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甘い飴をちょうだい。

翌朝から、遠出用の買い出しで店を回った。粗方揃ったから、狐の店にでも行ってみるか。あの赤いのぼりが目印って言ってたな。

「いらっしゃい、ようこソ。沢山買っていってネ」

店に近づくと、灰色の狐がニコニコと笑って、話しかけてきた。

「お勧めは何だ?」

南方の香辛料を中心に揃えてるから、見たこと無ぇのが多いな。

「数種類の香辛料を漬け込んだ辣油ネ。どんな料理にも合う、万能の調味料ヨ。茶は南方のものを中心に数種。甘茶がお勧めネ」

狐が試飲のカップを渡してきた。カップの底で茶の花が咲いている。む・・・丁度いい甘さだな。飲み終わったところで、今度は匙に乗せた辣油?を差し出された。


「辛っ・・・でも後を引くな。買うわ。あと、試飲の茶もくれ」

「毎度ありがとうネ!」

品物を受け取った俺に、狐が顔を寄せてきた。んだよ?髭が耳にかかって、くすぐってぇ。

「なんだ?」

「ありがとうネ。獣人は、仲間の恩は一族が必ず返すヨ」

ああ?眉を顰めた俺を見て、狐が薄く笑った。俺の手を掴んで、何かを握らせてくんじゃ無ぇ。

「おまけヨ。また来てネ~」

ひらひらと手を振った狐に見送られて、店を後にした。掌のおまけを口に放り込んで、ガリガリとかみ砕く。

「甘ぇ・・・」

蜂蜜とミルクルの味だな。そうか・・・狐の仕事は手広いらしい。


その後は、猫の親子の店にも寄った。旬の野菜と薬草を、たっぷりと買う。ここでも、親父からおまけを貰った。

「カズサ~ありあとニャ~!ありあと~!」

猫のガキが俺の足にしがみ付いて、ニャ~ニャ~泣いてたが、頭をわしゃわしゃにしてやったら笑ってたわ。



***************



「ふぁ~・・・だりい」

「眠そうだけど、夜更かししたの?」

「ああ?今回は拘束時間が長ぇからな、読めるうちに読んどきたいだろうが」

「貴方はいつも夜更かしして、本を読んでるじゃありませんか!ちょっ・・・痛っ?!」

今日は面倒臭ぇことに、王都を出るまで見世物になるんだよな。勇者のカエサルは白銀の派手な鎧姿だ。

もちろん、俺らもボロは着れねぇ。ユリウスは教会の紋章が入った、白い法衣を着ている。朝から小煩い口を、引っ張ってやった。

「こら!やめろって。可哀そうだろ」

ガイウスは光沢を押さえた赤い鎧だ。背中に大盾を担いで乗られる、馬の方が可哀そうだろうが。


所持品の確認をして、新しい鞄を背負う。いつもの背負い鞄はこの中だ。後で服を着替えたら、鞄も変えよう。

「その鞄、初めて見るやつだね。正装用に作ったの?今日のカズサ、真っ黒くてかっこいいね!抱き締めても良い?」

「ああん?」

最後のが意味わかんねぇが、確かに今日の俺は、真っ黒だわ。いつもは着ねぇ、長丈の黒シャツに黒い皮パンツ。赤い糸で刺繍の入った黒いローブに、黒ブーツだ。

「闇の魔法使い爆誕!ですね!素敵です!!」

拠点の入り口で駄弁っていると、無駄に元気な声が近づいて来た。あ~・・・振り向きたく無ぇ。


ガチャガチャと金属の擦れる音が、俺の側で止まった。俺の手を勝手に握るんじゃねぇ。

「ミドラガルドス国、第一騎士団副隊長ヨハネストが、勇者様方をお迎えに参上いたしました!」

ガタイが良いから、嫌でも目に入るわ。ヨハネストが俺の前に跪いて、俺の手に何をしようとしてやがる?

「手を放せ」

地底の底から響くみてぇな声が、俺の台詞を奪った。カチャッと剣が抜かれる音と同時に、腰を強く引かれた。

「・・・お前が離せや」

何でか知らんが、聖剣を構えたカエサルに、俺は抱き締められていた。無理やり引っ張られて、腰が痛ぇわ。


「そうピリピリしないで下さいよ。仲良く行きましょう!」

ヨハネストが握ったままの俺の手の甲に、口をつけた。腹でも減ってんのか?それは食いもんじゃ無ぇ。

「貴様!」

カエサルが剣を振り下ろしたが、ヨハネストはへらへら笑いながら、飛び退いて避けた。

「あっぶねえな!俺の手も、ちょん切れるだろうが」

「痛っ・・・酷いよ、カズサ!」

俺にぶん殴られた頭を涙目で擦って、カエサルが恨めしそうに見てくるが、知らねぇわ。


「そろそろ、出発いたしましょう。城門を抜けるまでは皆様、馬での移動をお願いいたします」

はぁ~・・・面倒。鞍は尻が痛くなるから、嫌いなんだよな。魔法で柔らかくするか?

迷っているうちに皆、馬上の上だ。先頭は旗を掲げた騎士だ。その後ろにカエサルと俺らが続いて、騎士が20名ほど後続につく。

「カズサ様、お手をどうぞ」

「やめろ。女じゃねえ、自分で乗れるわ」

ヨハネストの差し出した手を無視して、ひらりと馬に跨る。秘密だが、浮遊の魔法が使えるんだよな。

「なんと素晴らしい。私も跨がれたい」

「ンンッ」

頭のわいているヨハネストの言葉に、ユリウスをはじめ、何人かの騎士が咳払いをした。風邪か?


「ちっ・・・旅の前に、調子を整えておけよな。全員、口を開けろ」

鞄から取り出した蜂蜜とミルクルを混ぜた飴を、風を操って、全員の口の中に放り込んだ。

「「「「?!!・・・んま~い!!!」」」」

男どもが頬を押さえて、クネクネすんじゃねぇよ。鎧が擦れて、ガチャガチャ煩ぇわ。

「「「カズサ・・・そういうとこだ(ぞ)(ですよ)よ?!」」」

「ああ?」

カエサルが睨んでくるし、ガイウスとユリウスは、何だ?変な顔で俺を見るんじゃねぇ・・・。


サブタイトルが毎回、思いつきません^^;

皆様お気づきでしょうが、カズサは土建業の家の子なので、小さい頃から手伝いをしたり、おっちゃん達に可愛がられたりしながら育っております。

魔法使いですが、実は腕っぷしは弱くないですし、スキンシップ過多にも慣れております。

だから多少、触られても、抱き締められても気にしないんですね・・・。

新たにカエサルみたいなキャラが増えてしまいましたが、胃もたれしないで下さいね^^;


ブックマーク、評価ありがとうございます!嬉しいです^^

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