夜更かしした朝は・・・
一度部屋に戻った俺は、楽な部屋着に着替えた。正装は重ね着してるからか、重いし疲れんだよな。
「これから、図書室に行くの?」
「お前まさか・・・徹夜する気じゃないよな?」
「明日の朝には、次の街に出発ですよ!きちんと睡眠を・・・っ?!」
「わかってる。心が抉られるようだが、選別して読むわ」
ユリウスの鼻を摘まんで黙らせた。言われなくても依頼を受けている最中に、徹夜なんか・・・しねぇよ?
部屋の外にいた侍従を捕まえて、図書室に案内してもらった。小さい部屋だが、蔵書のセンスが良いわ。
「む・・・初めて見る魔物図鑑に、薬草酒のレシピ集?裁縫と刺繍はどうでも良いが・・・」
夫人の趣味なのか、手芸の本が多いな。でもその中に、使い方によっては面白そうな本が一冊あった。人形の作り方の本だ。
「布製から木製の球体関節・・・可動式か。部品の中が空洞だから、魔法陣を刻めば・・・自動も可能か?」
面白ぇ。こっち方面の本は読んだことが無かったから、盲点だったわ。
昔読んだ本に、魔族は使い魔を従えることがあるって書いてあったな。手下は要らねぇが、作ってはみたい。
「よし、この本と他には・・・選別はこんくらいにしとくか」
断腸の思いで読む本の数を絞ったぜ・・・。依頼中じゃ無ければ、この部屋の本は全部読みたかったがな。
「はぁ~・・・仕方ねえ」
できるだけ数を読みたいが、時間も無ぇ。取り敢えず、速記で書き写した分を、後で読む用に鞄に仕舞っていく。「これで、蔵書の半数は書き写せたか?残りは普通に読むか・・・」
丑一つ時(1時半)までが限界か?・・・もうちょっと遅くても起きられ・・・無いわな。寝つきは良いが、寝起きが悪い自信はあるからな・・・。
「・・・サ・・・カズサ、起きて!朝だよ!」
「起きねえな」
「起きて下さい!朝食を頂いたら、出発ですよ!」
耳元で煩ぇ・・・あ~・・・無理だわ・・・
「起きないと、キスしちゃうよ」
誰かが俺の体を抱き上げたのか・・・?口に息が掛かって・・・
「・・・気持ち悪いわ!」
身体強化を掛けた右拳を振り上げたら、何か柔らかいものに当たったから、そのまま振り切った。
「痛っ・・・?!」
「か、カエサル様?!大丈夫ですか?!」
「う、うん・・・大丈夫だよ」
「冷やした方が良いな・・・ほれ、カズサ!いい加減に起きろって!」
両手首をぎゅっと握られて、引きずり上げられた・・・痛ぇわ。万歳をさせられて薄く目を開いたら、ガイウスが困った顔で俺を見ていた。
「ああ~?・・・ふあ・・・」
欠伸を吐いて、首がガクッと落ちたから目を閉じた・・・。
「いや、起きろって!直ぐに支度しないと、遅刻するぞ!」
煩ぇな・・・揺らすなや。昨晩は・・・程々で寝たはず・・・でも何故か、目は開かねぇ。
「・・・僕が着替えさせようか?」
「・・・いや、俺がやるわ。カエサルとユリウスは、朝飯を食いに行け。カズサと俺の分は、この部屋に運ぶように伝えてくれるか?」
「・・・わかりました。カエサル様行きましょう」
遠くでドアが閉まる音が聞こえた。静かになったから、やっと眠れるわ・・・。
「おい。二度寝は禁止だからな?ほら、腕上げろ・・・たく。徹夜で読んだんじゃないだろうな?ほら、腰上げろって」
「・・・してねぇ・・・」
徹夜はして無ぇ・・・たぶん、朝迎鳥はまだ鳴いていなかった・・・はずだ・・・。
体を揺すられたり、持ち上げられたりしてるうちに、段々と目が覚めてきた。ソファに座らされて、髪を櫛で梳かれる頃には完全に目が覚めた。
「よし、起きたな?朝飯は食えるな?急ぐぞ」
「・・・おう」
メイドが配膳していった朝食を眺めながら、熱い茶を啜った。さすが貴族の家のメイドだ、茶の淹れ方が美味いわ。
手を伸ばして、燻製肉と葉野菜が挟まった月形のパンを一つ取る。齧りつくと、肉の旨味と酸味のあるソースが良く絡んで、美味かった。パンの周りがサクサクで、中がしっとり柔いのも良い感じだ。
「この家の料理は、美味いな」
「そうだな。カズサの飯を食っていると、何処で食ってもそこそこなんだが・・・この屋敷の料理人は腕が良いな」
2つめのパンを二口で平らげたガイウスが、3つめのパンに手を伸ばしながら言った。食うのが早ぇ・・・。
「もうちょっと、良く噛んで食えよ。年を考えろ」
「年は関係ないだろうが。それ残すなら、くれ」
「やらねぇよ。俺だって、まだ食うわ」
やめろ。俺の分まで狙ってくんじゃ無ぇ!壁際に控えていたはずのメイドが、無言でおかわりを置いて去って行った。出来る女だわ。
男しか出ない詐欺になってないか、ドキドキですが。村の同年代の娘や、義母やメイドなど・・・主要キャラでないとこでは勘弁して下さい^^;
男だけだと完全にBなLになってしまいそうで、そこもハラハラしちゃうので。
ブックマーク、評価ありがとうございます!読んで下さって嬉しいです!^^