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唸れ、俺の脳髄!!

やがて曲が終わり、ゆったりとした曲調に変わった。招待客達はいったんダンスを止め、お喋りを楽しむ様だ。

カズサはお嬢様をエスコートして席に座らせ、給仕から受け取った飲み物を差し出している。

「カズサの奴、いつも通りの世話の焼きようだな」

「不味いですね・・・お嬢様が潤んだ目で、カズサを見上げていますよ?」

「全然気がついていないが、不味いな。・・・カエサルの様子はどうだ?」

「カズサ達のすぐ隣の席に来ましたね・・・お姉さまの方、生きてますよね?」

「・・・・今、ビクッとしたから・・・大丈夫だろ」


「あ!辺境伯がカエサル様達の方を向きましたよ!ものすごい笑顔なのが、危険を感じます!」

「・・・っカズサ達を回収に行くぞ!」

万が一、娘達の入り婿に来ないか、なんて話が出たら不味い。カエサルが確実にぶち切れるだろう。

「カズサ、カエサル!明日も早いし、そろそろお暇しないか?!」

「そうですね!明日は国王陛下からの勅命通りに、国境に向かわねば!朝寝坊はいけませんよ!」

お嬢様方に退出を伝え、カズサとカエサルを連れ出すことに成功した。わざと大きめの声で話したから、辺境伯にも聞こえていただろう。

「ほら、辺境伯がこっちを見ているぞ!笑え!」

カエサルの笑顔がやばかったが、何とか4人で辺境伯に会釈をして会場を後にした。


「「「・・・・・・・・・・」」」

「ふぁ~・・・疲れたわ。俺はもう寝るわ」

俺達に用意された部屋に戻ると、カズサが空気も読まずに寝る支度を始めた・・・。お前は何で気づかないんだ?!

「ちょい待ち!カズサ・・・もっと良く、周りを見てくれ!」

「あ?・・・お前らも疲れた顔してんな?もう寝ろよ」

「誰のせいで疲れていると思ってるんですか?!」

「ああん?晩餐会を開いた、辺境伯のせいだろうが」

ユリウスがまた、カズサに髪を両側から鷲掴みにされている!ああっ珍しく、ユリウスが反撃を試みて・・・返り討ちにあったな・・・。


「こら、カズサ!手を離せ。ユリウスも・・・泣くなって」

カズサの両手首を掴んで、万歳させた。痛っ・・・俺の足を蹴るな!乱暴な奴だよ・・・こいつは。

「おら!離せよ。筋肉だるま!」

「お前・・・悪口やめろ」

「・・・・・・カズサ・・・」

「「?!!」」

それまで黙って俯いていたカエサルから、墓場の底から聞こえてきそうな恐ろしい声がした。俺は無意識に両手で掴んだままのカズサを差し出したし、ユリウスは俺の背中に張り付いて震えている。可愛いな?


「なんだ?」

「カズサはどうして・・・」

この先を言わせたら不味い!王命の任務中に6回目の追放劇が始まっちまう!・・・くっ俺の脳髄よ、妙案を捻り出せ!!

ブう~・・・ん?

「くっせ!」

「ひぎゃあ?!く・・・鼻が曲がりそうです!!」

「・・・・・・」

「す、すまん・・・腹に力を入れ過ぎちまった・・・」

打開策を捻り出すはずが・・・俺の尻から別のものが出ちまった・・・。カエサルをチラリと盗み見たら、俯いたまま肩を震わせている?!ヤバい・・・俺の屁で、状況が悪化したのか?!!


「カ、カエサル?」

「・・・・・っぷっ・・・あははははは!」

「「?!!」」

突然、カエサルが腹を抱えて笑い出したから、俺はビクッとしちまった。向こうでユリウスも同じ顔だ。

「あはっ・・・おかしい!もうっ・・・怒ってるのが、バカらしくなっちゃったじゃないか!」

涙を拭いて立ち上がったカエサルの顔は、いつも通り穏やかで優しい顔だった。機嫌が直ったのか?

カエサルが、俺に万歳させられたままのカズサに近づくと、右手を差し出してニコッと微笑んだ。

「カズサ、僕・・・踊り足りないみたい。一曲付き合ってくれない?」

「ああ?何で俺が・・・っ」


バカ、空気読め!断ったら大変なんだって!俺の思いが通じたのか、ユリウスが勇敢にもカズサの口を両手で塞いだ。偉い、頑張ったな!

カズサが凄い目でユリウスを睨んでるから、泣きそうで可哀そうだが・・・今は、耐えろ!

「カエサル様!今回の依頼が終わったら、休息日を長めに取りましょう!!」

「!そうだな!休みが長ければ、カズサも本がゆっくり読めて良いな?!」

「・・・う~ん、どうしようかな?カズサが僕のお願いを聞いてくれるなら、いつもの休息日に3日追加しちゃう?」

通常、討伐依頼や今回みたいな国からの任務後の休息日は2日だ。そこに3日追加されたら、5日間じっくり読書ができる。カズサが断るわけが無い!


「・・・ちっ・・・面倒臭ぇ。一曲だけだぞ?」

「?!・・・うん!!」

「うっし!」

「やった!・・・ちょっ?!」

カエサルが花が咲くみたいに笑った。よっぽど嬉しいんだろうな。もちろん俺も嬉しいから、カズサを放り出して、ユリウスを抱き上げた。

「いって・・・尻を打ったじゃねぇか!」

「大丈夫?はい、お手をどうぞ?」

カエサルが差し出した手を、すごい嫌そうな顔でカズサが握った。この後、カズサが魔法で音楽を鳴らして、俺達はワルツを一曲踊った。

カエサルは上機嫌だったし、危機を乗り切った俺とユリウスも機嫌が良かった。カズサはまあ・・・あれだが、今夜は良い夢が見れそうで、良かったぜ。


ガイウス視点でした^^

カズサには脳筋と思われていますが、良識があって頼りになるおっちゃんです。

嫉妬でカエサルの心臓が焼け切らないか、すごく心配です^^;


ブックマーク、評価、読んで下さってありがとうございます!明日の活力になっております^^

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