中央都市ザランにて~街ブラ
ハイネコの魔法で転移した先は何処かの・・・居間か?麻で編まれた家具に、布物の全部が原色で派手だな。
「どこだ?」
「カズサ、僕達の拠点へようこそ!とりあえず座って話そう?」
ハイネコにグイグイと押されて、ソファに座らされた。セランが茶の用意をしている間、他の奴らも俺を囲うように座った。
「拠点ってことは、スバルトフレム連合国だよな?どの辺だ?」
「ここは中央都市ザランだ。地図見るか?」
ヨルムンドが地図をテーブルに広げ、指差したとこがザランか。ここが南方の中央都市なら、でかい図書館があるはずだよな。古書店巡りもしたいし、市場にも行きてぇな。
「ギルドの位置と図書館の場所を教えてくれ。お勧めの古書店はあるか?」
「え~とね、ザランだけの地図出すね。ギルドは此処で、図書館はここ。古書店はいくつかあるから、僕が案内するよ!」
セランが淹れてくれた茶を飲みながら、必要な情報をメモしていく。取り敢えずはギルドに行って、今夜の宿屋探しだな。
「だいたいわかった。茶と菓子ご馳走さん、上手かったわ」
「「え?!ちょっと待って!何処に行くの?!」」
セランにどこで仕入れた茶か聞いて、メモしておく。荷物を持って立ち上がった俺に、ハイネコとヨルムンドが両側からしがみ付いてきた。
「あ?街の様子見て、今夜の宿探しだけど?」
「何の為に?カズサは僕らの仲間になるんだから、ここに住めば良いじゃない!」
「そうだぞ?部屋は余っているからな!」
「いや?お前らの仲間になるなんて言ってないだろうが。俺は気ままに旅する予定だぞ」
「「「「えっ?!!!」」」」
南方の勇者達4人が一斉に驚いて俺を見たが、せっかく自由になった身だ。また勇者パーティー入りするわけが無い。
「じゃあな、もう行くわ」
俺は部屋を出て、正面玄関を探した。廊下には何かの神・・・?や動物の像が飾られていて、大きな窓から街の様子が見て取れた。
「こっから出るか」
わざわざ玄関を探す必要は無い、この窓から外に出れば良いわ。2階ほどの高さだし、怪我もしないだろ。
「カズサ?!待ってよ!」
着地して振り返れば、飛び降りた窓にハイネコがいて、俺の名を呼んでいた。俺は手を振って歩き出した。先ずはギルドに行って両替をしてから、宿探し・・・の前に本を読みに行くか・・・迷うわ。
ハイネコ達の拠点は大きめの家が立ち並ぶ区画らしく、二階建ての建物に広めの庭が付いている。庭はどこも木や花が多くて綺麗だな。
人が多く流れる方にぶらぶらと歩いて行く。異国情緒溢れる街並みは建物が低く、赤い土壁が目に鮮やかだ。南方特有の褐色の肌の人族と、当たり前だが獣人が多くいて、王都とは全然違う風景だわ。
ギルドで両替をして地図を買った。依頼書を冷やかしで見るが、時間が遅いからか面白い依頼は無かった。
「・・・何処かで服を買うか。今の格好だと熱いし、悪目立ちしてるな」
ギルドの中でもそうだったが、すれ違う奴に見られるのがうぜぇ。南方は常に気温が温かいからか、皆薄着なんだよな。黒装束でがっつり着込んでる俺は、異彩を放ってるだろう。
「ハイネコ情報だと、この周辺に商店が集まってるはずだが・・・あった。」
通りの角に服屋の看板が掛かっている店を見つけた。店主のおばちゃんに適当に見繕ってもらった服に、その場で着替えた。薄地で半袖だが・・・店の中でも数着しか無かった黒色を選ばれたんだが・・・俺のイメージって黒なのか?
「ああ、あんた!良く似合ってるよ!この辺じゃ黒が似合う客が居なくてね!腹帯は・・・こうやって結びな!」
良く喋るおばちゃんだな。南方では、裾の長い服を腰帯で巻いて着るのが主流らしい。俺が巻いているのは赤色だ。
おばちゃんにお勧めの宿と、上手い飯屋を聞いておく。こういうおばちゃんの口コミはバカにできねぇんだよな。勧められた店で香辛料の利いた鳥料理を食べたが、美味過ぎた。追加で2人前頼んで、持ち帰り用に包んでもらった。
「美味かったわ。店主のお勧めの、香辛料売ってる店ってあるか?」
「兄ちゃん、細いのに良い食いっぷりだったなあ!お勧めならなぁ・・・」
また細の大食いって言われたが、気前の良い店主が香辛料の店を教えてくれたわ。腹ごなしに行ってみるか・・・。
街ぶらが結構好きなカズサでした。どんどん地元民に話しかけていくタイプ。
しばらくは南方での旅のお話になるのかな・・・?
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