束の間の休日~カズサの場合2~
拠点のキッチンに飛ぶと、食卓には全員が揃っていた。
「うお!カズサか・・・どこから飛んで来たんだ?」
「おかえり、カズサ。お腹が空いちゃったよ」
「あ、貴方!!むやみに禁忌魔法を使うなって、あれほど・・・?!」
煩いユリウスの口に、酸っぱめの果実を放り込んでおく。急いで朝飯を作らねぇと。
手を洗って、買って来たばかりの野菜も洗う。メキャベツと燻製肉のスープ。アカキャブとカードのサラダ・・・誤棒根はストックだな。あとは・・・
「ああ?卵、買い忘れたわ・・・」
無いもんは、しょうがねぇ。収納鞄からグリーズリのタレ焼きを出して、薄く切る。収納の中は保存の魔法が掛かってるから、出来立てのまま温かい飯が食える。飯を作る時間がねぇ時に、便利だな。
薄く切った肉と、葉野菜を千切りにしたものに、酸味のあるソースを絡めて長いパンに挟む。
スープとサンドパン・・・甘いパンも出すか。黒い茶とミルクルも要るな。
「待たせたな。食え」
俺も席について、それぞれが食前の祈りを捧げる。誰に祈るかって?それぞれだ。
「「「いただきます!」」」
「おう」
「このタレ焼き、お前らの村で食ったやつか?この酸っぱいソースと合うな!美味い!!」
ガイウスがサンドパンをがぶりと大口で食っている・・・2口はデカすぎんだろうが。
「このメキャベツのスープ、甘みがあって美味しいですね!さっきは酸っぱい果実、ありがとうございます?!」
ユリウスが笑ったり、睨んだり、顔が忙しい奴だ。もう少し、静かに食えよな。
「カズサの作った食事は、どれも最高に美味しいよ!毎食、食べたいな?」
「甘えんな。飯当番は持ち回りだろうが。美味いもんが食いたいなら、努力しろ」
「は~い・・・」
シュンとしたカエサルが、サンドパンを齧ってふにゃりと笑う。立ち直りが早いのが、勇者の持ち味だな。
食後に黒い茶とミルクルを出した。ガイウスは黒い茶に砂糖3つ。ユリウスとカエサルは、黒い茶にミルクルと砂糖2つ。俺は黒い茶をそのまんまで。この茶は南の方から入ってくる黒い豆を炒って、湯をかけてゆっくりと風味を出す。すげえ苦いけど、何故か眠気を取ってくれるんだよな。
食器類を全て、洗って乾かす。風魔法で一気に乾かせるのが超楽。時間があるときは、布で拭くのも嫌いじゃない。が、今日は駄目だ。本が俺を待っているからな。
片づけを終わらせた俺は、新たに淹れた茶と甘い菓子を持って、自室に飛んだ。誰かが何か言ってたが、知らね。
茶と甘い菓子をサイドテーブルに置いて、保存の魔法を掛ける。これで、茶を何時でも温かいまま飲める。
ベッドの背凭れに枕を積み上げて、本を2冊取り出したら、俺の読書タイムの始まりだ。
「あ、ドアにカギと、部屋に防音も掛けねぇとな」
魔法でさっと掛けると、アサギリから貰った本から読み始める。北方の古語で書かれた、薬草術の応用編だ。
「・・・」
読み進めながら時々、茶を飲み、甘い菓子を齧る。読み終えた頃に刻計を見れば、昼時だ。腹は空いてねぇ。
「実践に入る前に、古書店で買った本を読むか・・・毒魔法ねぇ」
パラリとページを捲っていく。冒頭には、毒を効果的に使う心得が書かれている。初期魔法の毒は1滴でグリーズリを倒すレベル。中級で龍種が殺せるのか・・・上級で・・・どこで使うんだよ?
「完全に、殺す気満々の奴が書いてるな。こういう本を世に出したら、駄目だろうが」
毒魔法を使えば、敵の殲滅は容易い。だが、倒した後が大変だ。肉が毒にやられて、食えなくなっちまう。
食えねぇやつを倒して、何の意味があんだよ。殺したら、食う。基本だろうが。
この本は暫く封印だな。使えねぇ。
インプット、アウトプットが自然にできるタイプって、羨ましいです。
カズサは面倒見は良いですが、自分の時間はちゃんと確保して、譲りません。
ブックマーク、評価ありがとうございます!読んでもらえるだけでも、嬉しいです^^