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第9話 ダイジェストとステータス

「おやっさん、母さん、先生、里のみんな、今まで本当にお世話になりました!」


「僕も、お世話になりました!」


「またいつか帰ってきます、それまで、どうかお元気で!」


「いいからさっさと行ってこい!」


「前鬼殿、弟子達の門出にそのような態度は如何なものか。」


「いいんですよ、三郎さん、寂しいのを隠してるだけですから。」


「おい、玄!何を言ってやがる!」


「なんと、そうでござったか。」


「ふふふ、2人とも元気でね。体調には気を付けて。辛くなったらいつでも帰ってらっしゃい。」


「おばあちゃん、僕らも厳しい修行を乗り越えて天狗になったんだよ?何でも乗り越えられるさ。」


「まぁ天、そう言うな。親にとってはいつまで経っても子供のことが心配になるもんさ。」


「そーゆうものなの?」


「あぁ、また立派になって帰ってきて安心させてやろうな。」


「うん、わかった!」


「ほんと、立派になって。」


「うむ、真に。」


「それじゃあ…「行ってきます!!」」


「行ってらっしゃい!」


「達者でな!」


「まぁ…頑張ってこいや。」


 あー涙が出てくる。修行の辛さ以外で泣くのはいつぶりだろーか?何度も何度も振り返り、育ててくれた人たちの姿が見えなくなるまで手を振る。


 こうして俺たちは、長い長い修行を終え、再び旅を始めるのだった。



「…行ったか。」


「ええ、そうですね。…寂しくなりますね。」


「これも年長者の定め、また会う日も来るはず。」


「まーその通りだな。だから泣くな、玄。」


「そうね。…今日は甘えちゃおうかしら、ふふふ。」


「…しゃーねェな。」


「ふむ、某はお邪魔なようで、それでは御免!」



 修行を初めてから天狗の末席に名を連ね、出発の時を迎えるまで、70年の時が過ぎた。気付いたら還暦過ぎて喜寿だぜ?修験道まぢヤババ。

 …いやーほんとに辛かった。攻撃当てるか1年経つかしないと終わらない乱取りとか、四季の山全てを使って先輩天狗10名を捕まえる鬼ごっこ(天狗も攻撃可)、冬の山「雪花山」の環境に適応して葉を枯らさないこと、段階が進むと、水(無呼吸)、空(無栄養)、土(無呼吸無光合成)、火(わたしは植物)の中で生きろ、とかね。あと霊力の特訓も合間合間にしてもらった。まさか勉強が癒しと感じる日が来るとは、この李白の目を以てしても!


 癒しと言えば、50年くらい経った頃だろうか。修行の差し入れとして、まさかの漫画が読めた。は?ってなるだろ?何でも、法起坊様は地球とこの世界とを行き来出来るらしい。昔の妖怪や悪魔は割りと簡単に地球に移動出来ていて、よく悪戯してたらしいが、科学が発達してきて妖怪の概念が否定されるにつれて、行けなくなってしまったそうだ。

 再び行ける様になるのは、神の存在まで否定され始め、神が降臨しなくなってから。それでも行けるのは、神に近しい存在となっている大妖怪や大悪魔くらいで、更に何十年かに一度だけ。こう、神と地球の関係のほつれた隙間を縫って化身となって降臨する感じらしい。降臨中は力も制限されるから、常駐しているのは、愛宕山(あたごやま)太郎坊(たろうぼう)さんや趣味人の犬神刑部狸、麒麟ぐらい。地球のみんな、そっちには麒麟が来ているらしいぞ。明智さんも草葉の陰で喜んどるわ。

 まぁそんなわけで漫画を読めたわけ。あの海賊の漫画のラストが読めて良かった。控えめに言って最高。

 …家族にも手紙を送らせてもらった。もうお爺さんお婆さんになってたらしい。でも何とか無事を伝えられて良かった。もう未練はない。全力で生きるのみ。


 はい、というわけでね、手っ取り早く修行の成果を見せるために!懐かしの~、ステータスオープン!


