調だが、サンドパンは口に合ったようだ。カップの中身は香辛料とミルクルを混ぜた茶だった・・・美味いな。後でレシピが知りたい。


3階の本を全て読み終わったタイミングで、司書が閉館だと告げてきた。周りを見れば、昨日と同じで俺が最後の利用者らしい。

「茶をご馳走さん、美味かったわ。レシピ教えてくれ」

洗浄したカップを司書に返した。目の前に立ってみると、司書の方が俺よりも若干背が高いな・・・ちっ

「人にものを訪ねる顔じゃありませんね。どうして私を睨むんですか?」

司書がお返しとばかりに、眉間に皺を寄せて俺を見下ろしてきた。表情と口調は強気だが、手がソワソワしてるのが何か面白ぇな。

「俺より背が高いのがな、悔しかっただけだ。じゃあな、明日も来るわ」

目を見開いた司書の横を通り過ぎて、宿に向かう。今日の晩飯が楽しみだ。


「はいよ、今日はビッグフロストの照り焼き丼だよ!」

ビッグフロスト・・・北方の氷山に生息している怪鳥だ。魔物図鑑での知識しかないが・・・味はどうだ?

「む?熱いコメにとろみのある甘辛いソース・・・肉が柔らかくて、噛むほどに旨味が広がるな」

照り焼き丼を頬張りながら、次の一口の事を考えて手が止まらねぇ・・・。反復の呪いでも掛かってんのか?

「美味いんなら、呪いじゃないだろうよ!ほら、今日もおかわりするんだろう?」

「ああ、食う」

店主がおかわりの照り焼き丼(大盛)を俺の目の前に置いた。店主のサービスが、今日も良い仕事をしているわ。

「・・・」

2杯目の照り焼き丼も食い終わっちまった・・・。

「お客さん、そんな絶望的な顔しなさんな。・・・おかわりいるかい?」

「いや、食いてえが・・・流石に3杯は食えねぇ」

俺は早急に胃袋の拡張ができる魔法を編み出さなきゃな・・・。

「そんな事ができたら、商売繁盛で大歓迎だがね、料理の味に飽きちゃいそうだねぇ!」

笑いながら俺の肩を叩く店主の力が、思いのほか強くて痛かったわ。


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