表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

28/89

甘くて苦い夢のお話。

「カエサル、ずっと言えなかったんだけど・・・おまえが好きだ」

そう言って、カズサが照れ臭そうに僕にチョコレートをくれた・・・


「・・・・は?!!・・・」

突然視界が切り替わって、見えたのは見慣れた自室の天井だった。

「あ・・・夢?」

突然の覚醒に驚きながらも、幸福な夢の余韻に浸りたくて再び目を閉じた・・・。


「・・・おい、起きろ!カエサル!昼飯、食わねえのか?」

頬を軽く叩かれる感触に、重い瞼を開くと・・・視界には僕を覗き込んでいるカズサの顔。

腕を伸ばして、抱き寄せると・・・「寝ぼけんじゃねえ」と頭を叩かれた。


「あれ~?・・・」

頭を擦りながら1階に降りて行くと、既に全員がテーブルについていた。

「おはようございます、カエサル様」

「カエサル、おはようさん」

「ほら、座れ」

カズサが僕の分の昼食を配膳してくれた。今日のは、初めて見る料理だね?


「美味しそうだけど、これ何?」

「これな。猫んとこで、南方から入ってきたスパイス買ってよ。レシピ貰ったから、作ってみた」

「カリイライスっていうそうですよ!」

「カエサル、俺達ずっと待ってたんだぞ。一先ず食おうや」

ガイウスが我慢できないという顔で言った。確かに・・・食欲をそそる、良い匂いだな。


「「「いただきます!」」」

「あいよ~」

「「「「・・・・・・・?!!」」」

「う・・・美味い?!」

「辛みの後に、ほのかな野菜の甘みがやってくる・・・美味しいですね!」

「うん、僕は好きだな!美味しいよ、カズサ!」

「あ~?・・・けっこう美味いな」

僕達は無言で、それぞれ2皿ずつおかわりして食べた。初めての味だったけど、とても美味しかった。


「そういや、今日は珍しく寝坊だったな?」

「何処か、お身体の調子が悪いのでしょうか?癒しをかけますか?」

「ああ、大丈夫だよ!今朝はちょっと・・・夢見が良くてねっ二度寝しちゃったんだよ」

「へえ、どんな夢だ?」

食後のお茶を飲みながら、皆に夢の話をする。

「夢の中では・・・バレンタインデーっていう記念日があってね」

「ほう」

「好きな人に、チョコレートっていう甘いお菓子をプレゼントする日なんだ」

思い出して、ドキドキしてきた。カズサの顔をチラッと見ると、思案顔だった。


「チョコレート・・・」

立ち上がったカズサが、貯蔵棚をゴソゴソしている。後頭部の寝癖が可愛い。

「そのバレンタインデーがどうしたんだ?」

「あ、えっと・・・夢の中でね・・・カズサが僕に、チョコレートをくれてねっ・・・」

「「・・・・・・ごくり」」

「それで、僕の事好きだって・・・言ってくれたんだ」

ガイウスとユリウスと顔を近づけて、小声で言って・・・うわああ~って両手で顔を覆った。

「カズサが・・・か」

「ありえ・・・コホンッ」

「「良かった(な)ですね!」」

本当に幸せな夢だった。カズサが僕の名前を呼んで・・・こんなふうに・・・


「カエサル」

カズサが近くに来て、僕の名前を呼んだ。そろそろと手を下ろして、見上げたら・・・?!

「これか?チョコレートって」

「あ!それ?!」

カ、カズサの手に握られているのは!夢の中に出てきたチョコレートそっくりだった。

「たしか、板チョコ・・・」

「まぁ、そうだな。猫もそう言ってたわ。食うか?」

「「「・・・・ごくっ」」」

カズサが板チョコを、パキンパキンッと小さく割った。それを僕達3人の口にぽいぽい放り込んだ。

カズサが僕にチョコを・・・!!!・・・???!!!!


「「「にっが!!!(いです)?!!」」」

「くっははは!!」

カズサが水の入ったカップを皆に配った。カズサが声を上げて笑うのは、とても珍しい・・・。

「あ~・・・口ん中が苦い・・・」

「うう・・・水じゃ、苦みが取れませんね」

「くくっ・・・ほらよ。口開けろ」

カズサが蜂蜜を口の中に入れてくれた。甘い・・・顔をクシャっとして破顔してるの可愛い・・・。


「なあ・・・カエサルは顔が真っ赤だが、カズサの悪戯で喜んでるのか?」

「そうですね・・・口元を隠して・・・乙女のように・・・いえっ」

「あ~笑った。このチョコもどき、砂糖をたっぷり混ぜねえと、すげぇ苦いって猫が言っててよ」

目を細めて、意地悪そうに笑う顔も好きだよ。口の中が甘くて苦い・・・僕の気持ちみたいだ。

「カズサ・・・」

夢の中みたいに、僕の事好き?って聞く勇気は出ないけど・・・僕を見て笑ってくれるなら、いいや。


「ん?」

「ううん、何でもない!」

僕はニコッと笑って、残った水を飲みほした。



終わり。





「なあ・・・ユリウス」

「何ですか?」

「お前も、俺からチョコレート欲しいか?」

「な・・・??!」

「俺なら、すげえ甘いやつ食わせてやるけど?」

「け、けけ、けっこうです!!!」


ブックマーク、評価ありがとうございます!励みになています^^

明日、明後日、実家の大掃除の手伝いで更新お休みします。読んでくださっている方、ごめんなさいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