――――――――――――

明石(あかし) 男 77歳

種族:木メラ(キメラ)(怪樫 八ツ手(やつで)(さかき)餅木(もちのき)、杉、(けやき)銀杏(いちょう)

桂、楠、ナギ、スダジイ→神木(しんぼく))

状態:人化


パッシブスキル

気配察知 建築

アクティブスキル

念話 変化(人)

上位スキル

妖樹(光合成 呼吸 養分吸収 堅牢 柔軟 伸縮 硬化 擬態 高速生成 接ぎ木 防虫)

奇樹怪壊(ききかいかい)(刺突根術 枝鞭術 葉裏剣 弾栗(だんぐり) 体操 徒手空拳 鎧術)

天狗(毒耐性→環境適応 飛行 分身 風雨 火炎 折伏(しゃくぶく) 治癒術 魔除け 不老)

―――――――――――――


 状態の欄見た?…そう!とうとう人になれましたよ!もしかしたら、さっきの会話の「」表記で分かったかな?

 修行を始めて大体50年、長かったぁ。人になれた日はずっと鏡見てたなー、お恥ずかしい。俺の見た目は、葉っぱの影響なのか、髪色が深緑になってる以外はまぁ普通の男だ。そうそう、完全に男だったんだ、ニューハーフとかじゃなくてほんと良かった!服装は、甚平に下駄、それと頭の左に法起坊様にもらった天狗のお面をつけた夏祭りスタイル。環境適応のおかげで寒さもへっちゃらさ。


 …それよりこの種族は何だよって?うん、木のキメラだから木メラ。

 んー、これはまだよく分かってないけど、八ツ手の葉っぱは別名テングノハウチワと呼ばれるらしく、天狗の御業の補助に使えると言われたから、これを持って使える天狗スキルを試していたら、治癒術を使った時に八ツ手と繋がってな。正直その時パニックになったね、うん。恐らく治癒術と木の吸収スキルが働いて、接ぎ木となったんじゃないかってさ。

 それから高速生成で八ツ手の葉っぱを生やしてたら、急に体が霧に包まれて、気付いたら種族が変わってた。俗に言う「進化」だ、いやーテンション上がったね。俺、ポッケの怪物もデジタルな怪物も大好きだからさー、まさか自分が進化を体験することになるとわ!って。


 それから四季の山に存在する色んな植物を接ぎ木しようと試しに試した。そしたら、いわゆる御神木として崇められたりする木が対象となっていた。多分、他にもあると思う。接ぎ木によって、トリモチや魔除け、防虫といったスキルが得られたし、これからも良さそうな木は取り込んでいこう。因みに欅を取り込んだとき、瞳がえんじ色になった。多分紅葉(こうよう)したんだろうな。けど、銀杏を取り込んでも特に変わらなかった。一度だけなんかね?


 で、スキル。

 建築は、自分の家を造る時に入手した。ログハウスはもう慣れたもんよ、べらんめえ。


 妖樹は、木のスキルが、色んなスキルを統合して出来たスキルだ。枝は伸びるわ、枝葉はどんなに折っても生えてくるわ、完全にホラーですね。


 奇樹怪壊は、読んで字の如く、奇妙な樹木が怪しく敵を壊す、簡単に言うと、妖樹式戦闘術だな。今の俺は人化出来るから、近距離では樹皮の鎧を纏って肉弾戦、中距離では背中から生やした枝を伸ばして敵を鞭打ち貫いて、遠距離では葉裏剣と弾栗で対応する、万能なクリーチャーとなった。


 天狗スキルは修験道の賜物だな。どんな過酷な環境に身を置いても生きられるし、雨風を起こし、怪我しても癒すことが出来、飛行も可能になった。隙がなくて、正直誰が勝てるんだ?って感じだけど、大天狗の皆さんには勝てる気がしない。あの人ら一瞬で距離詰められるし、火や雷起こせるし、どんなに俺が再生しても死ぬまで殺せるんだよなー(白目)。まだまだ再生速度が遅いらしい。まぁ慢心せずにすむのはありがたい。それに飛行はまだ枝葉を生やして枝羽を形成しないとまだ安定しない。精進せねば!

 分身はまだ出来ることは少ない。分身というか、分け身というか、ちっちゃい木メラを1体生み出せる感じだ。変化も出来ないけど、偵察とか出来るし、何よりかわいい。これ大事。

 折伏ねー、これはまぁ次回をお楽しみに。


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