夢のお話し~カズサの場合~
「・・・はっ・・・夢か・・・?!」
何か知らんが、長い夢を見てたらしい・・・頭痛ぇ・・・
何だっけ?確か・・・魔物や勇者がいる異世界で、俺は魔法使いになって・・・勇者のお供をしていたんだよな?
「・・・お供かよ。アホくさ」
時計を見ると、もう昼過ぎだ。今さら学校に行っても、意味ねぇだろ・・・。
アラームも完全に死んでたわ・・・あ~・・・鬼電してきてる奴やべぇなって・・・ニコかよ!
「っていう夢見たわ。面白くね?」
何となくキッチンに皆が集まって、茶を飲んでいる。休息日の午後だ。
「へ、へえ・・・不思議な夢だね?カズサは異世界のコーコーセイ?で・・・ニコの他には、誰か出て来なかったの?」
「カエサル、すげえ顔が引きつってるな?」
「ちょ・・・っそういう事言わないで下さいよ!」
「小声だから、聞こえてないだろ。ユリウスの方が、声がでかいぞ?」
ガイウスとユリウスが、コソコソやってっけど、知らねぇ。
「あ~?他には・・・ガイウスが何か、学校のセンセイ?やってたわ。ユリウスは保健室のセンセイ」
「保健・・・?」
「ぼ、僕は?!僕は出て来なかったの?!」
カエサルがすんげぇ顔で詰め寄ってきた。ああ?条件反射で、睨み返しちまった。何、泣いてんだ?
「あ~?居たかな・・・いや、居なかったんじゃねぇ?」
甘い菓子を口に放り込む。うん、美味い。しょっぱくて固い、粉焼きを口に入れる。うむ・・・茶を飲む。
甘い菓子を・・・ユリウスとガイウスが、俺の手を掴んで止める。離せや。
「「思い出せ!(捻り出せ!)」」
「あん?面倒くせぇな・・・」
思い出すまで、手を離さねえつもりだな。たくっ・・・あ~?何となく?・・・いたかも・・・?
記憶の中を洗い出す。薄ぼんやりと・・・ああ!
「いたわ」
「「「どこに?!」」」
おわ?!3人で詰め寄んじゃねぇ・・・
「俺がいるクラス・・・学舎の組み分けみてぇなやつの、隣のクラスにいたわ?」
「隣・・・カズサと一緒の組じゃないの?!」
「なんか・・・隣のクラスの人気者?みたいな感じっぽいわ」
「人気者!流石カエサル様ですね!夢の中でさえも、輝いておられる!」
「薄ぼんやりとした話だな・・・」
「あ~俺、直接カエサルと絡んでねぇからな。友達じゃねえし」
「「ちょっ・・・!それ、禁句?!」」
「あは・・・は・・・友達じゃない・・・夢の中でさえも・・・あ!じゃあ、ニコは?!」
「ニコか?ニコはな~・・・俺の女だったわ」
ガシャーンと、カエサルがカップを落とした。
「おい・・・それ、セットで高かったやつだぞ?」
「まあ、良いじゃないですか!どうせ、王からの賜りものですよね?!私が片づけますから、ね?」
ユリウスが、そそくさと箒を取りに走っていく。
「ちっ・・・ほら、カエサル。新しい茶淹れたぞ」
「あ、ありがとう・・・カズサ・・・ニコがカズサの女・・・恋人ってこと?」
「ああ。家が隣で、ガキん時から一緒に育って、そのまま付き合った感じだな」
「幼馴染で恋人・・・結婚までいくパターンだな」
ユリウスと一緒に片づけていたガイウスの頭が、ユリウスに叩かれている。なんだ?
「あ~~~~~~~!!!!!!!」
カエサルは頭を抱えて、テーブルに突っ伏している。煩せぇ。俺は手を伸ばして、辛い種を取って口に放る。
見たこともない世界の夢を見るとは、俺の潜在意識の中で作り出された妄想か・・・いや、禁忌魔法使い過ぎてイカレたか?何にせよ、おかしな話だ・・・。
「おい、ユリウス・・・強く叩きすぎだ。痛え」
「だってガイウスが・・・そんなに痛いんですか?」
「すげえ痛いわ。頭ん中、出血してるかも」
「え?!ちょっと、ここに横になってください!」
ユリウスが膝を叩いて、俺を誘う。
「くっ・・・役得だな」
「馬鹿言ってないで、安静にしてください」
見上げれば、目を閉じて祈りを口づさむユリウスが見える。
あ~・・・滅茶苦茶にキスしてぇ・・・。
ユリウスの細くて、少し体温の低い手が俺の頭を優しく撫でる。
「どうです?痛みは取れましたか?」
「ああ、治ったわ」
ユリウスの手を取って、掌にチュッと口づけた。
「なっ・・・?!」
「今夜、俺の夢に出て来いよ?ユリウス」
「~~~~~!!!!」
おわり。
ある日の夢のお話です。
前回がちょっと真面目回?だったので・・・本来のおバカな雰囲気を味わいたく・・・。
ブックマーク、評価ありがとうございます!嬉しいです^^