魔法使いを探して・・・1
「カズサ、お前はこのパーティーには必要ない!今すぐ・・・出て行ってくれ!!」
休息日が開けた翌日、欠伸を噛み殺しながら歯を磨いていると、涙ながらにカエサルが叫んだ。
「ああ?わはった。は~みはいたら、でへくわ」
ガラガラペッと泡を流した俺は、階段を上がって自室に向かった。
荷物を纏めて、収納鞄に突っ込む。背負い型の他に、腰につけるポーチ型も新しく作った。
直ぐに出したい物は、ポーチの方に入れっかな。ああ、ちょうど良いな・・・後回しにしていたあれを探しに行くか。俺は楽しみが出来て、ニヤニヤしながら荷物を纏め上げた。うし、終了。行くか!
「「ちょおおっとおお、待ったあああああ!!!!」」
ガイウスとユリウスが、俺の部屋になだれ込んできた。煩せぇな。
「・・・お前ら、仲良しな?まあ、わかってっと思うけど。出てくわ」
「いや!わかってるけどな?今回は・・・何が理由か、さすがに気づいてるよな?」
ガイウスが、さも俺が答えを知っている体で話してくんのが、うぜぇ。
「知るわけねぇ。1年で4回目だぞ?いい加減、飽きたわ」
「あ、飽き・・・無責任ですよ?!貴方がちゃんと・・・?!いっ痛・・・」
「わあわあ騒ぐ口は、これか?」
ユリウスの口を捻り上げて、黙らせる。ついでに、うっとおしい長髪を変な型に結ってやる。
「あ、こら!ユリウスを虐めんな。ほら、こっち来い・・・泣くなって」
ガイウスが、せっかく結った俺の作品を解いちまった。ちっ・・・これくらいで、めそめそ煩ぇ。
「とりあえず、もう行くわ。じゃあな」
俺を呼び止める声が聞こえたが、無視して古書店に転移した。
「コホンッ・・・いらっしゃいませ?きちんと、表の扉を使ってもらいたいんだがね?」
「あ?気にすんな」
まだ何か言いたそうな店主に、俺お手製の魔法薬を渡す。本に塗っておけば、欲しい時に見つけやすくなる薬だ。
「これは、これは・・・何て素晴らしい!」
「だろ?」
店主が案外チョロくて、助かるわ。
「なあ、廃屋の方で占い師を見たことあるか?」
「いいえ?」
店主の眉が微かにピクッとしたが、白を切るつもりらしい。こないだ作ったばかりの自白薬を使っても良いが、そこまでして知りたいわけでもない。
「まあ、良いわ。何か面白い本あるか?」
「そうですね・・・・・・こちらなど、どうかな?」
「童話か?北方の、魔術師・・・」
魔法使いと同じで、魔術師も数が少ない。北方の魔術師ってのは・・・
「消失した一族な」
「おや、ご存じでしたか。さすが」
店主の弓なりの細目が、すう~っと開いた。・・・・・怖っわ。
「これ、貰うわ」
「毎度ありがとうございます」
他にも「世界の不思議な食べ物」という本も一緒に買う。暇なとき読もう。
古書店を出て、廃屋に向かう。誰も住まねぇ家と、潰れた店がそのまま残ってる通りだ。
人っ子一人歩いてねぇみたいに見えるが、あちこちから視線が俺を追ってくる。
「・・・あぶり出せsearch」
小声で詠唱する。隠れるのが上手い奴は、耳も良いからな。
魔力の無い奴には見えねぇ網が、細く広範囲に伸びていく。建物の形状、其処に潜む生き物をあぶり出す。
「はん。20・・・9か。けっこういんな」
自身に身体強化と、物理回避、魔法反射を掛けておく。魔法は得意だが、物理で囲まれたら・・・人間相手は分が悪い。石壁を背に立つ。・・・来るか?
顔を左に倒す。俺の顔があった場所に、ナイフがカカカッと・・・3本か。ナイフを取って、投げ返す。
「追跡tracking」
「っ?!」
3軒先、左上の窓に向かって走り出す。「跳躍Springen」壁を蹴って飛び上がる。背後から・・・投石。
振り返らずに火炎球を放る。枠だけの窓を潜って、部屋に入った。微かに血の匂い・・・何処だ?
部屋の中央に血の跡がある・・・何かわざとらしいな。罠だろ・・・?
「ふうん?誘ってんのか・・・乗るか?」
逡巡する僅かな隙に、背後からの一閃。飛び退きざまに顔を見るが・・・何だありゃ?
「術式の・・・面?」
面というか、術式を描いた紙を顔に貼っているだけに見える。あ、やべ・・・着地した足が、地面の血痕を踏んじまった。
「下手こいた」
足元が滅紫色に光り、陣を描いていく。紫・・・どう見ても、禁忌魔法じゃねぇか。
「面白ぇ」
魔法陣が完成した瞬間に、風が吹いて詩が聞こえた。全てが鳴り止んだ後、カズサの姿はこの世界から完全に消滅していた・・・。
滅紫色・・・日本の伝統色から選んでます。書いたときはもう少し明るく見えたのですが・・・
寝ぼけていたようです。暗い紫・・・禁忌にはピッタリかもしれないですね。
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