国境へ向けて・・・諦めた。
「で、どういう状況よ?これ」
何か知らんが、本を読み終わって顔を上げたら、馬から下りて皆で休憩してたっぽい。
俺は騎士に抱っこされたまんまだったから、お礼に頭を撫でておく。
「カズサ様!俺の命が危ないので!過度のスキンシップはお控えください!!」
大漁の汗をだらだら垂らしながら、焦る騎士の額を布で拭ってやった。どうした、落ち着け。
「そんなに汗かいて、どうした?ほら、俺の茶をやるよ」
「「間接キス・・・」」
「い、いや!!ちがっ・・・」
「嫌なのか?俺の茶は、嫌か・・・」
新しい茶を貰うか?見た感じ、余分な茶は無さそうだが・・・。
「「カズサ(様)の茶を断るのか?!落ち込んでいるじゃないか!!」
「どっちだよ・・・!くっ・・・カズサ様、頂きます。そのお茶を飲ませて下さい!」
「おう」
気が変わったのか、騎士が必死で頼んできたから、カップを口につけてやる。ゆっくり飲めよ。
「ごくっ・・・ありがとうございます」
「「間接キスからの、飲ませてもらうやつ・・・殺るか?」」
カエサルとヨハネストが、ブツブツ言ってんだけど、何言ってんのかは聞こえねぇ。
「あ?あんた・・・あの時の騎士か?」
茶を飲み終わって落ち着いたのか、表情が消えた騎士の顔に見覚えがあった。
「あの夜は、ありがとうな。すげぇ楽しかったわ。俺(大きい図書室とか)初めてだったからさ、緊張したけど(沢山、本が読めて)良かったよ」
ガキの時の話だから、照れちまう。俺が言い終わる前に、ガチャリと剣を抜く音が、あちこちから聞こえた。
条件反射で結界を張ると、四方から剣がぶつかってきて、摩擦で火花が散った。何だ?
「誤解だ!!カズサ様、紛らわしい言い方をしないで下さい!!カズサ様が王城に初めて来られた時、晩餐会の夜に、図書室にご案内しただけだ!!!」
「「「「「・・・なんだ。そういう意味だったのか」」」」」
何人かが剣を収めたが、カエサルとヨハネストは、まだ剣を持ったままだ。俺に喧嘩売ってんのか?
「締め上げろ・・・arrest」
地面から伸びてきた鎖で、2人を捕縛した。地中から集めたミスリル剛金の鎖だ。簡単には切れねぇ。
「お前ら、俺に文句でもあるのか?」
「私は、カズサ様じゃなくて、そいつに文句があります!!」
「じゃあ、ヨハネストはこいつ・・・名前、教えろ。アズールと話してこい」
結界を解いて、縛られたヨハネストをアズールに預けた。次はこいつか・・・俯いているカエサルの頭を、グイッと押し上げた。
「今度は何だ?何が不満だ?」
カエサルの緑の目が揺れて、俺を睨んできた。身に覚えが無ぇから、こっちもイライラするわ。
「謝って!」
「あん?」
「カズサは無意識に、人たらし過ぎるんだよ!カズサは僕のものでしょう?!浮気しないで!!」
「ああ?俺が誰のものだって?頭わいてんのか」
身に覚えのない言いがかりに、怒りを通り越して、呆れてくるわ。溜息しか出ない俺を、カエサルが憎々し気に睨んでいる。
「謝って!!」
カエサルが俺の鎖を引き千切って、聖剣を抜いた。その顔じゃ悪魔みたいだな、聖剣が可哀そうに見えるわ。俺とカエサルだけを包んで、結界を張った。これで多少暴れても、他の奴は怪我しないだろう。
早過ぎてカエサルの太刀筋が見え無ぇが、問題ない。聖剣が俺をぶった切る瞬間を予測して転移した。振り切ったところで、同じ場所に転移して、疑似血を散らす。はい完璧~。
「「「・・・・・?!!!!」」」
「カズサ!!」
「ああ・・・っ何てことを?!!」
ククッ、良い感じに悲鳴が聞こえるわ。倒れ込んだ俺は、目を閉じて数えた。10数えても、カエサルからの反応が返ってこない。焦れた俺が薄目を開けて見ると・・・膝を付いたカエサルが、泣いていた。
「あ・・・カズ・・・サ・・・ごめん・・・」
うわ言みたいに俺に謝り続けるカエサルが、不憫に思えた。ちょっとだけな。この勘違い野郎は、一発ぶん殴らねぇと気が済まねぇ。俺は立ち上がって、強化を掛けた右手でカエサルの頬を殴った。思いっきりな!
「おわっ?!」
俺に殴られて頭が吹っ飛ばされているのに、視線が俺から外れねぇ。一瞬動きの止まった俺を、白銀の鎧がきつく抱き込んだ。
「カズサ!カズサ・・・ごめん!僕を・・・嫌いにならないで!」
「うぐっ」
あっぶねぇ!寸前で身体強化を掛けてなかったら、マジで背骨折られてたわ!謝りながら殺しにくんの、何なん?
俺を抱き潰しながら、縋りついて泣いているカエサルに、こいつはもう何を言ったって、無駄だなっていう呆れと諦めを感じた。俺に対する執着が強過ぎるってのだけは、わかったわ。
「はぁ~・・・面倒・・・」
取り敢えず、頭をわしゃわしゃと撫でまわしていたら、痛いだの、もっと優しくしろだの調子に乗ってきが、カエサルの気が済むまで付き合ってやった。もう、抵抗する気力がわかねぇ。疲れた。
やっとカエサルが落ち着いてきた頃には、他の奴らを随分と待たせちまった。
「すまん、待たせたな」
「皆ごめんね」
俺も大人だ、時間を無駄に使ったことには、詫びを入れるわ。後からガイウスに聞いたが、俺の知らないうちに一回、追放されていたらしい。5回目だとよ・・・そろそろ、いい加減にしねぇか?
カエサルを睨んだら、へらへらと笑って、抱き着いてきた。
「もう、そういうのは終わりにして下さい。本気で時間が不味いです」
何故か、左頬を赤く腫らしたアズールが、無表情で責めてくる。俺お手製の回復薬をそっと、渡しといたわ。
「わかった、わかった。時間については任せておけ。・・・おら、目を閉じて、くっつけよ?」
素直な騎士たちが身を寄せ合って、くっついたのを確認して、もちろん馬も荷物も忘れてねぇよ?魔力がかなり減っちまうが、通過予定の街の手前まで転移した。洗浄魔法を掛けて、血糊を落とすのも忘れない。
「目を開けても良いぞ」
「「「「・・・・おお?!!!」」」」
あんま人前で転移は使いたくなかったが、しょうがねえよな。騎士たちの記憶を消すって手もあるが・・・。
「今あったことを口外したら、殺すから」
「死にたくなかったら、忘れろ」
「神は皆さんを信じて、見ておられますよ?わかりましたか?」
釘はカエサル達が刺したから、問題は無いな・・・?
だんだんカエサルが酷くなってきて、心配です^^;どこに向かってるのか?
軽いタッチで、ふざけてる男子学生みたいな雰囲気を目指しているはずが・・・。
制御できるように頑張ります!アズールが、今の私の癒しです^^;
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