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国境の砦にて~スバルトフレム連合国からの使者。

翌朝、部屋で朝食を取って身支度を終えた頃に、騎士が迎えに来た。ヨハネストとアズールだ。

「皆さん、出立のご準備はよろしいですか?」

「カズサ様、昨日の服装も良かったですが、本来の黒い装束がとても良く似合ってますね!結婚して下さい!」

朝から訳の分からんことを言うヨハネストの頭を、アズールが良い音をさせながら叩いている。

「すみません、うちのバカが・・・」

「良くわからんが、お前ら見てると和むわ。無害っぽいのが良い」

ヨハネストの絡みは一定の距離が開いていて、しつこくないのが良いわな。


「・・・・・・」

「カエサル様?お顔が・・・」

「ほら!ドアの前塞いでんな!呼びに来たんだろ?」

ガイウスがヨハネスト達をグイグイ押し出した。俺達も荷物を担いで屋敷のエントランスに向かった。

辺境伯の屋敷の前では、辺境伯夫人と娘を先頭に使用人たちがずらりと並んでいた。それを囲うように両側に武装した辺境伯の私兵たちが整列している。ここを通り抜けろってか・・・。

「勇者殿達も揃いましたな。出立する!」

「「「「「「いってらっしゃいませ!!」」」」」」

いやいや、早ぇわ。扉潜った瞬間に、出立の号令出すなや。


「朝から、元気過ぎねぇか?」

辺境伯の声がデカすぎて、耳がキーンっとなるわ。俺は荷物を黒馬に括り付け、浮遊魔法を使って、ひらりと跨った。

「魔法使いカズサ様!」

辺境伯の娘・・・昨日踊った方か?が走り寄って来た。俺に向かって、謎の包みを差し出してくる・・・。

「あの!これ・・・魔法使い様は本が好きだって聞いて!・・・私のお勧めの本なんです・・・受け取って下さい!!」

「?!・・・ありがとうございます、美しいお嬢様。大切に読ませて頂きますね」

「おいおい・・・現金過ぎだろ」

「カズサ・・・・・・」

後ろで何か聞こえたが、今は無視だ。まさか本をタダで貰えるとは・・・ツイてるぜ。



辺境伯とカエサルを先頭に、一行は進んで行く。俺らはカエサルの後だ。俺らの両側にヨハネストとアズール、その後ろに王都の騎士と辺境伯の私兵がぞろぞろと続く・・・。

「けっこう物々しいだろうが、この領の領民は笑顔で手を振ってくるな」

「そうだな、辺境伯も気軽に応えてるしな・・・雰囲気の良い領だ」

「辺境伯の人望と、この領の騎士達が領民達の生活を、きちんと守っているからでしょうね」

道も家も整備されているが、王都みたいな窮屈感が無くて良いな。緑も多いし・・・空気も美味い。

「老後はこういうとこに住むのも良いな」

「・・・?!!」

俺が何と無しに呟くと、カエサルが変な顔で振り返った。おい・・・その首どうした?顔が背中の真上にあるぞ?


「「「「こっわ」」」」

「あ?」

「ゴホンッ失礼。まもなく国境に到着致します」

アズールと数人の騎士達が咳をしている。お前ら・・・さては、晩餐会で飲み過ぎたな?しょうがねぇ奴らだ。

「おら。お前ら、これでも食っとけ?」

俺は鞄から取り出した、ショーガと蜂蜜を練り合わせた飴を騎士達に放った。良い笑顔で口に入れたな・・・クククッ慣れるまでは、ちょっと辛いだろうがな。


広大な草原を抜けると、大地を分断する巨大な裂け目に出た。向こう岸とこちらを結ぶように石造りの橋が掛けられていて、その中央に検問を目的とした両国の騎士が常駐する砦が建っている。

「あの砦の応接室にて、スバルトフレム連合国の使節団との会談の席を、設けておりますぞ!」

辺境伯が愉快そうに笑った。使節団と言っているが、もちろん連合国の勇者達もその中に含まれているんだろう。

砦の中に入ると、ミドラガルドス国の騎士は人族だけだが、スバルトフレム連合国の騎士には獣人族も何人かいた。

「あの虎の騎士、でかいな」

白と黄色の毛並みに黒の横縞が入った筋肉隆々の獣人が、大盾を構えて門に立っている。隣には人族の騎士が槍を構えて、同じく怪しいものが入り込まないように目を光らせていた。


「虎だけじゃ無くて、あの黒毛の彼もすごい体しているね!・・・痛い!」

カエサルがヒョウの騎士を指差した。悪気が無い分、失礼だからな・・・その指を軽く捻っておいたわ。

「王都に居るのは猫とか狐のひょろっとした奴が多いからな。珍しいのはわかるが騒ぐなよ」

「「カズサがまともな事を・・・」」

「ああ?」

ガイウスとユリウスが何か言ってるが・・・お前ら、俺をバカにしてんのか?

砦の騎士に案内されて武骨な砦には似つかわしくない、豪華な調度品で揃えられた応接室に入った。大きなテーブルを囲むように並べられたソファには、既に使節団と勇者らしき男達が腰かけていた。


「お待たせ致しました。使節団の皆様、そして勇者殿!」

辺境伯が声を掛けると、スバルトフレム連合国の使節団と勇者達が立ち上がって礼の姿勢を取った。

「お初にお目にかかる、私は使節団の代表のエンブレフトと申します。」

やつれた顔の壮年の男から順に挨拶を交わしていく。使節団の挨拶が終われば、次は勇者たちだが・・・。

「俺はスバルトフレム連合国の勇者だ。ヨルムンドという、よろしくな!」

若草色の短い髪を後ろに流した、引き締まった体躯の青年が快活に笑った。すげぇ好青年じゃね?

「初めまして、ヒーラーのミラです。皆さん、よろしくお願いします!」

薄桃色の長い髪でタレ目の女が微笑んだ。背が低くてガキみてぇなのに、乳がでけぇ。

「盾役のセランだ。好きなものは武器と酒と肉だ」

端的に話すのは赤髪の筋肉ムキムキのおっさんだが、熊の獣人か?頭の上に丸い耳が付いている。


「初めまして、魔法使いのハイネコです。よろしくね?」

始終、俺の方を見て笑顔を振りまく若い男は・・・晩餐会で会ったハイネコだった。あの時とは肌の色が違うな。灰色がかった肌色に、赤色の瞳は魔族の特徴じゃねぇか。

「ミドラガルドス国の勇者カエサルです。よろしくお願いします」

カエサルが笑顔で挨拶をしているが、視線はハイネコに向けられたままだった。

「盾役のガイウスだ。よろしく」

「ヒーラーのユリウスです。本日の出会いを神に感謝いたします。よろしくお願い致します」

ガイウスとユリウスはいつも通りの感じだな。俺も手短に終わらそう。

「魔法使いのカズサだ」

「「「「挨拶短かっ!」」」」

爆笑しているハイネコを筆頭に、スバルトフレム連合国の勇者パーティー全員が、俺に突っ込みを入れてくんのは何でだ・・・?

一気に登場人物が増えてきましたね。捌き切れるのか、ちょっと不安です^^;

熊獣人のセランが個人的には気になるところです!

ブックマーク、評価、読んで下さってありがとうございます!嬉しいです^^


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