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魔法使いを探して・・・3

「いや、マジで。この部屋最高だな。帰りたくねぇ」

本棚には読んだことが無い本が沢山あるし、内装はまぁ慣れりゃ平気だ。飯は鞄に作り置きが入ってる。

風呂も便所もあるし、何より薬品を作るための部屋が隣室だ。最高だろうが。

「も~!そう言いながら、10日めだよ?大丈夫なの・・・心配されてないの?」

「ああ?誰も心配してねぇよ。俺はパーティーを追放されたからな」

「え?!何したのさ!」

「何もしてねぇよ。良くあんだよ、今回で出戻って追放4回目。笑うべ」

目の前で俺が作ったバナムケイクを頬張ってるガキ(この部屋の家主な)・・・シズク・シグレイが、疑うような眼差しでおれを見ている。バナムケイクの皿を取り上げたら、半泣きになった。面白ぇ。


「だってか・・・カズサはっ勇者パーティーの魔法使いでしょ?この世界で魔法使いって希少じゃん!よっぽどの罪が無かったら、追放なんかされるわけないよ?!」

「あ~・・・なんだ。勇者が同郷の幼馴染?なんだよな。だから毎回、どうでも良い理由で追放されてるわ」

カエサルが俺を追放する理由は、何度聞いても理解できねぇ。許してって、最後に謝ってくんだけど・・・許しようがねぇんだよな。

「そうなんだ・・・じゃあ、カズサは勇者パーティーを・・・恨んでるの?」

「別に?俺は元々、勇者のお供で王都に出てきたからな。もう4年も付き合えば、自由になっても良いだろ」

「・・・寂しくないの?」

寂しい?無ぇな。生まれてから一度も、思ったこと無ぇんじゃね?


「今は、お前んとこで楽しいからな。他はどうでも良いわ」

「・・・・」

急に黙ったガキを見れは、何故か真っ赤になって俯いてやがる。

「腹が痛ぇなら、便所に行けよ?」

「違う!もう!デリカシー無さ男!!」

「ガキ相手に、んなもん必要ねえだろ」

ケタケタと笑う俺を見て、直ぐにシズクも笑った。


***************


廃屋に着いた俺達は、しらみ潰しに建物を全て調べたが、何の痕跡も見つけられなかった。

「カズサがここで消えたとして、追跡は可能か?」

「わからない・・・こんなことは初めてで・・・」

「カエサル様・・・」

「痕跡がここに無いなら、他も当たるぞ!カエサルとユリウスは、商店通りとかカズサが良く行く場所を探してくれ。俺は、情報屋に当たってみるから」

「わかりました。行きましょう、カエサル様!」

唇をきつく噛みしめて、俯くカエサルをユリウスが促す。カエサルの面倒はユリウスに任せて、俺は俺のできることをやりに行こう。


「今日は私達と遊んで行かないの?」

花街の女達が擦り寄ってきて誘うが、今日はそれどころではない。

「また今度な。・・・シュウ・シュウカはいるか?」

妓夫に袖の下を握らせ、後をついて奥座敷に向かった。

「ガイウスか、久しいな。どんな情報が欲しいんだ?」

奥座敷でゆったりと煙草を燻らす声の主は、見た目はまだ幼さの残る美しい娘だ。だが纏う空気は手練れの暗殺者のようで油断はできない。声が少し低く、落ち着いている・・・本当の性別は女じゃないかもな。

「・・・うちの魔法使いが消えた。居場所が知りたい」

「魔法使いカズサか?今は勇者の手から、離れているのだろう?」

「カズサが追放されてるって、知ってるんだな。カエサルが騒ぐだけで、正式に分かれたわけじゃない」

ちょっと無理はあるが、どうせ連れ戻すつもりだった。完全な嘘じゃない。


「情報はあるか?」

「近頃、北方の国で王族が魔物に食い殺されたって話、聞いたことがあるかい?」

「いや、ないが・・・その話はカズサと関係があるのか?」

「まあ、聞きなよ。北方の宮廷魔術師が王の不況をかって、一族皆殺しにされた事があってね」

そこで一度、深く吸った煙草の煙をふぅと吐き出した。

「その生き残りが、復讐のために魔物を操って、王城に嗾けたって話だよ」

「・・・それで?」

「その生き残りの一人が、この王都に居るらしくてね。根城はどんなに探しても見つからないし、後をつけても煙が掻き消えるように居なくなっちまう」

「?!・・・何処に行けば、会える?」

「そうさねぇ・・・」

始終微笑んで話すシュウ・シュウカの目に、チラチラと欲の炎が揺れて見えた。

「対価は何を払えるんだい?」

「・・・望むものを、できるだけ用意する」

「ククッ・・・そう構えるなよ。俺がのぞむのは・・・」

コロコロと鈴を転がすような話し方を取り払い、地を這うような低い声が俺に告げたものは、意外なものだった。

「・・・わかった。必ず用意する」

「毎度あり」と上機嫌な声に見送られ、俺はカエサル達と合流するために、商店通りを目がけて走った。


か行とサ行が多いですね・・・。

必死に探されてるとはつゆ知らず、読書漬けで幸せなカズサです。

ブックマーク、評価ありがとうございます!嬉しいです^^

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