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勇者カエサルの憂鬱3

カエサル達と別れてから2週間ほど経った頃、茶屋のテラス席で本を読んでいると、俺の名を呼ぶ声が聞こえた。

「カズサ!!やっと見つけましたよ!!」

ん?空耳か。この本、何回読んでも新しい発見があるな!俺なら、こっちをこうするな。メモだな。

「ちょっ!無視しないでくださいよ!カズサ!!」

はぁ~煩え・・・俺の貴重な、読書の時間を邪魔するバカ野郎がいるな?どこのどいつだ?

怒気を孕んで、ゆっくりと顔を上げた先には・・・ヒーラーのユリウスがいた。

俺の顔を見て肩をビクッと震わせた、顔色の悪いユリウスが、キッと涙目で睨んできた。なんだよ?


「なんか用か?」

「用があるから、来ているに決まっています!!」

おい、勝手に俺の隣に座るなよ。プルプル震えながらも、ユリウスは律儀に茶を注文している。

「ふぅ~温かいお茶が、乱れた心を癒してくれますね」

目を閉じて、茶の味を堪能しているユリウスを無視して、俺は本の続きを読もうと本を開いた。


「ちょっ待ったあ!開かせませんよ!!私の話を聞いてください!!」

「・・・俺の本から、手ぇ放せ。1数えるうちにだ。い・・・」

ちっ・・・素早い動きで手を離したユリウスが、冷や汗を滝のように流している。

俺お製の魔法薬で、触られた個所を綺麗に拭いた。

「私の扱いが酷すぎませんか?!いえ・・・良いです。そんなことより、貴方に帰ってきて欲しいんですよ!」

「なんで?」

キンキンと耳元で煩いので、片側の耳を塞いでおく。

「カエサルが、貴方が出て行ってから元気がなくて・・・貴方のせいですよ。責任取って下さい!!」


「はぁ~?出て行けって、カエサルが言ったんだろうが。後のことは知らねえよ」

「どうしてそんな酷いことが言えるんですか?!貴方達は同郷の友人なんでしょう?!」

はぁ~煩せ。村にもいたな、やたらと世話焼きでキンキン喚く女共が。ユリウスお前・・・女か?

「同じ村出身の、年が一緒ってだけだし。別に友達じゃねぇよ」

ため息交じりに返せば、俺の後ろでドサッと何かが落ちる音がした。ドジなウエイトレスが何か落としたな。


「あ・・・貴方って人は・・・!血も涙もない悪魔!そう、貴方は悪魔・・・」

真っ青な顔でブルブル震えたユリウスが、俺の背後を指さしながら喚いてる。ん?最後まで言ってみ?

「用事がそんだけなら、帰ってくれ。俺は静かに本が読みたいんだ」

テーブルの上に俺の分の代金を置いて、席を立つ。後ろがなんか煩いが、気にせず店を出た。


ぶらぶらと歩いて、村はずれの湖の所まで来た。風が湖畔を揺らしてキラキラと光っている。

「風が気持ちいいな・・・」

木に寄りかかって草の上に座ると、読みかけの本を開いた。この本には風魔法も幾つか載っていたな。

頭の中で、風魔法の構築式を算出していると、隣に誰かが座った気配がした。

「ちっ・・・しつこいぞ」

ユリウスだと思って振り向けば、以外にもそこに居たのは、カエサルだった。

「しつこい・・・」

カエサルは俯いて、小さく震えているようだ。どうした、何があった?


「・・・・」

特に何も言ってこないので、とりあえず無視して思考の中に潜りかけた時、カエサルが俺の名を読んだ。

「カズサ・・・」

「ん?なんだ?」

俺が返事を返したからほっとしたのか、カエサルが泣き出しそうに、クシャりと顔を歪めた。

「カズサ、ごめん。僕が出て行けって言ったのに・・・僕はカズサが居ないと・・・寂しい」

「はぁ」

俺の気のない返事に、カエサルがシュンとして俯いた。いやっ・・・19の男が何言ってんの?

俺はぐいぐいと眉間を揉んで考える。出て行けって言ったり、寂しいって言ったり・・・


「カエサルお前・・・情緒不安定なのか?」

カエサルの目を覗き込んで、異常がないか観察する。瞳孔が開いてんな・・・顔もちょっと赤い。風邪か?

互いの額をくっつけて熱を測る。熱くは・・・熱くなってきたか?

「ちょっ近い!・・・そういうところだよ、カズサは!!」

俺の両肩をグイッと押して、カエサルが距離をとる。涙目に微熱、息の乱れも有り。お前、風邪だな?


「俺が何だよ?」

とりあえず上着を脱いで、カエサルの肩にかけてやった。草の上も冷えるな・・・ちっ世話が焼ける。

俺よりガタイが良いカエサルを魔法で持ち上げて、俺の膝の上に座らせた。重力軽減が効いてるな。

「くっ・・・前に依頼を受けた時に、ガイウスが酷い怪我をした時あったでしょ?」

ああ、肋骨3本逝った時な。頭も強打して泡吹いてたから・・・あんときゃ駄目かと思ったわ。

「あの時、カズサはガイウスを抱きしめて・・・ガイウスにばっかり優しくしてさ!僕だって怪我してたのに!」

「・・・・ん?」


「カズサは僕の・・・僕を一番に心配してくれないと、嫌だ!!」

「んん???」

脳みそが、処理できて無いわ。カエサルが何言ってんのか、ちょっとわかんねぇ。

泊まる宿とってんのか?お前はもう、寝ろ。寝て風邪を治せ、な?カエサルを立たせて、頭を撫でておく。

村までの間カエサルは無言だったが、突然「カズサのバカ!!」と言い捨てて、走り去って行った。

誰がバカだ。バカって言う奴がバカなんだろうが・・・。持ち去られた上着は後で返ってくれるよな?



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