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国境へ向けて・・・浮気者。

「殺す・・・」

「カエサル、抑えろ!岩は不味いぞ?!」

「そうですよ!どうか、お心を静めて下さい!あの騎士が落馬すれば、カズサも怪我をしますよ!!」

周りが煩ぇが、今は本を読みてぇ。夜中に読み溜めしたはずだったが、全然足りなかったわ。

「嬉しいですか?カズサ様」

「あ?・・・ああ」

「私は役に立ちますか?」

「・・・おう」

「私と結婚して下さい」

「あ~?いいぞ」

「うお?!」

読み耽っちまってたら、ヨハネストの体がまた、大きく後ろに反った。んだよ・・・落ち着かねぇ奴だな。


ヨハネストの隣を並走していた騎士と目が合った。ん!と両手を伸ばしたら、首を横に振られた。

「良いから、俺を抱けよ」

「「「「・・・・・・言い方!!!」」」」

「ちょっ・・・そういう、誤解を招く言い方は止めて頂きたい!!勇者様、殺気を抑えて下さい?!」

「煩い、早くしろ。ん!」

ヨハネストは急に大きく動くから、集中が途切れてイラつく。俺はじっくり本が読みてぇんだよ。両手を伸ばし続ける俺を、諦めた騎士が抱き上げた。

「あ!こら、返せ!!」

「ヨハネスト煩ぇ。俺はこいつが良い」

安定感を上げるために、騎士と向かい合って座った。俺の両腕を騎士の首の後ろに回せば、完璧だ。


***************


「か、カエサル・・・落ち着け?」

「か、カエサル様!カズサは本を読む為だけに、あのような破廉恥な格好を・・・あ!」

「バカ!」

ぶるぶると震えたカエサルが、あの言葉を叫んでしまった。5回目の追放の台詞を・・・。

「カズサのバカ!浮気者!!カズサなんか、僕のパーティーから出て行ってよ!!」

「「「・・・・・」」」

本に夢中のカズサには、聞こえていなかったようだ。ほっとした俺とユリウスの横を、風が通り過ぎて行った。

カエサルだ!カエサルが鬼の形相で、カズサの方に駆けて行く。あの顔は勇者としては不味い!!


「カズサ!!」

「あ?」

「こっち見て、僕の話を聞いてよ!」

「んだよ」

「浮気者のカズサなんて、僕のパーティには必要ないから!」

「そうか」

「~~~~っ今すぐ、出て行って!!」

「わかった、わかった」

俺達が追い付いたときには、遅かった。自分で言い出しておいて、呆然自失のカエサルは固まって動かない。


「カエサル様、何を?!カズサ様も、王命ですので離脱は難しいかと!」

「「「真面目か!!」」」

む、何人かの騎士と被っちまった。カズサは本に夢中で、この惨状に気づいていない。カズサを抱えた騎士はまともだが、真面目過ぎる。

「勇者(魔)の手から離れたカズサ様は、俺が守ります!!」

うん、副隊長は黙っておこうか。どうすんだよ、この状況。日程に余裕ないんだよな?!

「あの、ご提案致します。日程の遅れは気になるかと思いますが、少々の休憩を挟まれては如何でしょう?我々勇者パーティーには話し合いが必要ですし、時間の遅れはカズサが如何様にもできますので」

さすがだよ、ユリウス。愛してる!!


騎士たちも納得してくれたようで、少し進んだ所にある休憩場で馬を下りた。敷布を敷いた上に座った騎士に、カズサはしがみ付いたままだったが・・・。


「「「「「・・・・・・・・」」」」」

俺達は茶を啜り、暫く待った。誰も言葉を発しない、緊張状態を解いたのはカズサだった。

「ふぅ・・・満足」

本当に満足したように笑った顔を見た、数名が顔を押さえて俯いた。耳が赤いのは、おっちゃん見逃すからな。

「「笑顔・・・可愛すぎる」」

うん、2名ほど駄々洩れの奴がいたな?カズサを抱っこしていた騎士が、困ったように茶の入ったカップを渡している。


「この茶、美味いな。どっから仕入れてる?あ?王宮で作ってるやつか。余ったら分けてくれ」

「呑気だな、カズサ。空気を読むことを覚えような?」

「そうですよ!カズサが終わるまで、待ってたんですよ!皆さんに申し訳ない・・・いひゃい!」

ユリウスを虐めるカズサの両手を取って、万歳させる。これやると、カズサが怒るから、可愛いのな。

「は?!」

俺は今何を・・・?隣から刺さる、ユリウスの視線が痛い。カズサって、何気に魔性なのか?!

「貴方の尻が軽いだけでしょう・・・」

「いや、違うぞ?!」

ユリウスの地を這う声を、初めて聞いた気がした。怖、可愛いのな!!



イメージとしては、カズサは可愛い系の容姿ではありません。

しかし、普段がちょっと雑で乱暴な物言いと、隠れ母ちゃん気質なのに対して、今回は本が読みたいばかりに、周りに本人無自覚で甘えているようです。

読み返して、私も「おや?」となりました。無自覚でカズサのデレを書いていたようです。

纏め役のガイウスが頑張っていますし、ユリウスもカズサが絡まなければ、頼りになりますね。


ブックマーク、評価、読んで下さって、ありがとうございます!嬉しいです^^

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