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ヒーラー、ユリウスの受難1

勇者カエサルと魔法使いカズサの故郷を訪ね、王都に帰還した直後の事です。ギルドから保留していた幾つかの討伐依頼を、急いで処理して欲しいと連絡を受けました。

「これ、3件ともまだ余裕があったよね?至急討伐って、緊急度が上がったの?」

「発生数もそうですが、どうやら下級から中級に魔物が進化したらしくて・・・」

「これだけの数が急に進化なんてするか?・・・人為的なものじゃなきゃ良いがな」

机の上に依頼書と地図を並べ、討伐計画を立てていきます。私達が意見を交換して真剣に話し合う中、カズサだけが不機嫌な顔で黙り込んでいました。

「貴方も何か、意見を出して下さい」

「ああ?」

声を掛けただけなのに、カズサが私をじろりと睨んできます。この男はいつも、私への態度が酷いと思います。


「んなもん、考えるだけ無駄だ。3件の魔物の発生源を結んだ中心地で、纏めて倒せばいい」

「なっ?!」

カズサが地図を指差し、3件の依頼場所に〇をつけ、そこから線を結んで中心地になる草原に大きく×を書きました。

「一気に終わって、良いだろうが?」

「なんて乱暴な・・・!」

「まあ・・・確かに危険ではあるが、早くは終わるかもな?」

「僕はカズサの案で良いよ」

急がば回れという格言をご存じ無い?!何故、誰も否と言わないのですか?!私が唖然としている間に話が纏まってしまいました。


「じゃあ、俺が魔導香で誘き寄せるから、お前らは中心地に魔物が集まってきたら、ひたすら狩れ。な?」

「「わかった」」

「な?じゃないんですよ!!カエサル様もガイウスも、簡単に了承しすぎじゃないです・・・?!」

「煩せぇな。イライラすんなら、酸っぱいもん食っとけ?」

カズサが私の口の中に、剥いた酸っぱい果実を詰め込みました。とても酸っぱいのですが、何故か最後に甘さが残る不思議な果実なのです・・・もぐもぐ。


「ユリウスだけずるい・・・カズサ、僕にもちょうだい?」

カエサル様が私をじとりと睨んでから、カズサに上目遣いで果実を強請っております・・・。

「カズサに対しては、カエサルはちょっとアホになるよな?」

ガイウスが私の耳元で囁きます。私も薄々気づいて・・・いえ、たぶん気のせいでしょう。

「そんなことは・・・ありません。カエサル様は、いついかなる時も立派な勇者様です!」

「ユリウス・・・心の眼に蓋をして誤魔化していると、神聖力が落ちるんじゃないか?」

くっ・・・確かに、神は嘘を嫌います。邪な心、偽りを述べる口は神への冒涜・・・ですが!


「私はカエサル様を信じて・・・っいるのです!」

「ちょっと噛んだけどな?まあ、ほどほどに頑張れ。な?」

ガイウスが困った顔で、私の美しい髪をぐしゃぐしゃと撫でていきました。ちょっと?!もう・・・!

眉間に皺を寄せたカズサが、無言で私の乱れた髪を梳いてくれました。口も性格も悪いですが、面倒見の良い男だとは理解しています。

「ユリウスだけずるい・・・」

ただ、その面倒見の良さを受けて、カエサル様からの嫉妬や憎しみを集めているような気がして、少々の不安を感じております。


「正午過ぎに開戦する。各自準備を済ませ、昼食後に集合だ。いいね?」

普段は基本的に4人で食事を摂りますが、今日は各自の準備もありますので、各々で済ませます。

私は大聖堂に向かい、祈りを捧げることに致しました。道すがら、道端に座り込む貧しい民に声を掛けていきます。食べるものを求める者には、少しの施しを。怪我をした者には、救護施設へ案内を致します。


「天にましますわれらの父よ、我らを悪より救い給え。我らが人に赦す如く、我らの罪を許し給え。魔道に堕ちるもの殲滅せし聖なる力の片鱗を、我らに与え給え」

祈りは心を浄化し、癒し守る力を与えて下さいます。どうか、本日の戦いにおいても、仲間達を守れますように。


真面目でカエサルに傾倒気味の聖職者、ユリウスのお話です。

カズサからは雑に扱われますが、その様子を見ているカエサルに嫉妬されているのが、辛い。

ガイウスからは何だかんだ、可愛がられていると思います。

ブックマーク、評価ありがとうございます!嬉しいです^^


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