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勇者カエサル幼少期~僕の友達~

僕の名前はカエサル。商家の次男で、12歳になったばかり。

「カエサル、釣りに行こうぜ」

村の年の近い子達が、遊ぼうと誘いに来た。もうちょっと待ってて、まだ家の手伝い中だ。

「今日は広い池まで行こうぜ!」

「危なくない?」

広い池ってのは、そのまんま広くて深い池だ。ちょっと危ないけど、魚が沢山釣れるんだよね。

皆が大丈夫だって僕の背中を押すから、まあいいかと思って歩き出した。


今日は晴れてるから、池の水面がキラキラ光って綺麗だった。

「やった!デカいやつが釣れたぞ!」

ボブがでかい魚を釣って、歓声を上げた。兄弟が多いから、いっぱい釣るんだって。

よし、僕も頑張るぞ!でも、釣り餌のミミズがちょっと苦手なんだよね・・・。

「あ、食いついた!・・・」

僕が釣り上げた魚は、普通の大きさだった。次は、大きいのが釣れるといいなぁ。


皆が釣った魚の数に満足して、飽きてきたのか、竿を置いて遊び始めた。

水際を追いかけっこしたり、取っ組み合いをしている。うん・・・危ないよ?

「あ、カズサだ」

僕と釣りを続けていた子が手を振った方向を見ると、男の子が木陰に座って本を読んでいた。

男の子は声に気づいたのか、ひらひらと手を振り返した。

「カズサって、土木屋の親方の所の子?」

「そうそう。家が近くだから、たまに話すんだ」

ふ~ん・・・僕はまだ話したことないや。どんな子かな?


「うわあ?!」

「ボブ!!ボブが池に落ちたぞ!!」

向こうで遊んでいた子達が、慌てたように騒ぎ出した。大変だ!広い池はとっても深いんだ!

皆が集まってきて、池に落ちたボブに手を伸ばす。捕まれ!!て僕も釣り竿を差し出した。


「煩せぇなぁ」

皆が焦って騒ぐ中、場違いなくらい、のんびりした声が聞こえた。

振り向いたら、あの男の子が面倒くさそうに近寄ってきていた。

「なんだお前?!ボブが溺れてるのが見えないのかよ!!」

怒って怒鳴る子や、睨んでいる子がいるのに、全然気にしていないみたいに鼻で笑ってる。

「掬い上げろ、Sie schninnen」

男の子が何かを呟いて、右手をひらりと振った。

そしたら池の底の土が盛り上がって、ボブと何匹かの魚を一緒に持ち上げた。


「うっげほっ・・・」

盛り上がった土が池の淵に近づいたから、僕達は慌てて、ボブを引き上げに行った。

「何・・・今の?」

吃驚して目を見開いてる子や、口をポカンと開けてる子もいた。僕も同じ顔してるかもしれない。

「あ?魔法だろ。おい、大丈夫かよ?」

男の子が面白そうに僕たちを見てから、ボブにハンカチを渡した。

「あ、ああ・・・サンキュ。助かったわ」

ボブは座り込んで、貰ったハンカチで顔を拭いて、深呼吸してる。


「土木屋のとこのカズサは、魔法が得意だから・・・すごいよね」

「ニコ」

男の子が、僕の隣にいた子の名前を呼んだ。家が近いんだっけ。

「カズサ、ありがとな。」

ニコと、何人かの子達が男の子に近づいて行った。笑って話してる・・・いいな。

「お礼に、あいつと一緒に釣れた魚をくれ。夕飯に焼いて食うわ」

ボブと一緒に掬い出された魚を指さして、男の子がにやりと笑った。


笑うとちょっと、意地悪な顔になるけど・・・嫌な感じはしない。

僕の心臓がドキッと苦しくなった。何だろ?病気になっちゃった?


「ボブ!早く帰って、体温めろよ。じゃあな」

男の子は魚を数匹持って、帰って行った。もう、ボブと名前で呼び合ってるんだ・・・いいな。

「カエサル、顔が赤くない?どしたの?」

ニコが僕の顔を見て、吃驚している。僕の顔赤くなってるの?・・・なんか熱いと思った!

「ん、大丈夫。なんでもないよ!」


皆に手を振って家に帰る間、男の子のことが頭から離れなかった。

魔法が使えて、ちょっと意地悪な顔で笑う・・・かっこいい・・・

「カズサ」

名前を読んでみたら、どうしてだろう?顔がまた熱くなっちゃった。

「次に会ったら、友達になりたいな」



***************


その日から、見かけても話しかける勇気が出ないまま、僕は16歳になった。

教会に王都から偉い司祭様がやって来て、僕にこう言ったんだ。

「貴方は神が選ばれた勇者です。王都に向かいなさい。魔物を倒す旅に出るのです」

どうやら、天啓という神様からのお告げらしい。僕は、剣はあんまり得意じゃないんだけどなぁ。

家族は慌てたけど、最後には、喜んで僕を送り出してくれた。最高のお供も、無理を言って用意してもらった。


「はぁ~面倒くせ。なんで俺がお供なわけ?俺は村でのんびり本を読んでいたいんだけど?」

僕の隣を歩く、僕と同じ歳になったカズサが文句を言っている。もう、名前を呼んでもいいよね?

「あ~・・・ごほん。カズサ?僕にはカズサの力が必要なんだ。どうか仲間になってほしい!」

「・・・」

うわ?!すごく嫌な顔してるけど・・・もしかして、僕のこと嫌いなのかな?!

「なんだその顔?どういう表情だよ?はぁ~たく。いいよ、もう。どうせ村に戻っても、親父とお前の親に文句言われるだけだしな」

カズサが、少し癖毛の黒髪をガシガシと掻き回しながら、溜息を吐き出すように言った。


「ま、王都に行けば面白い本も読めるだろ。暫くの間、よろしくな」

意地悪そうな、僕の好きな笑顔だ。顔に熱が上がった気がするけど、嬉しいからいいや!

僕も笑った。二人で王都を目指す旅が始まったんだ!


勇者カエサル幼少期~僕の友達~終わり。



前回がカズサの「別に友達じゃねえし」的なとこで、終わっていたので・・・

カエサルにとっては、子供の時から友達だよ!みたいな感じでしょうかね。


面白いと思っていただけたらブックマーク、ご評価いただけたら、すごく嬉しいです。

よろしくお願いいたします!

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