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勇者カエサルの憂鬱

短編版の続きです。

「カズサ、お前はこのパーティーには必要ない!今すぐ出て行ってくれ!!」

「はぁ・・・?」


同じ村出身のカエサルが、天啓を受けて勇者になった。

そしてなぜか村の中で唯一魔法を使える俺が、半ば無理やり、お供として一緒に送り出されたのだった・・・。

村の中でも裕福な商家の息子であるカエサルは、大事にされていた(甘やかされてな)ようで、最初の頃は本当に身の回りのことが何もできない奴だった。


「カズサ!僕のシャツのボタン付けてくれない?取れちゃったんだ!」

「・・・いい加減、縫い方覚えろよ・・・」

シャツを着替えるたびに、ボタンを引っかけて取っちまうから、何度も俺は奴のボタンを縫う羽目になった。

教えても上達しないし、カエサルの指が血だらけになるだけだったから・・・俺は面倒くさくなって諦めた。

「はぁ~・・・たくっ。縫い留めろ・・・Fuaite siad suas!」

俺も毎度、縫いもんなんかしたくねぇ。魔法書を読み漁り、縫い留めることに特化した魔法を編み出した。


村を出た俺たちは、道すがら魔物退治をして鍛錬しながら、王都に向かった。

城の侍女に丸洗いされ、薄くて上等な服を着せらた。これから王様に謁見するらしい・・・部屋で寝てたいわぁ。

王様のありがたいお言葉を聞き流しながら、俺は考える。城の図書室で魔法書を読み漁りてぇ・・・。


「ふぅ・・・美味しい食事で、食べ過ぎてしまったよ。カズサは楽しめたかい?」

晩餐会を終え、俺たちは用意された部屋の前にいた。カエサルとは隣室だ。

「ああ。風呂入って、早く寝ろよ?」

「うん、わかった。おやすみ、カズサ!」


「・・・よし。カエサルの奴、寝たな?」

カエサルの寝支度は侍女がやってくれたはずだ。俺はそっと忍び出て、廊下で警備している騎士に尋ねた。

城の図書室は司書が残っていれば使用可能らしい。え・・・案内してくれるの?ありがとうございます!

騎士の後に続いて、光が抑えられた廊下を歩く。図書室は別の塔の端にあるらしい。


「これはこれは、魔法使い様。ようこそいらっしゃいました」

図書室にはまだ司書が残っており、数人の文官が仕事をしているようだった。夜遅くまで、ご苦労様です。

俺は魔法書の棚に案内してもらい、許可を取って速読と速記の魔法をかけた。よおし、読み漁るぞ!

文官たちが朝方まで仕事をしていたので(城の勤務体制、ブラックだな!)俺も徹夜して全ての魔法書を読んだ。

後は禁書だが・・・さすがに無理だよな?司書にこそっと聞いてみたら、やっぱり駄目だった。


「禁書の閲覧は限られた者にしか、許されておりません。・・・ここだけのお話なのですが・・・」

司書がきょろきょろと辺りに人がいないのを確認してから、こっそり教えてくれた。時おり、大きめの街の古書店で禁書が出回ることがあるらしい。まじすか!有益な情報のお礼に、俺はお手製の回復薬と旅の途中で買った甘味をそっと渡した。司書はにこりと微笑んで、頷いた。お主も悪よのう・・・ふふ。

俺とカエサルは城での手厚い歓迎を楽しみ、数日後、高価な装備やアイテムなどを沢山貰って旅に出た。


それから2年はまぁ、上手くやっていたと思う。

依頼の時だけ臨時のメンバーを募り、どんどん功績を上げていった。3年目に入って、タンク役のガイウスとヒーラーのユリウスが固定メンバーになってからだな、カエサルが俺に言い放ったのは。


「カズサ、お前はこのパーティーには必要ない!今すぐ出て行ってくれ!!」

「はぁ・・・?まぁ、いいけど?」

「え・・・っ」

カエサルも、だいぶ自分のことができるようになっただろうしな。

俺は自分の荷物を手早く纏めると、拠点にしていた宿屋を出て行った。


「ちょいちょい!カズサ、待てって!」

何でか、タンク役のガイウスが追いかけてきた。19になった俺たちより、ちょい年上のおっさんだ。

「俺、忘れ物したっけ?」

荷袋の中を思い返すが・・・全部あるな、うん。

ガイウスが厳つい身体つきのわりに、温和そうな顔の眉尻を下げて、言いにくそうにしている。


「言いたいことあるなら、早くしてくれないか?俺、これから行く所あるからさ」

「ああ、すまん。そのだな・・・戻る気はないか?」

え・・・?今出てきたばっかりですけど?やっと自由になれたのに、戻るわけねぇな。

「ガイウス、後は任せた!」

ポンポンとガイウスの肩を叩くと、俺は良い笑顔で手を振って歩き出した。後ろで何か聞こえるけど、知らね。



短編で終わらそうと思ったのですが、カズサが気に入ってしまいまして。

のんびり連載出来たら良いなと思います。

BLのつもりは全くないのですが、カエサルが暴走気味です…(-_-;)

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